裁判員裁判が1審で言い渡した死刑判決を破棄して無期懲役に減刑した事案 裁判員裁判、考えさせた報道

2013-10-27 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

【新聞に喝!】裁判員裁判、考えさせた報道 京都大学産官学連携本部客員准教授・瀧本哲史
 産経ニュース2013.10.27 13:45
 裁判員制度が施行されてから4年がたち、裁判員法の見直し条項に従って、現在、制度の再検討が進んでいる。こうした中で興味深い判決が東京高裁であった。裁判員裁判が1審で言い渡した死刑判決を破棄して無期懲役に減刑した事案が6月、10月と続いたのである。2つの判決を下したのは同じ裁判長だった。
 両被害者の遺族を取材した記事が20日付産経(大阪本社版、一部内容が違う東京本社版は22日付)に掲載されている。その声は当然ながら悲痛で、「政府がまとめた『犯罪被害者基本計画』には『刑事司法は、犯罪被害者等のためにもある』と書かれていますが、職業裁判官にとっては空文だった」などと鋭く司法を批判する。また犯罪被害者支援にとりくむ弁護士は「市民の日常感覚や常識を取り入れた裁判員裁判が、先例と違う判断をするのは当然」と、ある種の民意重視を訴えている。
 もちろん、この問題は簡単ではない。そもそも裁判は民意で行うものではないし、数人の裁判員の考えが民意というのも難しいだろう。裁判員制度のもとになっている陪審制度でも陪審は権力の乱用から被告人を守るものであり、人民裁判ではない
 最高裁などの調べによれば、裁判員による裁判はやや重罰に傾き、特に性犯罪や傷害致死、強盗致傷などの事件で量刑が重くなる傾向にあることがわかっている。一方で刑事政策的には重罰が犯罪減少の決め手ではなく、死刑の威嚇力についても議論が分かれている。裁判所は少数者の権利を守る最後の砦(とりで)でもある。検察側と被告人側の意見を戦わせた上で理を持って決めるものであり、いわゆる民意の多数決とは相いれない。
 これらを踏まえて、最高裁は裁判員制度を導入するにあたり「死刑の選択は慎重に」とし、昨年公表された最高裁司法研修所の研究報告でも「死刑判断は先例を尊重すべきだ」と打ち出している。そういう意味で一連の判決は、裁判官個人の問題と言うより、指針をそのまま適用したと考えれば驚くには当たらない。
 ただ、一方で法は国民の感情を反映すべき部分もある。死刑選択の基準である矯正不可能性、計画性をどの程度重視すべきか、今回の件においてどう考えるかは専門家の間でも議論が分かれうる。これはやはり最高裁で争うのが適切な事案だと思う。裁判員制度について最高裁がどのように考えるのかについても黙示的に判断される点で極めて興味深い。このタイミングで追加取材を行い、問題提起した意義深い報道といえるのではないか。
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【プロフィル】瀧本哲史 
 たきもと・てつふみ 東京大法卒。東大助手、マッキンゼーを経て独立。投資家。全日本ディベート連盟代表理事。
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します  
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〈来栖の独白 2013/10/27 Sun. 〉
>そもそも裁判は民意で行うものではない
>数人の裁判員の考えが民意というのも難しい
>陪審制度でも陪審は権力の乱用から被告人を守るものであり、人民裁判ではない
>裁判員による裁判はやや重罰に傾き
>刑事政策的には重罰が犯罪減少の決め手ではなく、死刑の威嚇力についても議論が分かれている
>これはやはり最高裁で争うのが適切な事案
 引用した上記文脈、良い。裁判員裁判があたかも民意の反映であり、被害者遺族の感情を汲んで極刑を選択するかのごとき期待は、誤りである。
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