中国、対日戦勝70年記念パレード(2015.9.3) 主眼は兵員削減の発表ではなく、武器の軍事力誇示 WSJ

2015-09-04 | 国際/中国/アジア

中国、戦勝パレードで軍事力誇示 米国のアジア介入けん制
By JEREMY PAGE and CHUN HAN WONG
 WSJ Japan Real Time 2015 年 9 月 4 日 13:36 JST
 【北京】中国の習近平国家主席は、3日北京で行われた対日戦勝70年記念パレードで、拡大する中国軍事力と自ら握る権力をこれまでにないほど派手に見せつけた。これに先立つ数週間高まっていた中国自身の経済的な難題と共産党指導部の不協和音をめぐる懸念とは対照的だ。
 中国の最新鋭の戦闘機、ミサイル、ドローン(無人機)、それにヘリコプターが登場したパレードは、主要な目的を果たした。国力の強さと共産党の結束を示すために用意周到に演出したショーを市民たちに見せつけたのだ。
 しかし、第2次世界大戦での日本軍の降伏を祝うパレードは同時に、米国およびその同盟国と、中国との間の深まる溝に光を当てることにもなった。西側の主要国の中で、指導者ないし軍隊をこのイベントに派遣した国はなかった。イベントが、現代の日本の信用をおとしめ、中国の軍事力を見せつける目的で行われるように見えたためだ。
 米国防総省当局者はパレード前日、中国の軍事力とその野心が拡大しているさらなる証拠として、中国海軍の軍艦5隻がアラスカ沖を航行していることを明らかにした。アラスカ州はオバマ大統領が今週訪問した場所だ。アラスカ沖でこのような活動が目撃されるのは初めてだった。
 習主席はパレード前に行われた演説で、融和的なメッセージを発しようとした。同主席は3週間後には米国を訪問する。米中関係は既に、中国からとみられる対米サイバー攻撃をめぐる対立や、南シナ海での中国の人工島建設が影を落としている。
 習主席は広場を見晴らす天安門の楼閣上で「われわれ中国人は平和を愛する」と述べ、「いかに強大になろうと、中国は決して覇権ないし領土拡張を求めない。自らが受けた過去の苦しみを他のいかなる国にも押しつけない」と強調した。
 習主席はまた、中国人民解放軍が30万人の人員を削減すると発表した。推定230万人の解放軍で、過去10年以上で最大の削減だ。その後の国防省声明では、削減は2017年末までに実施され、旧式の装備の部隊や非戦闘要員を削減の対象にするという。
 それでも、多くの西側当局者やアナリストは、イベントの主眼は兵員削減の発表ではなくて武器の誇示だったとみている。それは空母搭載戦闘機やミサイルを含むもので、アジアにおける紛争で米国の介入を阻止することを意図したものだと、これら当局者やアナリストらはみている。
 オーストラリア国立大学国家安全保障カレッジのローリ・メドカーフ学長は「最新鋭の兵器を誇示することと、人員削減を発表することは矛盾しない」と指摘。「実際それは首尾一貫している。歩兵という人海戦術ではアジアにおける次の戦争で勝利できない」と述べ、「技術の未熟な兵士の層を薄くすれば、サイバー機器や超音速ミサイルなどハイテク兵器に資金を充当できる。海軍の近代化は言うまでもない」と語った。
 初めて披露されたハイテク武器の一つに、対艦弾道ミサイル「DF(東風)21D」がある。これは多くの専門家によって「空母キラー」と呼ばれるものだ。とりわけ接近する米空母を標的にして設計されているからだ。
 パレードではまた、中距離弾道ミサイル「DF26」が初披露された。これは、中国本土の発射台から通常型弾頭を装着してグアム島の米海軍基地を攻撃する能力のある中国初のミサイルだ。
 米国政府は、北京駐在の米国大使を代表としてパレードに出席させた。米国はこれまで、和解を促進する未来志向のイベントを開催するよう中国に促してきた。米大使館からはコメントを得られていない。
 パレード終了後、米下院軍事委員会シーパワー・投射戦力小委員会のランディー・フォーブズ委員長(共和、バージニア州)は声明で、「印象的なのは、米国が厳粛な式典で第二次大戦の終わりを記念したのに対し、中国が自国の増大する軍事力と、近隣諸国を威嚇するために建造した新兵器の誇示を選んだことだ。アジアに平和と繁栄をもたらした1945年以降の国際秩序を損なおうという中国の意図は、ますます明白に思われる」と述べた。
 日本の安倍晋三首相は出席しなかった。菅義偉官房長官は3日、「過去の不幸な歴史に過度に焦点を当てるのではなく、国際社会が直面する共通の課題に対して未来志向で取り組む姿勢を示してほしいと先方に伝えた」と述べた。
 米国の同盟国で、指導者が出席したのは韓国だった。韓国と中国の関係は近年緊密化しているが、それは中国と北朝鮮の金正恩第1書との緊張が一因だ。金氏はパレードに出席しなかった。
 指導者ないし軍隊が参加した国の多くは、中国と経済的ないし軍事的に近い中央・東南アジア、アフリカ、そして南米の国だった。
 第二次大戦の主要な連合国の中で、ロシアだけが指導者(プーチン大統領)と兵士を参加させた。他の諸国で兵士を派遣したのは、メキシコ、フィジー、モンゴル、そしてバヌアツだった。
 しかし中国主導部の主たる関心は、パレードを見つめる中国市民だった、とアナリストや外交官たちは言う。
 北京の中国人民大学の時殷弘教授(国際関係論)は「パレードは、軍の最高司令官として、そして世界的な大政治家としての習近平の威信を高める一助になるし、国家的なプライドも高める」と述べた。
 同教授は「それは、台頭する中国が世界の舞台で主要プレーヤーになったとの見方を強める」と述べ、「中国の軍隊の士気と自信も高めることになるだろう」と語った。

 ◎上記事は[WSJ Japan Real Time]からの引用です
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【抗日70年行事】軍事パレードの新型兵器 米国と“対等”の戦力を誇示 2015.9.3 
なりふり構わぬ習近平氏 国際刑事裁判所から逮捕状の出ているスーダン・バシル大統領を招待 
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