半径20㌔圏内を警戒区域/「合理的な根拠なく、こうした措置をとるのは憲法違反」マチベン

2011-04-21 | 政治

東日本大震災:福島第1原発事故 南相馬市、20キロ圏50世帯に避難促す/福島
 ◇「警戒区域」設定方針受け
 政府が福島第1原発から半径20キロ圏内を「警戒区域」に設定する方針を受け、南相馬市は圏内に残っている市民に避難を促している。現在は強制力のない「避難指示区域」だが、警戒区域は災害対策基本法に基づき、強制的に立ち入りを禁じたり、退去を命じたりできる。約50世帯が生活しているとみられ、市は広報車などを出して引き続き避難を呼びかける方針だ。
 同市によると、警戒区域は同市小高区の全域と、原町区の▽小沢▽堤谷▽江井▽下江井▽小木迫▽鶴谷▽米々沢▽小浜(間形沢を除く)▽雫のうち袖原▽大甕のうち田堤、森合、森合東、観音前▽高のうち町田、北ノ内、北川原、山梨、高田、舘ノ内、弥勒堂、薬師堂、御稲荷、花木内、鍛冶内、中平、大久保前、原、権現壇、高林。【神保圭作】毎日新聞 2011年4月21日 地方版
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警戒区域 9市町村百数十人超 処罰覚悟の住民も
2011年4月21日 東京新聞 朝刊
 政府が「警戒区域」に設定する福島第一原発の半径二十キロ圏内に、少なくとも百数十人が今も住んでいることが、圏内にかかる九市町村への取材で分かった。警戒区域になれば強制退去もあり得るが、住民からは「慣れない土地に行きたくない」と渋る声も上がる。行政側も「説得に応じてくれるか分からない」と困惑している。 (原発事故取材班)
 ●妥協
 「もう疲れたので妥協するが、また戻る。罰則は気にしない」。震災後も第一原発から十数キロの自宅で、妻(81)と暮らしてきた南相馬市小高区上浦の阿部清さん(83)は二十日、市の説得で避難することを決めたが、納得はしていない。
 二十キロ圏内が避難指示区域となった震災翌日の三月十二日、近隣住民は皆避難した。直後は電気も使えて不自由は感じなかったが、月末に突然停電。電力会社に抗議しても「国の方針」と言うばかり。冷蔵庫の食料は腐り、米を炊くプロパンガスも残りわずかとなり、阿部さんは避難を受け入れた。だが「私はガン宣告を受け、ほかにも持病がある。避難所に行った方が寿命が縮む」といずれ帰宅するつもりだ。
 二十キロ圏内の楢葉町の自宅に残る松井義男さん(84)は「一度は避難所に行ったが、人混みが嫌で戻った。寂しかあないよ」。足が悪く外出はほとんどしないが、友人がカップ麺や弁当を届けてくれるという。警戒区域の設定については「年寄りだけえね。放射能はどこさ行っても同じ。原発の南側で風上だし、大丈夫だ。心配しないでええ。放っといてくれればええよ」と笑った。
 ●治安
 「町の治安を守るためには警戒区域が必要」と話すのは、原発から二十一キロの緊急時避難準備区域に住む南相馬市原町区下太田の七十代男性。「二十キロ圏内は県外車両が来て空き巣が横行している」として仲間と防犯パトロールをしている。「圏内に入る人に『どこへ行く』と聞いても、『親類の家に来た』と言われたらおしまい」。立ち入り禁止になれば警戒しやすくなると考えている。
 ●説得
 九市町村のうち、避難していない住民が最も多いのは南相馬市。市南部の二十キロ圏内に、今も約百人がとどまっているという。
 楢葉町には十二世帯十七人の住民が残留。町は自衛隊と協力して十二日までに二~三回にわたり、直接家を訪ねて避難するよう説得したが、拒まれた。町の担当者は「生まれた土地を離れたくないという高齢の住民ばかり。警戒区域になる前に、あらためて説得したいが応じてくれるか分からない」と苦悩を明かす。
 町全域が圏内に入る富岡町。十日時点の町の調査では、少なくとも高齢者を中心に七世帯八人の住民が確認された。避難の説得にあたっているが、町の担当者は「牛を置いてはいけないという人もいた」と当惑気味だ。
 村東部が圏内に入る川内村では、一人暮らしの五十七歳と八十四歳の女性が残る。職員は何度も自宅を訪れたが、「慣れない土地に行きたくない」「避難所での共同生活に自信がない」など本人の意志が固く、避難の説得に難航している。八十四歳の女性には介護施設に入所してもらうことを検討しているが、要介護認定の手続きも済んでおらず時間がかかる見通しという。
 田村市と浪江町にも数人残っており、連日説得を続けている。一方、第一原発がある大熊町と双葉町、一部が圏内にかかる葛尾村には、避難していない住民はいないという。
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〔附記〕
 マチベンさんからのTB。ニュース記事のみの貧しい拙エントリを補完してくださって余りあるお原稿。掲載させて戴きます。

2011年4月21日(木) 立ち入り禁止(警戒区域指定)は憲法違反だ
政府は、22日午前0時から福島第一原発から20キロ圏内を警戒区域に指定し、罰則を伴った立ち入り禁止措置を取るという。
残った居住者には強制退去もあり得ると伝えられている。
確か、米軍に言われて、20キロ圏内でもモニタリングポストを設けてきめ細かく汚染実態を把握して、日米で情報を共有するというニュースがあった筈と思い、散々探した末、ようやく有料の記事検索で末尾の記事に行き当たった。
新たに30カ所で放射線量を調査しているはずだが、一度も公開されていない。
ニュースでは、20キロ圏内でも、方角によって、1マイクロシールベルトから50マイクロシーベルトを超える値までばらつきが極めて大きいことが明らかになったとされている。
ニュースでは、政府は、きめ細かに汚染の実態をつかみ、今後の対応策の判断材料にするとしている。
政府は今回の警戒区域の設定にこの調査結果を、どう生かしたのか。
同心円による一律の措置は誤りという指摘がなされて久しい。
政府は放射能拡散シミュレーションのデータも保有している。
20キロ圏内には低汚染地域が含まれていることを十分に把握しているはずだ。
低汚染地域における立ち入り禁止や強制退去は明らかに過剰な制限に当たる。
警戒区域の設定という強制力のある措置は、居住移転の自由という憲法上の基本的人権を直接に制約する措置である。
合理的な根拠なく、こうした措置をとるのは憲法違反である。
罰則を伴う強制力ある措置とるのであれば、当然、保有するデータを開示するのが先である。
少なくとも20キロ圏内の全てが、立ち入り禁止を正当化することができる汚染レベルにあることを示すのは人権を制限する大前提であるべきである。
しかも、人権制限は必要最低限でなければならない。
政府が繰り返してきた言い方になるので、気が進まないが、敢えて言えば、20キロ圏内の大半の地域の放射能汚染は直ちに健康に影響を及ぼすようなレベルではない。
つまり急性放射線障害を起こすレベルではない。
10年後あるいは20年後の発ガン率が高まるというレベルであるはずだ。晩発性なのだ。
この点、火山の噴火による溶岩流や土石流によって、直ちに人命が失われる危険がある災害において警戒区域を設定するのとは全く異なる。
逡巡しながら、考えてしまう。
長く住み慣れた土地を離れたくないという高齢者にとって、避難所生活のストレスと、放射能とどちらがどちらが有害なのか。
少なくとも、こうした人にとっては、選択の自由があってしかるべきではないか。
年齢や居住の必要性などを問わず、一律に立ち入りを禁止するという方法も過剰に人権を制限するものとして、憲法違反の疑いがある。
情報開示もなく、議論の暇すら与えず、直ちに強制措置を取ろうとする政府のやり方には、基本的人権の尊重という原則から重大な疑義がある。
アメリカに言われて、20キロ圏内の放射線調査をきめ細かに始めることにしたとするニュースは、全メディアの横断検索でも、NHKが4月3日に放送したこのニュースだけであった。
今では、おそらく、この事実自体が闇に葬られ(何しろ菅政権は尖閣島沖漁船衝突事件以来、秘密が大好きである)、20キロ圏内できめ細かくデータを集めている事実自体がなかったことにされているのかもしれないとすら思う。
20キロ圏内では、おそらく米軍と自衛隊の共同作戦が展開されているのだろう。
見られたくない何かがあるのではないかと、陰謀論好きの僕は想像を膨らませてしまう。
陰謀論好きを増長させるのは、政府の極端な秘密主義の所為である。
参考 4月3日NHKニュース
 福島第一原子力発電所の周辺での放射性物質の拡散状況について、政府と東京電力は、これまで調査を行っていなかった原発から半径20キロ以内の地域についても、新たに、大気中の放射線量の測定を始めました。
 福島第一原子力発電所の周辺での放射性物質の拡散状況について、政府と東京電力は、これまで、原発の敷地内や、「避難指示」が出されている半径20キロより外側の地域で、大気中の放射線量の測定を行っていますが、半径20キロ以内では、▽ほとんどの住民が避難を終えていることや▽測定には被ばくの危険性が高まることなどから、詳しい測定を行っていませんでした。
 しかし、福島第一原発の対応を検討する日米協議の中で、アメリカ側は、「放射性物質の拡散状況を調べるためには、調査が不十分だ」と指摘し、これを受けて、政府と東京電力は、原発から半径20キロ以内でも、およそ30の地点で、新たに大気中の放射線量の測定を始めました。
 調査結果は公表されていませんが、これまでの測定では、▽原発の北西方向にある福島県浪江町(ナミエマチ)の調査地点で、1時間あたり50マイクロシーベルトを超えるやや高い放射線量を計測した一方、▽原発の北の方向にある南相馬市の調査地点では、1時間あたり1マイクロシーベルトを下回ったということで、半径20キロ以内でも、地域によってばらつきがあるということです。
 政府は、よりきめ細かいデータを把握し、アメリカ側と情報共有を進めるとともに、今後の対応策の判断材料に役立てたいとしています。


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