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能楽継承に危機感 研修生の応募ゼロ

2019-10-21 | 本/演劇…など

【伝統芸能】
能楽継承に危機感 研修生の応募ゼロ
 2019年10月21日 月曜日 中日新聞 夕刊
 東京・国立能楽堂が六月から募集しているプロ能楽師養成のための研修生制度に、四カ月半経ても応募者がいない。一九八四年の制度開始以来、多くのプロを輩出し、六百年以上続く能楽の継承に重要な役目を負ってきたが、異常事態に担当者は頭を抱えている。 (ライター・神野栄子)
 研修生は、能で主役(シテ)の相手を務める「ワキ方」、笛や鼓などの「囃子(はやし)方」、物語の転換に重要な役回りをして、狂言の役者としても欠かせない「狂言方」の三役を若干名ずつ募集している。経験不問、原則二十三歳以下の男女が対象。募集は原則三年おき、研修期間は六年。プロ能楽師に指導を受ける。
 同能楽堂によると、八四年度の第一期生には六十人の応募があり高倍率の選考となったが、次第に応募者が減少。現在研修中の二〇一四年度からの九期生は七人、一七年度からの十期生は四人の応募しかなかった。研修を終えた八期生までの計三十六人中、二十七人がプロとして活躍している。

■ 「触れる機会 少ない」「展望 持てぬ」背景に
 減り続けている理由について、同能楽堂養成係の三浦毎生(つねお)さん(43)は「昔は親が能に興味を持っていて子に勧めたりしたが、今は若者の趣味も多様な上、能楽に触れる機会が少ない」と推測する。
 来春の修了を目指す九期生のうち、太鼓方の姥浦理紗(うばうらりさ)さん(33)=神奈川県=は社会人として働いていたころ、友人に能の楽しさを教えられ、制度を知って応募した。「すべてが難しかったが、できることが少しずつ増えるにつれ、楽しくなってきた」と話す。親指と人さし指の間にできたタコを「稽古を積んだ証し。勲章ものです」と示す。
 第一期から指導している太鼓方金春流の人間国宝、三島元太郎(83)は「“本物”を伝えるよう努めてきた。技術はもちろん、能の持つ気品を身に付けてほしい」と願う。制度のピンチに「食べていけることが大切。昔は一般人への指導で能楽師の生活が成り立っていたが、今はそれも減った」と憂える。
 第一期の修了生で、第一線で活躍するワキ方宝生流の梅村昌功(まさよし)(59)は「プロの講師陣にきちんと教えてもらう制度は魅力。自分が身に付けた技芸を生かし、舞台を創った時の達成感は格別だ」と語る一方、「能楽は世界に誇る文化遺産であるが、現在の学校教育では自国の伝統文化に慣れ親しむ機会が少ないようだ」。
 研修生制度の危機的状況について、横浜能楽堂の中村雅之芸術監督は「研修を受けても、経済的に将来の展望が持てないことも大きい。海外の国立劇場では、役者や音楽家などを抱えて生活を保証しているのが一般的だ。能や歌舞伎は集団芸なので、一つの役割が欠けても成り立たない。人材は一朝一夕には育たない。すぐにでも手を打たなければ間に合わなくなる」と警鐘を鳴らす。
 第十一期生の募集締め切りは来年一月三十一日。詳しくは国立能楽堂のホームページ(https://www.ntj.jac.go.jp/training.html)か、同能楽堂養成係=(電)03・3423・1483=へ。

■「歌舞伎音楽」もピンチ 再募集
 国立劇場には歌舞伎の人材を育成する研修生制度もあり、修了生はいまや歌舞伎公演に欠かせない存在。同制度は貴重な養成機関になっている。しかし、本年度開講を予定していた、歌舞伎の義太夫や三味線などを学ぶ「竹本」は応募者ゼロ、太鼓・鼓の「鳴物」には一人の応募があったが選考に合格できず、開講できない事態になっている。両部門とも十月から再募集している。
 「俳優」部門も含め原則、隔年募集し、研修期間はいずれも二年。近年の応募状況をみると、竹本は二〇一一年度は七人、一七年度は五人。鳴物はこのところゼロ~三人、一一~一四年度は合格者ゼロで開講できなかった。
 同劇場の担当者は「時代にあったアピール方法を考えないと」と危機感を募らせている。詳しくは同劇場養成課=(電)03・3265・7105=へ。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)


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