「昔も今もピンボケメディア」 田中良紹の「国会探検」

2012-07-04 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

昔も今もピンボケメディア

          

 2012年7月4日 田中良紹の「国会探検」
  小沢一郎氏を中心とする消費増税反対グループ47人が民主党に離党届を出し、民主党執行部は37人を除名処分、その他を党員資格停止や注意処分にした。除名処分は自民党から求められていたもので民主党執行部はそれに応えてみせた。それは小沢氏らが離党届を出したから出来た事で執行部は小沢氏に助けられたと言える。
 前から言うようにこの政局は「ねじれ」が出発点にある。「ねじれ」がある限り予算関連法案は成立しない。予算が執行できないと日本経済は沈没し、国民生活は大混乱に陥る。関連法案を通してもらうためには総理が首を差し出さなければならない。去年は8月に菅総理が首を差し出して関連法案を成立させた。
 従って野田総理は誕生した瞬間から1年以内に首を差し出す運命にあった。それが日本政治の現実である。「何も決められない政治」はこうして続いて行く。「何も決められない政治からの脱却」はすなわち「ねじれから脱却」である。それが今の日本の政治に求められている喫緊の課題である。
 「ねじれからの脱却」にはいくつかの方法がある。「ねじれ」の根本原因はアメリカの反対を押し切り日本国憲法に日本側が押し込んだ規定にある。だから憲法改正をするのが本筋だが、それをやるには衆参両院の三分の二以上の賛成が必要で現実には大変難しい。それ以外の方法として短期的には「大連立」、中長期的には「政界再編」が考えられる。
 片山、芦田、吉田と続く戦後政権はいずれも「ねじれ」に苦しんだ。しかしGHQに占領されていた時代はGHQの指令によって政治を動かす事が出来、弊害が表に出なかった。ところが日本が独立するとGHQの指令はなくなり政治は混乱が予想された。それを回避したのが1955年に行なわれた「政界再編」である。
 保守合同で自民党が誕生し、衆議院も参議院も過半数を確保する与党が出来た。それから33年間、自民党の長期単独政権が続き、政治は安定を保つ事が出来た。しかし1989年に消費税を導入した事から自民党は参議院選挙で大敗北、「ねじれ」が復活した。それからの日本政治は「ねじれ」が生み出す権力闘争に明け暮れてきた。
 そして09年に政権交代が実現すると「ねじれ」の弊害はますます拡大した。「ねじれ」がある限り、政権に復帰したい野党は徹底して反対に回る。予算関連法案を成立させるためには総理の首を差し出さなければならない政治構図が定着した。予算を通すために毎年総理を替える国など世界中にない。
 その構図から脱却しようとするのが今回の消費税政局である。今国会で決めなくとも良い消費税を持ち出して、野田総理は自公を3党合意に引きずり込み「大連立」的状況を作った。それが予算関連法案を通すために必要だと思ったからである。
 一方、小沢氏は3党合意を盾にそれに反発する勢力を連携させる「政界再編」を仕掛けている。1993年に小沢氏が細川政権を誕生させた時の仕掛けは44人の自民党離党から始まった。それが200人を越す大自民党を政権の座から引きずりおろした。
 ピンボケメディアは小沢新党に集まる数が少ないと過大に宣伝し、「小沢は追い詰められた」とか「小沢の戦略に狂い」とか勝手に言っているが、恐らく小沢氏は腹の中で笑っている。戦いは初めから数を集めれば良いというものではない。「残地諜者」として民主党内に残り情報収集する役割を担う人間も必要である。
 野田内閣に対する不信任案を提出できない数にする必要があるかもしれない。野田総理と小沢氏の両方を潰そうとする勢力は、双方に泥仕合をさせるように必ず仕組んでくる。内閣不信任案を出せる数を持てば、不信任案提出を促すプレッシャーがあらゆる方面からかけられる。その挑発に乗ってグループの中に不信任案提出を言い出す議員が出てこないとも限らない。そうさせないように不信任案を出せない数にしておく方が良い事もある。
 小沢氏の離党の目的は野田内閣に不信任案を出す事ではない。民自公3党による大政翼賛会的増税路線に対する戦いの橋頭堡を築く事である。そして近い将来の「政界再編」を成就させる事である。毎年総理の首を差し出すような政治構造を変えなければ日本の将来はないと思っているのである。政治生命を賭けた40人程度の同志で政治構造を変えられる事を小沢氏は93年に既に実証している。
 ピンボケメディアにはそうした視点がない。過去の政治に学ぶ姿勢もない。ただ目先の現象に振り回されているだけである。そういえば93年のメディアも全くのピンボケであった。あの時は今と違って小沢氏らの動きをメディアは後押しし、自民党に厳しい見方をしていたが、それもピンボケだったのである。
 某テレビ局の報道局長が「細川政権を作ったのは田原総一朗と久米宏だ」と発言して問題となりクビになった。衆議院選挙報道でテレビが「反自民」キャンペーンを張ったから自民党政権が倒れたと言ったのである。自惚れもはなはだしい愚か者がメディア界にはいるものだと呆れた記憶がある。
 その時の選挙結果で自民党は負けていない。改選議席を1議席増やして223議席を獲得した。小沢氏らが離党したため過半数は割り込んだが、衆議院第一党で政権を手放さなければならない理由はなかった。それをさせなかったのは小沢氏の政治手腕である。あっという間に8党派をまとめあげ細川政権を作った。ピンボケメディアにはそれが見えない。
 この時の選挙で大敗北したのは社会党である。議席数を半減させて70議席になった。第3党が小沢氏らの新生党で55議席、公明党に次ぐ第5党に35議席の日本新党が入った。その5番目の党首を担いで小沢氏は細川政権を作った。既成政党に幻滅していた国民には新党ブームが起きた。
 熊本県知事から国政に打って出た細川氏は国の中央集権体制を批判した。今の橋本大阪市長や河村名古屋市長と同じ立場である。それを選挙後に小沢氏は担いだ。ただその後に社会党の影響力を削ごうとして8党派の結束が崩れ、社会党と自民党が手を組んで自社さの村山政権ができた。
 次の選挙は93年と似た構図になる気配である。既成政党に対する不信が新党ブームを呼びそうなのである。そして社会党が大惨敗したのに似て民主党が大惨敗しそうなのである。民主党議員にとっては残るも地獄、出るも地獄の思いだろう。確実なのは増税賛成か反対かで激突する選挙になるから、その軸がブレたら落選する。
 それにしても自民党は消費税には賛成するが予算関連法案には賛成しないと言っている。それが野田総理に解散を迫る道だと思っているようだ。しかし野田総理が解散しなかったらどうなる。「日本経済を沈没させるのか」と自民党は轟々たる非難を浴びる。消費税を上げるためだけに野田総理と手を組んだ事になり「増税政党」と呼ばれる。一方、思惑通り今すぐ解散になれば、消費税だけがくっきりと選挙争点になる。どちらに転んでも良い事はないと思うのだが、その辺りの戦略がさっぱり見えない。(田中良紹)
--------------------------------
 小沢新党、11日結成 衆参47人で準備会合 
中国新聞 '12/7/4
  民主党を除籍(除名)される小沢一郎元代表らは4日、新党設立総会を11日に開くことを決めた。小沢氏は国会内で開催した設立準備会合で「もう一度、国民にわれわれの熱意と信義を訴え、今度こそ皆さんの期待に沿うような政権を打ち立てよう」と訴えた。会合には衆院議員35人、参院議員12人の計47人が出席し、小沢氏を代表とする方針を拍手で承認した。
  準備会合で小沢氏は新党名について「皆で考えてほしい」と述べた。また衆院解散・総選挙に関し「非常に近いと考え、あらゆる準備をしないといけない」と強調した。
  この後、小沢氏は社民党の又市征治副党首と国会内で会談し、消費税増税と原発再稼働に反対して連携する方針で一致した。環太平洋連携協定(TPP)と米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題でも共同歩調を取れるか模索することも申し合わせた。
  小沢グループは4日、衆院に37人の新会派「国民の生活が第一・無所属の歩」を、参院に12人の新会派「国民の生活が第一」をそれぞれ届け出た。衆院では、小沢氏に近い衆院議員でつくる新党きづな(9人)と統一会派を結成する方向だ。
  参院会派は議員会長に広野允士、幹事長に森裕子両氏をそれぞれ充てる人事を決めた。
  消費税増税法案の衆院採決で反対し党員資格停止2カ月の処分を受ける加藤学衆院議員は、準備会合に先立ち樽床伸二幹事長代行に離党届を提出。その後、新党参加の意向を記者団に示した。
  加藤氏は民主党の処分が出ていないため新会派の37人には含まれないが、準備会合には参加した。岡本英子、笠原多見子、瑞慶覧長敏各衆院議員は準備会合を欠席したものの、新会派には加わる。ただ瑞慶覧氏と友近聡朗参院議員は当面、新党参加を見合わせる意向を示している。
  これに先立ち、民主党は小沢氏らの除名処分などを協議する党倫理委員会を党本部で開催した。9日に再度開き、処分対象の議員から意見を聞いた上で、同日午後に答申する。その後、速やかに常任幹事会で処分を正式決定する。
-------------------------------
小沢新党:11日に設立総会 幹事長に東氏
毎日新聞 2012年07月04日 21時17分(最終更新 07月04日 22時13分)
 消費増税法案に反対して民主党に離党届を提出した小沢一郎元代表らは4日、国会内で新党結成の準備会合を開き、11日に新党設立総会を開くことを決めた。代表に小沢氏、幹事長に東祥三衆院議員が就く。会合には衆院議員35人、参院議員12人の計47人が出席。欠席した2衆院議員も含め計49人で発足する予定だ。
 新党名や綱領は小沢氏に一任されたが未定。国対委員長に鈴木克昌氏が就くが、政調会長は置かない。選対委員長は小沢氏が兼務する。
 会合で小沢氏は「総選挙で国民の支持を得て、本来の我々の目指した政権を作り上げる。(総選挙は)非常に近いと考え、あらゆる準備をしないといけない」と語った。
 新党メンバーは4日、衆院に37人の新会派「国民の生活が第一・無所属の歩」を、参院に12人の新会派「国民の生活が第一」をそれぞれ届け出た。新党きづな(衆院議員9人)との統一会派結成も検討する。衆院会派には、当面無所属で活動すると表明した瑞慶覧長敏氏も参加した。
 また、4日に民主党に離党届を提出した加藤学衆院議員は民主党の処分が出ていないため、新会派には参加していないが、準備会合には参加した。今後、新党と衆院会派に参加する。
========================================
いまこそ、小沢一郎氏に期待する~久しぶりに政治の世界が面白くなってきた 2012-07-04 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。