神戸児童殺傷事件から25年 加害少年の更生信じ 事件裁いた井垣康弘さん 2022/5/24

2022-05-23 | 神戸 連続児童殺傷事件 酒鬼薔薇聖斗

加害少年の更生信じ 事件裁いた井垣康弘さん 神戸児童殺傷
  2022/5/23(月) 19:48配信 毎日新聞
 1997年に起きた神戸小学生連続殺傷事件で、小学6年だった土師(はせ)淳さん(当時11歳)が殺害されてから24日で25年となる。事件は刑事罰の対象年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げる少年法改正のきっかけになった。
 事件に深く関わった1人の法曹が2月、82歳で死去した。加害少年の審判を神戸家裁で担当した元判事、井垣康弘さん。通常なら非公開の少年審判の決定要旨の公開を上司に掛け合い、弁護士に転じてからはより詳細な決定全文を出版社に提供し批判を浴びた。「良くも悪くも信念を貫く人だった」と親族は振り返る。晩年まで、事件と向き合い、少年の更生を願い続けた。
 「少年を医療少年院に送致する。持続的かつ強固なサディズムがかねて成立しており、非行の重要な要因となった」。1997年10月17日。少年審判の決定要旨には、事件当時中学3年で14歳だった加害男性(39)が起こした事件の背景が書かれていた。
 家裁の決定要旨公開は異例の対応だった。更生には社会の支援が必要で、事件が起きた理由や背景が社会に開示されるべきだと考えた井垣さんが当時の家裁所長に掛け合うなどし、その他の諸事情も考慮され判断が下されたとみられている。
 大阪府の漢方薬店に6人姉弟の3番目の長男として生まれた。徹夜でマージャンにふける学生生活を知った母に泣かれ、「見返してやろう」と司法試験を受験、67年に任官した。
 高校の同級生で苦楽を共にした妻一子さん(82)は「エリートではなかった」。同期が次々に地裁所長などへ昇進する中、97年に57歳で神戸家裁少年部に配属され退官する64歳まで勤めた。若手が受け持つことが多い少年事件にのめり込み、5000人超という非行少年の審判などに当たった。
 「少年は未熟で、更生し得る」との信念は、加害少年の審判に当たる際も揺らがなかったのだろう。決定文には「今後、良心が育っていく可能性がある」との一文が刻まれた。
 少年はやがて男性となる。2015年、加害男性が遺族の了解を得ることなく事件の手記「絶歌」を出版した際に井垣さんは「遺族への配慮が圧倒的に不足したもの」と指摘しつつ「人間として生きることの決意表明」と読み解いた。
 退官後は弁護士に。大阪府内の自宅兼事務所に卓球台を置いた。加害男性は少年時代、卓球好きだったという。晩年まで加害男性を「A君」と呼び、一子さんには「独り立ちできるまでうちで生活したらいいのに」と漏らした。その願いはかなわなかった。
 批判も浴びた。15年、独自の判断で、審判の決定全文を出版社に提供し、月刊誌の記事となった。これには成育歴などプライバシーに関わる内容が含まれた。
 守秘義務違反に当たるとして、大阪弁護士会から業務停止3カ月の懲戒処分を受け、被害者支援団体からは「遺族の人格権を侵害し、重篤な2次被害を与えている」と指摘された。
 自宅兼事務所には事件で殺害された土師淳さん(当時11歳)と山下彩花さん(同10歳)の写真が置かれていた。井垣さんは「分かってもらえないなあ」と伴侶に愚痴をこぼした。被害者を思っていた井垣さん。18、19歳に限っては特定少年として厳罰化する少年法改正には反対の意見だったという。【巽賢司】

◇神戸小学生連続殺傷事件
 1997年、神戸市須磨区で小学生5人が襲われ、2人が死亡、3人が重軽傷を負った。兵庫県警は「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」を名乗る声明文を出した当時14歳の少年を殺人などの容疑で逮捕した。少年は医療少年院を経て、社会復帰した。

最終更新:毎日新聞

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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* 改正少年法 井垣康弘・神戸家裁判事の寄稿全文(3)(4) 神戸新聞 2000/11/29  
改正少年法 井垣康弘・神戸家裁判事の寄稿全文(1)(2) 神戸新聞 2000/11/29 


少年事件が問うものは?神戸連続児童殺傷事件「酒鬼薔薇聖斗」の審判を担当した元裁判官の井垣康弘さん 

     
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* 神戸連続殺傷事件 少年A〔空想の友・エグリちゃんのグロテスク〕 加害者家族を支え続けた羽柴修弁護士 2019/08/09
* 「少年A」のしたことはすべて母親の責任 神戸連続児童殺傷事件巡る手記 「少年A」を産んだ母親の悲しすぎる末路

     

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◇ 『「少年A」 この子を生んで・・・』神戸連続児童殺傷事件・酒鬼薔薇聖斗の父母著 文藝春秋刊1999年4月

   
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◇ 『絶歌』元少年A著 2015年6月 初版発行 〈…母親を憎んだことなんてこれまで一度もなかった。〉   
◇ 『絶歌』元少年A著 2015年6月 初版発行 太田出版 (神戸連続児童殺傷事件 酒鬼薔薇聖斗)

     
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