安倍氏銃撃事件を保守たたきに利用する朝日と毎日

2022-09-25 | 政治 メディア

安倍氏銃撃事件を保守たたきに利用する朝日と毎日

イスラム思想研究者・飯山陽

 朝日新聞や毎日新聞は保守思想を蛇蝎(だかつ)の如(ごと)く嫌う。彼らは「保守は悪」という印象操作に日々余念がない。目下のところ、彼らがそのために利用しつくしてやろうとしがみついているのが、7月8日の安倍晋三元総理銃撃事件だ。
 朝日は8月30日付朝刊の「耕論」で、「保守層のアイコン(偶像)」である安倍元総理の「美しい国、日本」という言葉は「空っぽな主張」であり、「モリカケ桜」に見るように「在任中の安倍さんは好き放題」だったとそしる文筆家、鈴木涼美氏の感想を掲載した。伊藤昌亮成蹊大学教授は安倍氏を殺害した山上徹也容疑者について、「安倍氏という強者の『アイコン』の下に集うネット右派になりきれなかった」、「孤独」な「弱者」だと同情し、彼のような弱者を「発見」し「連帯」するかが課題だと提唱する。
 朝日が9月5日付朝刊に掲載した岡野八代同志社大学大学院教授の主張によると、事件の背景には自民党が推進した「子育ての責任は家族が負う」という家族観があるらしい。「山上容疑者は、家族の外に支援を求めることができず、孤立を深めた」と臆測し、悪いのは国や政治だと述べる。
 毎日ではサンデー毎日の山田道子元編集長が8月30日のウェブ記事で、「ジェンダー平等やジェンダーフリーは、旧統一教会にとっては社会における男女のあり方、家庭のあり方を根本から変えてしまう危険な思想」であり、自民党は「その団体と広く関係を持つ」から「(各国の男女格差を測る指数)ジェンダーギャップ116位」は当然だと非難した。彼女には、「伝統的な価値観が、皮肉にも銃撃事件とつながっていると思えてならない」そうだ。
 事件の真相はまだ明らかでないにもかかわらず、朝日や毎日は日々、「有識者」の感想や気持ちや臆測や思いを掲載し、悪いのは保守思想や伝統的価値観、それを政策として推進する自民党だと繰り返す。そして山上容疑者はその犠牲者だと擁護、同情する一方、保守の象徴だった安倍氏が殺されたのは自業自得だと示唆する。自民党を支配しているのは旧統一教会だ、と陰謀論まがいの風説を広めることもいとわない。
 しかし、安倍氏を殺害したのは保守思想や伝統的価値観ではない。山上容疑者という人間だ。朝日や毎日はそれをすり替え、保守や伝統をおとしめるために利用する。彼らの主張には、安倍氏という、銃によって突如命を奪われた一人の人間に対する哀悼や憐憫(れんびん)は一片も見いだせない。

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【プロフィル】飯山陽
 いいやま・あかり 昭和51年、東京都生まれ。イスラム思想研究者。上智大文学部卒、東大大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。著書に『中東問題再考』など。 

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です


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