介護労働 働く人が守られてこそ ~ [きつい][汚い][危険]の3Kに加え、[休めない][給料が安い]

2012-10-01 | 社会

介護労働 働く人が守られてこそ
中日新聞【社説】2012年10月1日
 介護現場の離職が止まらない。老人施設に勤める元受刑者女性が過酷な勤務で疲れ果てているというコラムを掲載したところ、読者から投書が相次いだ。働く人が守られてこそ介護は成り立つ。
 「孤独な悲鳴が聞こえた」。こんな見出しのコラムだった。刑務所を出て老人ホームで働き始めた女性からかかった一本の電話の話で、夜勤の日は夕方から翌朝まで十六時間、フル回転。職員二人で数十人を受け持ち、体の不自由な人のトイレ介助や呼び出しで休憩もとれない。
 罪を償い、生き直そうとしても、安心できる家や仕事がない。取材で会った記者に電話したのは、境遇を語れる人がおらず、追い詰められていたからだろう。
 賛否の投書が寄せられた。介護専門学校教員(42)は「安心できる仕事がないとは、大変失礼な表現」とし、「介護の仕事は重要でやりがいがある。女性の仕事として不幸ではない」と述べていた。介護がやりがいある仕事であるのは、その通りだと思う。だが、職員やその家族の投書はさらに深刻だった。
 血圧が上がり、体を壊して退職した女性(67)は、同僚が一度に三人辞めた時には夜勤が週三、四回もあった。「熱意や希望も失意に変わる。健康を害して驚くべき低賃金では充実感など生まれない」
 四十代の娘が認知症の介護施設に転職したという男性(82)は、「月五、六回の夜勤は二十四時間の実質徹夜だ。職場のことはいっさい話さないが、親として心配」
 介護支援専門員(53)も「不景気で仕事が見つからない時代なのに、介護の現場はいつも人手不足。きつい、汚い、危険の三Kに加え休めない、給料が安いでは人が集まるはずがない」と訴えていた。
 より手厚い介護が求められる時代に、だれもがその仕事の大切さを理解している。だが、常勤クラスの介護職の平均年収は約三百万円で全産業平均より低い。年間離職率は16%にも上る。このままではもたない。今必要なのは、介護業界の待遇と職場の改善だ。コラムと投書は首都圏エリアに載ったものだったが、介護報酬引き上げの必要性を痛感させられた。
 東京介護福祉労組書記長の田原聖子さんは「事業者に労働基準法など法律を守らせ、職員を休ませるだけでも離職に歯止めはかかる」と言う。働く人を大切に守り、この国に豊かな介護を広げたい。
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