死刑執行19年ぶりゼロ 2011年、確定囚129人
日本経済新聞2011/12/28 18:58
今年は1992年以来19年ぶりに死刑執行がゼロになることが確定した。昨年7月以来、執行がない一方、今年は昨年より12人多い21人の死刑判決が確定し、未執行死刑囚は過去最多の129人に達した。オウム真理教事件の刑事裁判終結を受け、遺族らの間で松本智津夫死刑囚(麻原彰晃、56)らの執行を求める声が上がるなか、執行に慎重姿勢を取る平岡秀夫法相の判断に注目が集まっている。
「死刑制度の是非を考えている間は当然、(執行を)判断できない」。平岡法相は9月の就任会見で、当面、死刑執行の考えがないことを明かした。その後、「個々の問題について自分で考えて結論を出す」と執行の可能性に初めて言及したが、慎重な態度は変わらない。異例の「執行停止」を宣言していた前任の江田五月法相の姿勢を踏襲した形だ。
刑事収容施設法では12月29日から1月3日までは死刑を執行しないことになっている。今年は今月28日までに1件も執行されておらず年間死刑執行ゼロが確定した。
過去に年間の死刑執行がゼロだったのは90~92年の3年間。真宗大谷派の僧侶でもある左藤恵元法相が執行命令書への署名を拒否した。
最後の死刑執行は千葉景子法相時代の昨年7月。民主党政権下での執行はこの時の1件2人だけで、2008年に15人の死刑を執行したことがある自民党政権下と比べ、激減している。
一方、未執行の死刑囚は増加の一途をたどっている。00年は53人だったが、04年以降、死刑判決の確定が相次ぎ、07年には107人まで増加。市民が量刑に関与する裁判員裁判の死刑判決も相次いでいる。
今月、オウム真理教事件の刑事裁判が遠藤誠一被告(51)の死刑確定とともにすべて終結した。刑事訴訟法は、判決確定から6カ月以内に法相は死刑執行を命じなければならないと定める一方、「再審請求中や共同被告人の判決が確定するまでの期間は6カ月間に算入しない」とも規定。このため、これまでオウム事件に絡む死刑執行は見送られてきた。
裁判終結を受け、法務省内では「積極的に執行を見送る理由はなくなった」(同省幹部)との意見が多く、被害者・遺族の間では「早期執行で早く事件に幕を引きたい」(遺族の一人)と早期執行を求める声も上がる。
一方で、オウム真理教被害対策弁護団やオウム真理教家族の会(旧称・被害者の会)は「松本智津夫死刑囚以外の死刑は執行すべきでない」との声明を発表。日本弁護士連合会は「死刑廃止に向けて全社会的な議論をすべきだ」として当面すべての執行停止を求めている。
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死刑:2011年は執行されず 19年ぶりに
今年は1年を通じて死刑が執行されず、19年ぶりの「未執行年」となった。法務省の統計では今年は今月27日時点で21人の死刑が新たに確定。確定死刑囚の数は129人と、戦後最多を更新することになった。
最高裁や毎日新聞の集計によると、全国の裁判所で今年死刑を言い渡された被告は34人。1審10人、2審2人、上告審22人だった。法務省によると、21人の死刑が確定する一方、3人が獄死。昨年末段階の確定死刑囚は111人で戦後最多だったが、今年1年間でさらに18人増となった。
死刑執行は92年の未執行年を最後に毎年続き、昨年7月には千葉景子元法相が民主党政権で初めて2人の死刑執行を命令。同8月には、報道陣に初めて刑場を公開した。
後任は柳田稔、仙谷由人(兼任)、江田五月の各氏が継いだが、在任期間が短かったり、死刑執行に慎重な姿勢をみせるなどして、いずれも執行せずに退任。今年9月、現職の平岡秀夫法相が就任したが、年末までに執行しなかった。
刑事収容施設法は、12月29日~1月3日は死刑を執行しないと定めており、28日で年内未執行が確定した。【石川淳一、伊藤一郎】毎日新聞2011年12月28日 21時41分
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死刑執行、19年ぶりにゼロの見通し 法相に執行の動きなし
産経ニュース2011.12.27 21:19
平成23年の死刑執行は27日現在、行われておらず、4年以降19年ぶりに「執行ゼロ」となる見通しとなった。刑事訴訟法の規定では死刑執行には法相の命令が必要だが、複数の法務省関係者によると、平岡秀夫法相が年内に執行を命じる動きはないという。
死刑執行は昨年7月28日に千葉景子元法相が行ったのを最後に止まっている。戦後、執行がなかったのは昭和39、43年と、平成2、3、4年だけだ。
平岡氏は27日の閣議後会見で、19年ぶりに執行ゼロとなる可能性について、「いろんな検討をした結果なので、それ自体、大きな意味があるとは受け止めていない」と述べた。
一方、27日現在の確定死刑囚は130人で、戦後最多を更新。昨年末時点での確定囚は111人だったが、今年1年間で22人の死刑が確定し、3人が病死した。
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〈来栖の独白2011/12/27 Tue.〉
本年は、東日本大震災により、多くの生命が失われた。人間や動物だけではない。山河も喪われた。無残に姿を変え、放射能に汚染された。深い哀しみが日本を覆った。
それでもなお、人は、人を、命で断罪せずにはすまぬほどの「感情」に悩む。この1年間で、21人が死刑確定したという。
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増え続ける死刑囚 「執行なければ、事件は終わらない」と遺族
産経ニュース2011.12.27 21:22
死刑執行が止まる中、膨れあがる一方の確定死刑囚。平岡秀夫法相は死刑制度について「考えを整理したい」「国民的な論議を呼びかけたい」などと繰り返し、9月の就任以降、慎重な姿勢を貫いている。民主党政権になって法相は次々と交代した。法相個人の意思で執行が止まっている現状に犯罪被害者や遺族からは、刑事訴訟法の改正を求める声も出始めた。
■平岡氏の真意不明
今月19日、法務省内で開かれた「死刑の在り方についての勉強会」。死刑廃止国のイギリス、フランスの専門家が、廃止の経緯や現状などの説明を行い、平岡氏らが熱心に聞き入った。
死刑執行がストップしている間、法務省内で続けられてきたのが、この勉強会だ。昨年8月、当時の千葉景子法相が「国民的議論の契機としたい」と設置し、計10回開かれたが、進展はない。法曹関係者からは「勉強会は執行しないための時間稼ぎにすぎないのでは」との声も上がる。
平岡氏は27日の閣議後会見で、「勉強会が何らかの結論を出す性格のものではない以上、個々の問題をしっかり考えていかなければならない」と述べ、勉強会を開く間も執行に含みを残したが、真意は不明だ。
■「どちらが残酷か」
法相の姿勢に、いらだちを隠せないのが遺族だ。
「死刑が執行されない限り事件は終わらない」と語るのは、平成11年の池袋通り魔事件で長女を殺害された宮園誠也さん(77)。加害者は19年に死刑が確定したが、現在も執行されていない。
高齢となり、心配なのは自身の健康問題だ。「犯人より早く死ねない」と身体を鍛えるため、週4、5回のジョギングに励み、今年の夏は富士山にも登った。死刑廃止論者の中には「絞首刑は残酷」との意見もあるが、「娘は何時間も苦しんで死んでいった。一体どちらが残酷なのか考えてほしい」と訴え、「法相は死刑を執行したくないから、逃げているだけじゃないのか」と批判する。
■法改正求める声も
死刑囚の数は増える一方だ。今年6月には、強盗殺人事件の被告が控訴を取り下げ、裁判員裁判で初めて死刑が確定。オウム真理教の一連の事件でも幹部3人の死刑が今年確定し、刑事裁判が終結した。麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(56)を含め13人の死刑が確定しているが、いまだに執行されていない。
21年9月の民主党政権発足後、死刑を執行したのは千葉氏だけ。千葉氏の後任の柳田稔氏、仙谷由人氏(兼任)は短命で執行せず、今年1月に就任した江田五月氏は廃止派で、現法相の平岡氏も「これまで執行に前向きな姿勢はない」(法務省幹部)という。
全国犯罪被害者の会(あすの会)顧問の岡村勲弁護士は「法相は法を守るべき国の最高責任者であり、法を守らないことは許されない。これ以上、執行しない状態が続くならば、法相から死刑執行命令権を取り上げ、検事総長に移す方向で、刑事訴訟法を改正すべきだ」と指摘している。(上塚真由)
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◆日弁連、死刑廃止で統一見解 オウム裁判終結で懸念2011-12-18 | 死刑/重刑/生命犯 問題
日弁連(宇都宮健児会長)は17日までに、死刑制度の廃止を求める「死刑廃止検討委員会」を設置することを決めた。日弁連が死刑廃止方針を統一見解として打ち出すのは、1949年の設立後初めて。オウム真理教関連の刑事裁判が終結し、執行を求める動きが強まる中、広く政府や世論に働きかけ、制度見直しを求める。 2011年12月17日17時05分:共同通信
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日弁連:死刑廃止検討委を設置へ
日本弁護士連合会は、死刑廃止に向けた議論と提言をする「死刑廃止検討委員会」を年明けにも発足させることを決めた。従来、死刑の執行停止に向けた運動を進めてきたが、全面的に廃止の検討を掲げた組織を設けるのは初めて。
日弁連は02年に「死刑制度問題に関する提言」を発表。死刑執行停止法の制定などを実現するため、「死刑執行停止実現委員会」を発足させ、死刑問題を考える公聴会やシンポジウムを開催したり海外の法曹団体と意見交換をしたりしてきた。
今年10月に実施した人権擁護大会では、「死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択。裁判員制度の導入で、一般市民が死刑判決の選択を迫られることなどを踏まえ、国に対し「直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止すること」を求めた。
日弁連は今月の理事会で新たな委員会の設置を決定。「死刑執行停止実現委員会」の名称を変更し、委員の数も増員する方向で準備を進める。
死刑制度を巡っては、法務省内でも法相の勉強会が設置されており、制度の是非を巡る検討が進んでいる。【伊藤一郎】毎日新聞 2011年12月17日 19時46分
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◆法相に、死刑執行の法的義務は存在しない/「6ヵ月以内に死刑執行」は、訓示規定に過ぎない2011-02-27 | 死刑/重刑/生命犯 問題
千葉景子法相による死刑執行に抗議する 弁護士・フォーラム90 安田好弘 2010年7月28日の執行・執行抗議集会から
◎法務大臣には死刑執行の法的義務は存在しない
今回、千葉さんが、「死刑執行するのは法務大臣の義務だ」と言っています。実は、過去、法務省はそのようには言っていませんでした。これを言い始めたのは、後藤田元法相です。彼が1993年3月に死刑執行を再開した後に、自己の行為の正当化のために言い出したことです。彼に対しては、志賀さんや倉田哲治弁護士などが直接会って、執行をしないようにと話をし、彼はそれに対してよく考えてみるとか、団藤さんの本も実際に読んでみるとか、言っていたわけです。ところが彼は死刑を執行し、法務大臣には死刑執行をする法的義務がある、だから執行しないのは怠慢だし、執行しないならば法務大臣を辞めるべきだと、そもそも執行しない者は法務大臣に就くべきではない、と言い出したのです。今回の千葉さんも、詰まるところ同じことを言っているのです。
私たちはその当時から、法務大臣には死刑執行の法的義務はないのだと言い続けてきました。これはスローガンとして言っていたわけではなく、法的根拠を持って言ってきたわけです。刑事訴訟法の475条第1項を見ていただければわかりますが、死刑執行は法務大臣の命令による、としか書いてないわけです。法務大臣が死刑執行をしなければならない、とは書いていません。これは法務大臣以外の者が死刑執行を命令してはならないという制限規定です。第2項に6ヵ月以内に執行命令を出さなければならない、となっていますが、これは法務省自らが訓示規定と言っているわけでして、絶対に守らなければならないというものではないわけです。
法務省が言っていますが、法務大臣の死刑執行はどういう法的性質のものかというと、死刑執行を法務大臣の権限としたのは(権限です。義務とは言っていない)、死刑執行は極めて重要な刑罰なので、政治的責任を持っている人間しか命令してはならないものだ。法務大臣は政治的責任を負っているのだから、いろいろの社会的状況を考慮して、政治的な決断として執行を命令するのだ、という言い方をしています。ここからは義務だという発想は出てこないのです。法務省設置法という法律がありまして、法務省の責任や役目を示したものですが、3条、4条にはっきり書いてありますが、法務省の任務に、「基本法制の整備」、「刑事法制に関する企画立案」とあります。彼らの責務として法体制を改革したり改善したり、法律を新しく制定したり、法律を改正したり、ということがあるわけです。ですから法務大臣は死刑執行をすることが義務ではなく、死刑制度について改善したり、新しい死刑制度に関する企画を出したり、その企画が通るまで死刑執行を停止すると、いったようなことが法務大臣の義務としてあるわけです。千葉さんの発言は、これを完全に無視した発言であるわけです。
さらに言いますと、官吏服務紀律という勅令がありまして、昭和22年に一部改正されており、国務大臣はこれに従わなければならないとされています。その1条には「国民全体の奉仕者として誠実勤勉を主とし法令に従い各職務をつくすべし」とあって、権限を行使する場合は、公僕として法律に則って職務を果たせという職務規範はあっても、死刑執行を命令しなければならないというような、羈束(キソク=つなぎとめる、拘束する)的に、必ず一定の行為を行わなければならないというような職務規範は予定されていないわけです。このように、法の規定からしても、また過去の法務省の理解ないしは解説からしても、法務大臣に死刑執行命令をする義務があるというのは、間違い以外何ものでもないと考えます。この点についても議論しなければならないと、私は思っています。
死刑9人、無罪は10人=1525人に判決―震災で延期も・今年の裁判員裁判
時事通信 12月29日(木)15時53分配信
今年1年間の裁判員裁判で判決を受けた被告数は1525人となったことが29日、時事通信社のまとめで分かった。2009年5月の制度開始以降の累計は3173人。今年は9人に死刑判決が言い渡されたほか、10人が無罪となった。東日本大震災の影響で、被災地では裁判の延期も相次いだ。
まとめによると、死刑判決の9人は、パチンコ店放火5人殺害(大阪地裁)や千葉大生殺害(千葉地裁)の被告らで全員男性。長野地裁は会社経営者一家殺害で元従業員3人に、東京地裁は完全黙秘した被告に死刑を言い渡した。うち1人は控訴を取り下げ、判決が確定した。
長期に及ぶ裁判もあり、パチンコ店放火殺人では、選任から判決までの裁判員の職務従事期間が60日となった。
全面無罪となった10人の内訳は、覚せい剤取締法違反5人▽殺人2人▽傷害致死2人▽強盗致傷1人。うち5人は検察側が控訴を断念して確定した。同じ被告が3件の殺人で起訴され、区分審理された仙台地裁の裁判では、1件で無罪の部分判決が言い渡された。
検察側の求刑を超えた判決を受けたのは10人。うち4人の罪名は強姦(ごうかん)致傷などの性犯罪だった。 震災の影響で、岩手、宮城、福島、茨城の各地裁は計11人の裁判を延期。東北3県では、被災地の裁判員候補者の呼び出しを免除する措置も取られた。
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裁判員制度:見直し求め法務省などに意見書--県弁護士会 /大分
県弁護士会(麻生昭一会長)は28日、裁判員制度の見直しを求める意見書を法務省や国会議員らに発送した。裁判員法が「施行3年後に見直す」としているため。7月までに判決が出た県内15件について全会員約120人にアンケートし、約半数が回答した。
意見書ではまず、被告人が裁判員裁判で審理をするか選択できることを求めた。さらに、裁判員裁判は判決まで長引き被告人を長期間拘束すると指摘。容疑を認めている事件の場合、制度前は逮捕から判決まで2~3カ月が一般的だったが、制度後は4~8カ月かかったという。
また、▽死刑求刑が予想される▽責任能力が争点▽性犯罪▽少年逆送--の事件を対象から除外することを求めた。その理由として、県内で強姦(ごうかん)傷害の被害者が裁判員裁判を拒絶したため、県警が対象外の強姦罪で立件しようとした事件でプライバシー保護が問題となった▽1審の裁判員が責任能力があると判断した事件が2審で逆転無罪となった--事例を挙げた。【深津誠】
毎日新聞 2011年12月29日 地方版
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裁判員制度 長期審理が課題に
NHKニュース12月30日 12時14分
裁判員制度は、おととし5月にスタートしてから、これまでに全国で3500件以上の裁判が開かれました。審理が長期に及ぶ裁判も増えていて、裁判員の負担をどう軽減するかが課題となっています。
裁判員裁判は、おととし5月にスタートしてから3568件開かれ、裁判員を経験した人は2万1000人を超えました。死刑の判決は12件言い渡された一方で、全面無罪の判決も12件ありました。争点が複雑で判断の難しい裁判が増えた結果、裁判の期間は平均4.5日で、スタートから1年目の平均3.5日よりは1日長くなりました。ことし10月に死刑の判決が言い渡された大阪のパチンコ店放火事件など、裁判の期間が60日にわたる裁判も出てきています。来月10日に初公判が開かれる木嶋佳苗被告の裁判は、これまでで最も長い100日間にわたります。裁判所が、今月21日、裁判員の経験者との意見交換会を開いたところ、「仕事や家庭との両立が大変だった」という声や「企業の理解を深めるなど参加しやすい仕組み作りを早急に進めてほしい」といった意見が数多く出されました。一般の人が参加しやすい環境をどう整備するのか、社会の幅広い層の意見を反映させるためにも、裁判員の負担を軽減させるための取り組みが求められます。