のしかかる赤字 新型コロナ禍が医療機関に与えたダメージ 悩める病院 半数が経営難 2020/11/19

2020-11-19 | 社会

のしかかる赤字 悩める病院  コロナ禍 半数が経営難  
 中日新聞 2020年11月19日 特 報

 冒頭画像;ストライキを行い、街頭で医療機関への財政支援などを求める代々木病院の職員ら=5日、東京都渋谷区で

 新型コロナ禍が医療機関に与えたダメージは深刻だ。病院関連三団体が七〜九月の病院経営状況を調査した結果では、受診控えやコロナ対策備品代などで経営が圧迫され、半数の病院が依然赤字だった。第三波が襲来する中、どう医療機関の「重篤化」を防ぐか。(中沢佳子)

 「運転資金が足りない状況は今も続いている」と窮状を語るのは、インターパーク倉持呼吸器内科(宇都宮市)の倉持仁院長。発熱外来の診療スペース増設や医療機器購入など設備投資がかさんだ上、マスクや防護服など備品代もばかにならない。コロナ対応でスタッフを増員し、人件費も前年の二割増しに。「コロナ対応はPCR検査や解熱剤の処方ぐらいで、膨らむ一方の出費に見合う診療報酬が入らない。やればやるほど赤字になってしまう」 
 倉持さんの診療所は人員や給与の削減は考えていない。しかしこれから各地で破綻する医療機関が出かねないとみる。「患者の戻りがまだ五〜七割ぐらいのところもある。職員のパート化や廃業の話も聞く」 
 コロナ禍での受診控え、急ぎではない手術や入院の先延ばし、対策費の負担増が響き、医療機関の収益は悪化したままだ。日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の調査では、回答した全国の1460病院のうち、7月も赤字だったのは53.8%。8月は48.6%、9月が52.0%だった。赤字が6割超だった4~6月に比べれば改善したが、3団体は「上半期の収支悪化が目に余る。今後、冬の賞与の支払いや資金需要が増える時期になる。入院や外来数を戻そうにも、小児科、眼科、耳鼻科などは受診控えが続いている」と訴える。
 政府は本年度第2次補正予算で、病院などへの無利子、無担保の融資制度を拡充。医療従事者などへの慰労金支給や、コロナ患者受け入れに備えた空床の確保料補助などに乗り出したが、こうした窮状を救えてはいない。
 インターネット上で「国は赤字の病院を救ってください」と掲げて署名活動を展開した「医療を守ろうプロジェクト」代表で都内の医科大助教の室尾暁(さとる)さんは「支援策は届ききっていない。マスクやフェースシールドを買うにも事欠く医療機関もある。職員が自腹で備品を用意したり、給料を減らされたりなどしわ寄せもきている」と話す。
 賛同者からは「なぜ最前線で戦う医療従事者に税金を使わないのか」などの声も寄せられた。室生さんは医療機関の赤字に対する補填を求める約6万2千人分の署名を13日に厚生労働省へ提出。「医療機関の自助努力で回復するのは難しい。減収への補填と、備品代など負担が増す感染対策への手当ても必要だ」
 医療情報フリーペーパーの元編集長で、医療開業支援に携わる伊藤美賀子さんは「スタッフの多い病院では、人件費が高く、受診控えが続く小児科の医師から勤務日数を減らされている」と語る。知人の小児科開業医からは「資金がもうすぐ底を突き、廃業を考えている」と打ち明けられたことも。伊藤さんは「小児科は一人当たりの診療時間が長い反面、診療報酬が他科より低く、多くの患者を診ることで経営を成り立たせてきた。このままでは多くの小児科が消える。せめて診療報酬を他科並みに見直さなくては」と訴える。
 各地で再び感染拡大が見られる今、医療機関が倒れては元も子もない。神奈川県立保健福祉大大学院の坂巻弘之教授(医療経済学)は「医療機関の減収分を診療報酬の見直しで対応するには限界もある。政府は医療機関の運営に直接届く資金援助の手だてを考えるべきだ」と指摘した。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)


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