<少年と罪>第7部 さまよう家族 (2)予兆  佐世保高1同級生殺害事件

2018-01-29 | 少年 社会

<少年と罪>第7部 さまよう家族 (2)予兆  なぜ隠した 親友悔い 
 中日新聞 2018/1/22 朝刊
 テレビのニュースが騒がしかった。すぐ近所で高校一年の少女=当時(15)=が殺人を犯し、動機を「人を殺してみたかった」と供述したという。2014年7月、長崎県佐世保市で起きた「高一同級生殺害事件」。市内で学習塾を経営する男性(56)は、容疑者が親友の娘と知って混乱した。「理解の度を越えている」
 この経営者は、有力弁護士だった少女の父親と同じ東京の大学で学び、帰郷後に青年会議所で意気投合した。同年齢で25年間、家族ぐるみで付き合ってきた仲。少女の実母で東京大卒の前妻ががんを告知されたときは、悲嘆する父親と朝まで飲み明かした。丘の上の豪邸で父親が少女に算数を教える姿も覚えている。「エリート一家。両親と同様に、彼女も勉強がよくできた。なのに、なぜ」
 事件前、少女は問題行動を繰り返していた。小学6年の時、漂白剤やベンジンを混ぜた液を作り、同級生の給食にスポイトで5回、混入させた。事態を重視した学校はカウンセリングを勧めたが、父親は「子どものいたずらにすぎない」と、2回で打ち切らせた。
 殺人事件の5ヵ月前には、就寝中の父親を金属バットで殴って殺そうとした。大けがをした父親は頭に包帯を巻いて、経営者と約束していたゴルフに姿を見せた。「どうした?」と案じると、父親は笑って「家の階段から落ちた」。真相を知る別の関係者には「事件にしたくないから」と口止めしていた。
 少女は母と死別してから、高校入学後に実家を離れてマンションで一人暮らしを始めた。父親は経営者に「留学準備のため」と話したが、本当の理由は別にあった。バットで殴られた後、少女を精神科医へ受診させ「一緒に暮らすと命が危ない」と考えたのだ。診察で、少女が小学5年の時から「命を奪うこと」に特別な感情を抱き、猫を殺していたことも知った。
 周囲に予兆を隠し続けた父親は、ようやく児童相談所に電話をしたが「時間外」で相談できなかった。翌日、殺人への妄想を膨らませていた少女は、友人の女子生徒=当時(15)=をマンションの部屋に招き入れて絞殺し、願望を実現させてしまった。親の目が届かない密室だった。
 県教委の調査委員として学校の対応などを検証した児童精神科医の高岡健(64)は「親が子どもの問題行動を隠すのは、親自身のためにすぎず、子どものためにならない。異変を感じたらすぐ周りに相談し、家庭の『外』の声を子育てに採り入れるべきだ」と語る。「それが、子どもを守ることになる」
 父親は少女の逮捕後、経営者にメールで「やっていく自信がない」と弱音を吐いた。経営者は「償いをするのが、これからのおまえの人生」と励ました。だが、その1ヵ月後、父親は自宅で首をつって自殺した。
 社会的地位があったから、周りを気にして娘の問題行動を隠したのか。それとも「わが子が殺人まで起すはずはない」と盲信していたのか。今となっては分からないが、経営者は悔やみ続ける。「悩みをもっと語ってほしかった。そうしてくれたら、未然に防げたかもしれない」(敬称略)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖) 
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〈来栖の独白〉
 書き写しながら、いつもと同じ思いを繰り返す。名古屋で起きた事件の被告(元名大女子学生)に酷似している、と。殺害(或いは「死体」)への止むにやまれぬ好奇心、頭脳明晰であること・・・。優秀な彼女たち。それが、どうして、このような行為に至るのだろう。
 *本編、第7部は(1)~(6)までの連載でしたが、弊ブログでは(2)と(6)のみ、掲載いたしました。

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