憲法改正要件の緩和「改正、常に考える義務」「改憲派の本命は9条」 中西輝政氏 渡辺治氏

2012-08-31 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

【金曜討論】憲法改正要件の緩和 「改正、常に考える義務」「改憲派の本命は9条」…中西輝政、渡辺治両氏が激論
産経ニュース2012.7.27 07:47
 日本国憲法は施行から65年、一度も改正されず“不磨の大典”と化している。大きな要因は、衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成と国民投票での過半数の賛成が必要とされる憲法第96条の改正要件の厳しさにある。96条は改正すべきなのか。京都大の中西輝政名誉教授と一橋大の渡辺治名誉教授に見解を聞いた。(溝上健良)
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 ≪中西輝政氏≫
■真剣な改憲論議可能に
--議連の設立など、国会の96条改正に向けた動きをどうみるか
 「遅かったが、やっと成熟した本来の憲法改正議論が出てきた、緒についたとみている」
--どう96条を変えるべきか
 「総議員の過半数の賛成が必要と変えねば意味がない。国民投票が過半数で、一方で国会の発議は3分の2の賛成が必要としているのは不合理である意味、国会議員を信用していないということ。このアンバランスは、民主主義の建前から考えてもおかしい」
○常に考える義務
--99条の憲法擁護義務規定を盾にとって「国会議員は改憲に動くべきではない」とする説があるが?
 「それは96条の趣旨を取り違えた考え方だ。この条項で、憲法は改正について常に考えておけと命じているのであり、国会議員にはその義務がある。99条の規定は何かといえば、クーデターなど現体制への反逆・打倒に公務員が手を貸してはならないということだ。99条を盾にとって、改憲議論を封じるのは完全に間違っている」
--96条を先行改正すべきか
 「最近の世論調査では憲法を改正すべきだとの意見が多数を占めている。日本の政治構造の中で、衆参両院で3分の2を超える単一の政治勢力が生まれることは、まずない。この96条があるため、多くの人が真剣に改正を論じようとしてこなかった。よりよい憲法を持つ上で、96条が一番のがんであるといっていいのではないか」
--現憲法無効論をどうみるか
 「国際法上、ハーグ陸戦法規で占領中にその国の根本法規を変えてならないと書いてあるわけで、明らかな違反だ。ただ、独立から60年、この憲法でやってきたのをどう見るか。現憲法は形式的には明治憲法に沿って忠実に改正したものであり、それは、いわば大宝律令にまでつながる法治主義という日本の国柄を示すものでもある。無効論は国際法上は正しいが国家としての法的連続性を重んじ改正条項にのっとって改正することが将来の日本のためにもなる」
○放置は逆に危険だ
--96条改正はなぜ必要か
 「総議員の3分の2の賛成が不可能に近いことは連合国側はよく分かっていたはず。96条を改正しないでいると、いずれは憲法を停止せよとか廃棄せよといった、立憲政治の根幹を揺るがす議論が広がりかねない。この危機感は護憲派の人も肌身で感じるべきだ」
--現憲法は65年間無改正だ
 「それは民主主義とはいえない。ある時代の民意だからといって後世をすべて拘束するような民意に正当性はない。人間の存在は完璧なものではなく、常によりよいものに変えていくのは当然で文明社会の健全なありようだろう」
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 ≪渡辺治氏≫
■根幹的な規定の一つだ
--96条改正に向けた議員連盟の動きなどをどうみるか
 「改憲派の方々は立法措置ではどうにもならない条項を変えようとしており、本命は第9条だ。それをオブラートに包んで『苦い薬も一緒に飲んでもらいましょう』という狙いがある。その狙いをもっともハッキリ打ち出したのが橋下徹大阪市長だ。96条の議連も、まず外堀を埋めて9条を変えようという狙いがあると思う」
●「96条先行」は間違い
--96条先行改正論は?
 「まったくの間違いだ。96条は日本国憲法の中でも根幹的な規定の一つ。9条や(国会の地位を定めた)41条などと並ぶ、変えてはいけない規定だろう。憲法は普通の法律とは違い、時々の政権の変化によって軽々しく改変されない歴史的に吟味された価値が規定されているもの。発議に3分の2の賛成が必要というのは、一党派ではなく、複数の党派で合意ができた時だけ発議ができるという意味。国民投票は、国民の代表である国会と国民の意思が食い違った時に両方の合意が必要ということ。96条の議連はそこをあまりに軽く考えているのではないか」
--制定から半世紀以上も変えられていない憲法は非常に珍しい
 「世界の多くの国が憲法を変えているとしても、世界のほうが間違っているかもしれない。それなら天皇は日本だけの存在だが、それを問題視するのか。少数派であっても何の問題もないだろう」
--憲法は社会情勢の変化に応じて改正すべきではないか
 「憲法が致命的な障害物になっている場合には改正が必要だろうし、96条はそれを否定しているわけではない。ただ社会情勢の変化には立法措置で対応できる。例えば緊急事態条項がないといわれるが、東日本大震災の復旧・復興の遅れは菅前首相が認められている憲法上の権限を何も行使しなかったことが問題なのであって、憲法に問題があったわけではない」
--特に憲法第9条は解釈改憲で空洞化しているのではないか
 「まったくそうは思わない。解釈改憲というが、政府は『自衛隊は9条に違反する戦力ではない』との点はいまだに変えておらず、海外への派兵はかなり制限されている。日本の重化学産業が専門の軍事部門を持っていないのも9条が影響している結果といえる」
●「変な軍隊」でいい
--著書の中で、自衛隊は人を殺したことのない「変な軍隊」、日本は「変な国」と記述しているが、それでいいのか
 「そうだ。米中露などを除く各国の軍隊は、いずれ同じ方向に向かっていくはずだ。世界的に政治決定の中で軍事力が占める割合は減っていかざるをえないだろう。その先頭に立つのは日本だ」
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【プロフィル】中西輝政
 なかにし・てるまさ 昭和22年、大阪府生まれ。65歳。京大大学院法学研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大留学、米スタンフォード大客員研究員、静岡県立大教授などを経て京大大学院教授。平成15年、正論大賞受賞。24年から現職。著書に「大英帝国衰亡史」「国民の覚悟」など。
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【プロフィル】渡辺治
 わたなべ・おさむ 昭和22年、東京都生まれ。65歳。東大法学部卒。東大社会科学研究所助教授などを経て、平成2年から一橋大教授。22年から現職。著書に「憲法『改正』 軍事大国化・構造改革から改憲へ」、共著に「新自由主義か新福祉国家か 民主党政権下の日本の行方」など。
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『日本人の誇り』藤原正彦著(文春新書)
p58~
 「明治・大正・昭和戦前は、帝国主義、軍国主義、植民地主義をひた走り、アジア各国を侵略した恥ずべき国。江戸時代は士農工商の身分制度、男尊女卑、自由も平等も民主主義もなく、庶民が虐げられていた恥ずかしい国。その前はもっと恥ずかしい国、その前はもっともっと・・・」
 占領後、アメリカは米軍による日本国憲法制定を手始めに、言論統制、「罪意識扶植計画」等により、日本をアメリカに都合の好い属国に造り替えてゆく。
p63~
 GHQすなわちアメリカはまず新憲法を作り上げました。GHQ民生局が集まり1週間の突貫工事で作ったのです。憲法の専門家はいませんでした。まず前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書きました。アメリカは他国の憲法を自分達が勝手に作るというハーグ条約違反、そしてそれ以上に恐るべき不遜、をひた隠しにしましたが、この文章を見ただけで英語からの翻訳であることは明らかです。「決意した」などという言葉が我が国の条文の末尾に来ることはまずありえないし、「われら」などという言葉が混入することもないからです。いかにも日本国民の自発的意志により作られたかのように見せるため、姑息な姑息な偽装を施したのですが、文体を見れば誰の文章かは明らかです。そのうえ、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と美しく飾ってみても、残念なことに「国益のみを愛する諸国民の権謀術数と卑劣に警戒して」が、現実なのです。
 ともあれこの前文により、日本国の生存は他国に委ねられたのです。
 第9条の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」は前文の具体的内容です。自国を自分で守らないのですから、どこかの国に安全保障を依頼する以外に国家が生き延びる術はありません。そして安全保障を依頼できる国としてアメリカ以外にないことは自明でした。すなわち、日本はこの前文と第9条の作られたこの時点でアメリカの属国となることがほぼ決定されたのです。この憲法が存在する限り真の独立国家ではありません。中国に「アメリカの妾国」と馬鹿にされても仕方ないのです。(~p64)
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石原慎太郎著『新・堕落論』新潮選書2011/7/20発行
p81~
  尖閣諸島への中国の侵犯に見られる露骨な覇権主義が、チベットやモンゴルと同様、まぎれもなく、この国に及ぼうとしているのに最低限必要な措置としての自衛隊の現地駐留も行わずに、ただアメリカ高官の「尖閣は守ってやる」という言葉だけを信じて無為のままにいるこんな国に、実は日米安保条約は適応されえないということは、安保条約の第5条を読めばわかることなのに。後述するが、アメリカが日米安保にのっとって日本を守る義務は、日本の行政権が及ぶ所に軍事紛争が起こった時に限られているのです。
  つまりあそこでいくら保安庁の船に中国の漁船と称してはいるが、あの衝突の(略)アメリカはそれを軍事衝突とはみないでしょう。ましてその後ろにいるのが中国としたら、アメリカの今後の利害得失を踏まえて本気のコミットメントは控えるに決まっている。
   安保条約への誤解
  ちなみに現時点ならば、核兵器に関しては別ですが日本が独自に保有する通常兵器での戦力は中国を上回っています。(p81~)F-152百機による航空集団はアメリカ空軍に次ぐ世界第2の戦闘能力があり、その訓練時間量は中国の寄せ集め機種での実力に勝っているし、制海権に関しても関しても保有する一次に7発のミサイルを発射し得る6隻のイージス艦を旗艦とする6艦隊は中国の現有勢力に十分対抗し得る。予定のイージス艦10隻保有が達成されれば日本独自で制海権を優に獲得し得る。ということを、政府は国民に知らしめた上で尖閣問題に堂々と対処したらいいのです。
  もともと尖閣諸島に関する日中間の紛争についてアメリカは極めて冷淡で、中国や台湾がこれら島々の領有権について沖縄返還後横槍を入れてきていたので、日本はハーグの国際司法裁判所に提訴しようとアメリカに協力を申し入れたのに、アメリカは、確かに尖閣を含めて沖縄の行政権を正式に日本に返還したが、沖縄がいずれの国の領土かということに関して我々は責任を持たないと通告してきています。
  さらに、かつて香港の活動家と称する、実は一部軍人が政府の意向に沿って民間船を使って尖閣に上陸し中国の国旗を掲げたことがありましたが、一方同時に沖縄本島ではアメリカ海兵隊の黒人兵3人が小学校5年生の女の子を強姦し県民が激怒する事件が重ねて起こりました。
 p83~
  その時アメリカの有力紙の記者がモンデール駐日大使に、尖閣の紛争がこれ以上拡大したら、アメリカ軍は安保条約にのっとって出動する可能性があるかと質したら、大使は言下にNOと答えた。
  しかし不思議なことに日本のメディアはこれに言及せず、私一人が担当していたコラムに尖閣の紛争に関してアメリカの姿勢がそうしたものなら安保条約の意味はあり得ないと非難し、それがアメリカ議会にも伝わり当時野党だった共和党の政策スタッフがそれを受け、議員たちも動いてモンデール大使は5日後に更迭されました。
  丁度その頃、アメリカでは中国本土からの指令で動くチャイナロビイストのクリントン政権への莫大な献金が問題化しスキャンダル化しかかっていたが、それとモンデールの発言との関連性ははたしてあったのかどうか。(略)
 p84~
  さて、尖閣諸島の安保による防衛に関してのモンデールの発言ですが、実はこの発言には、というよりも安保条約そのものにはある大切な伏線があるのです。はたして彼がそれを熟知して発言したのかどうかはわからないが。
  彼だけではなしに、政治家も含めて日本人の多くは、安保条約なるものの内容をろくに知らずに、アメリカはことが起こればいつでも日本を守ることになっていると思っているが、それはとんでもない思い込み、というよりも危ない勘違いです。
  「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全をあぶなくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
  前記の武力攻撃およびその結果として執ったすべての措置は、国際連合憲章第51条の規定に従って直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執ったときは、終止しなければならない」(日米安保条約第5条)
 p85~
  ここで規定されている日本領土への侵犯を受けての紛争とは、あくまで軍事による紛争です。尖閣でのもろもろの衝突事件は日米安保の対象になり得ないというアメリカの逃げ口上は条約上成り立ってしまう。
  だからヒラリー国務長官がいくらアメリカは日本の尖閣を守ってやると大見得を切っても、その後彼女の子分のクローリー国務次官補が圧力をかけてきて日本の政府にああした措置をとらせてきたのです。
  日米安保に関するもう一つの大きな不安要素については、ほとんどの日本人が知らずにいます。
  それはアメリカのれっきとした法律、「戦争権限法」だ。これは戦争に関する大統領の権限を強く拘束制限する法律です。大統領はその権限を行使して新しい戦争を始めることは出来るが、それはあくまで剥こう60日限りのことで、その戦争のなりゆき次第で議会は60日を過ぎると行われている戦争に反対しそれを停止させることもできるのです。
  しかしこれは彼等白人同士の結束で出来ているNATOが行う戦争には該当され得ない。
 p86~
  だから現在アフガンで行われている不毛な戦闘には適応され得ないが、彼等が作って一方的に押しつけた憲法にせよ、それをかざして集団自衛権も認めず、日本にとっても致命的なインド洋のタンカールートを守るための外国艦船への海上給油作業も止めてしまうような国での紛争に、果たして長い期間の戦闘を議会が認めるのかどうか。ここらは日本人も頭を冷やして考えた方がいい。
  私の発言でモンデールが更迭された後、フォーリーが就任するまでなんと1年近くもの間アメリカの駐日大使は不在のままでした。つまり日本などという国には、ことさら大使を置かなくとも何の痛痒も感じないということだろう。
p143~
  同じ敗戦国のドイツは、戦後の復興の過程で、新しい憲法と新しい教育の指針は絶対に勝者たる外国にはまかせず、自分自身で決めるといい張り通しました。当たり前のことだが、その当たり前のことをこの日本は出来ずに全て占領軍の言いなりになってしまった、その結果が今の体たらくだ。
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