ゲーツ米国防長官「何のために太平洋を越えてきたのか」そんな思いではないか=日米摩擦

2009-10-22 | 政治
日経新聞 社説1 日米同盟の危機招く「安保摩擦」を憂う(10/22)
 何のために太平洋を越えてきたのか。ゲーツ米国防長官は、そんな思いではないか。
 会談した鳩山由紀夫首相、岡田克也外相、北沢俊美防衛相のだれも、聞きたい話をしてくれなかった。インド洋の給油中止の見返りとなる支援の具体策であり、沖縄・普天間基地の移設をめぐる日米合意の確認である。
 立場を入れ替えて考えれば、わかりやすい。米側で政権交代があり、日本の防衛相が訪米したとする。米前政権との合意を再確認したいと考える防衛相に対し、米側は具体的言質を与えない。何のための訪米だったかと彼は首をかしげるだろう。
 政権交代で政策が変わるのは当然だが、国際約束は別である。例えば1996年にクリントン米政権と合意した普天間返還の日米合意を次のブッシュ政権は受け継いだ。合意を覆せば、日本側は米外交を信頼できなくなっていたはずである。
 外交の継続性重視は政権交代に慣れた国では一般的慣行である。いま日本は試行錯誤の段階にある。
 ゲーツ訪日で明らかになった安全保障案件をめぐる日米摩擦は、政権交代に伴う一時的現象にとどめなければならない。懸案を処理できない現状が続けば、11月のオバマ大統領訪日も、今回と同様、言葉で成功を取り繕っても実質は失敗となる。
 安全保障をめぐる不一致が長く続くようなことになれば、同盟関係は緩み始める。
 オバマ政権は、同盟国日本よりも中国を信頼に足るパートナーと考えるようになる。北朝鮮問題をめぐる外交も、現在以上に中国ペースになり、日本には不満が蓄積する。ガス田をはじめとする日中間の懸案をめぐる交渉でも、米国の後ろ盾を失った日本の立場は弱くなる。
 ゲーツ長官との間で懸案をめぐり合意しなかった事実をもって「対等な日米関係」を演出できたとする思いが、仮に鳩山政権にあるのなら、危険な自己満足である。
 外相は普天間問題で日本の「困難な政治状況」を指摘して理解を求めた。選挙で大勝した後の与党幹部の口から出れば、調整力と指導力との不足に対する言い訳に聞こえる。
 鳩山政権が繰り返す「日米基軸」が外交辞令でないとすれば、自らの判断で、給油の実質的継続と一日も早い普天間基地移設の実現に向けた具体的行動を示す必要がある。でなければ、日米同盟は名存実亡となり、緊急事態に機能しなくなる。
 首相、外相、防衛相に危機感が足りない。それが同盟の危機だ。

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