日刊サイゾー 2016.04.24日
【熊本地震】川内原発停止を叫んだ4.19反原発官邸前デモ、仲間内でも懐疑的な声が……
熊本地震では、鹿児島・川内原発に事故の懸念も広がり、共産党や反原発団体が運転停止を求めているが、逆に九州の人々からは「今止めれば被災地の電気復旧の妨げになる」という反発も出ている。九州電力を取材してきた地元紙記者によると「今回の地震で安全上の問題は生じていないのが結論」だという。
「既定では、想定される最大の震動が620ガルとされているんですが、原発はそれよりずっと前の160ガルで自動停止するようにできています。今回の地震では、熊本で最大のマグニチュード7を記録した時間帯に薩摩川内市でも震度4程度が観測されましたが、わずか8.6ガルだったんです」
ところが、反原発を主張する政党や団体は即時停止を訴え、19日に首相官邸前でデモを繰り広げていた。
「でも、今川内原発を停止すれば九州電力は火力発電所をフル稼働させなければならず、そうなると余震のある熊本や大分にある大型の火発に頼ることになりますよ。福島の事故後、ここは新たな基準で再稼働しているので、安易な停止は停電を引き起こすだけだと思いますが……」
また、川内原発を停止させた場合、九州電力にかかる代替の燃料費など月100億円の負担増という指摘もある。それだけに地元の反応は「停止という声は少ない」というのだが、19日のデモでも参加者からもこんなことが聞かれた。
「原発自体に反対なので参加していますが、アレ? と思ったのは、これまで九州にマグニチュード5以上の地震があったら川内原発は事故が起きるって主張をしてきたので、その根拠が間違っていたかなとは思いました。稼働には反対ですが、正しくないデータで批判するのはよくないです」(20代男性)
民進党の江田憲司代表代行は18日の記者会見で、川内原発の停止を求める考えを示し「九州地方のみなさんが大変不安に思っている」と勝手に代弁していたが、この2日後、同党の岡田克也代表は安倍晋三首相との会談で、停止は求めず「避難計画の再検証」を申し入れるトーンダウンとなった。このあたり強く停止を訴える根拠が乏しかったのかもしれない。
19日のデモは約800人が集まったとされているが、恒例の反原発デモに比べると参加者が見た目に少ないようにも見えた。事実、参加者も「来なかった仲間も結構いた」というのだが、「安全地帯で批判するより熊本でボランティアした方がと考えた人もいたから」とのことだった。
震災後、熊本市内でも「NO NUKES」と反原発のボードを掲げてデモをしていた集団もいたが、県民の反応は冷たく「それどころじゃないだろ」と罵声が浴びせられたとの報告もあった。反原発活動をしているフリーライターも、これには懸念を示す。
「デモは重要な抗議活動ですが、大事なのは中身。人種差別の団体対立とかの方では本題そっちのけで、みっともない争いになってしまっていて、冷めてデモから離脱する人が続出しました。反原発もちゃんとした理論で戦わないと、やみくもに反対を叫ぶだけなら似たようなものになってしまう不安はあります。最近は活動中の対立から暴力事件みたいなこともあって、デモと距離を多く反原発派もいます」
デモ内では反原発の活動家から「むしろ事故でも起きたほうが勢いづく」なんて本末転倒な声も聞かれたが、この大地震でも川内原発に影響がなかったなら活動に懐疑的になる参加者も出てきそうだ。皮肉にも「反原発団体こそ、メルトダウンしないようにしないと」とフリーライターは話していた。
(文=鈴木雅久)
◎上記事は[日刊サイゾー]からの転載・引用です
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◇ 原子力規制委「科学的根拠に基いて川内原発を現状では停止させず」/ 民進・共産党「停止を」 2016/4/18
◇ [運転差し止め即時抗告審]川内原発差し止め認めず 福岡高裁宮崎支部 西川知一郎裁判長 2016/4/6
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