中国包囲網へ 日本政府、ベトナム、フィリピンと連携強化
産経ニュース 2014.5.9 18:38
政府は9日、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島近くで中国とベトナムの船が衝突した問題を受け、被害を訴えるベトナムとの連携強化に乗り出した。南シナ海のスカボロー礁で中国と対立するフィリピンや、同盟国の米国とも緊密な意思疎通を図る。沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返す中国をけん制するため、国際社会と「対中国包囲網」を形成する狙いがある。
岸田文雄外相は9日の記者会見で、衝突について「中国による一方的かつ挑発的な海洋進出活動の一環だ」と強調。「中国はベトナムと国際社会に、自らの活動の根拠を明確に説明すべきだ」と述べ、ベトナムを後押しする姿勢を打ち出した。
政府開発援助を使ったベトナムへの巡視船供与計画の実現に向け2国間調整を加速させる方針だ。フィリピン支援でも、昨年7月に巡視船10隻供与を表明した安倍晋三首相の意向を踏まえ、沿岸警備隊の能力向上へ全面協力する。
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◇ ベトナム:南シナ海で軍事演習/ベトナム漁船、南沙諸島周辺で中国艦船から威嚇射撃
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◇ 中国が管轄海域と主張する南シナ海の「牛の舌」/中国は、その誇大な主張の後ろ盾となる軍事力を有している
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◇ 南シナ海では圧倒的海軍力で恫喝 軍艦と札束外交で東南アジア呑み込みを狙う中国/尖閣でも起こり得る
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◇ 【米中首脳会談】 「太平洋を分け合おうぜ」と、談合をもちかけたような「太平洋には十分な空間がある」
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◇ 中国海軍幹部「ハワイより東を米軍、西を中国海軍が管理しよう」/李鵬元首相「日本は地上から消えていく」
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◇ 中国の奥の手は「敵国条項」 その瞬間、「尖閣は中国のもの」となる
◇ 『アメリカの新・中国戦略を知らない日本人』日高義樹著 PHP研究所 2013年2月27日第1版第1刷発行
p54~
第1部 オバマ大統領は石原前都知事に敗れた
石原前都知事がアメリカの新聞に「尖閣列島を守ろう」という大きな広告を出したとき、彼はこう述べた。
「尖閣列島が中国に占領されれば、船舶の自由航行が阻害される」
p55~
これを読んだアメリカ海軍の首脳が私に電話をかけてきて、こう言った。
「石原知事の行動は、戦略的に見て素晴らしいものだ。新聞広告も強い説得力があった」
アメリカ海軍の首脳は総じて言えば石原前都知事に同情的である。表立っては言わないものの、心の中で拍手している。(略)
オバマ政権は、基本的には親中国政権である。(略)『ニューヨーク・タイムズ』などのジャーナリストたち、学者たちは、ビジネス一筋の日本をあまり快くは思っていない。しかも歴史的に日本が侵略国家であったという認識を持っているため、侵略された中国や朝鮮に同情的である。
p57~
尖閣列島についてもこれまでオバマ政権は基本的に日本を助けるつもりはなく、事態をうやむやに処理しようと日本側に圧力を加えた。だが2012年の選挙の結果、50%政権になってしまったオバマ政権の政治力は低下している。対中国政策も変わらざるを得なくなるだろう。
p58~
尖閣列島とは何か。いまや尖閣列島は日本と中国の争いの象徴である。だがこの争いは、ある意味では国際社会における日常茶飯事とも言うべき、兵器なき戦いに過ぎない。この戦いを演出した石原前都知事は、日本とアメリカ、そして中国の3つの国の関係があまりにも欺瞞に満ちており、当然あるべき姿になっていないことを正すために尖閣列島を持ち出したのだと思う。
日本では民主党政権が登場して以来、日本とアメリカと中国の3つが協力して世界を動かすという、いわゆる3本柱説が盛んに言われるようになった。この愚かしい説がどこから出てきたかの詮索は別として、民主党政権が成立した当初、民主党の小沢一郎元幹事長が中国と話し合ったあとにワシントンを訪問するなどといったことから推察して、国際情勢に疎い民主党政治家が先走りして3本柱説を言い出したとしてもおかしくはない。
p59~
だが、この説を主張する人々が理解していないのは、ワシントンには大きく言って中国に対する3つの違った姿勢をもつグループが存在していることである。
1つは、民主党の左寄りのリベラルなグループや『ニューヨーク・タイムズ』で、いまの中国と協力して国際社会を動かしていこうというグループである。
もう1つは、中国が資本主義化を進めて経済的に豊かになれば、やがて民主主義制度に移行し、平和勢力として優れたアメリカの同盟国になるだろうと考える人々である。このグループは、キッシンジャー・グループと重なるが、すでに述べたように、現在のオバマ政権にはキッシンジャー・グループの人々が大勢いる。
3つ目のグループは、独裁的な中国の共産主義体制を滅ぼさなければならないと考えているブッシュ前大統領のグループである。その中核は、共産主義を悪魔だと主張してソビエトを滅ぼすことに全力を挙げたレーガン大統領を信奉するグループで、「レーガン・リパブリカン」と呼ばれている。
以上の3つのグループは中国に対する姿勢がそれぞれ違っているが、現実問題としてはっきりしているのは、中国がアジアにおいて帝国主義的な領土への野心を明確にしていることである。南シナ海や東シナ海だけでなく、中国は各地で領土拡大の動きを見せている。
p60~
中国はここ数年、資源があると見られる南シナ海のベトナムやフィリピン、マレーシアなどの島々を奪おうとしてきたが、いまや日本の尖閣列島、さらには沖縄も狙っている。2012年12月、中国は国連の大陸棚限界委員会に対して、「中国の大陸棚は沖縄トラフに及ぶ」という申請を提出した。
広大な中国は、14にのぼる国と国境を接しているが、国境を越えての侵略を恐れている国は多数ある。なかでもベトナムは1979年、北部ベトナムに対して行われた中国軍による攻撃の記憶が生々しく残っているせいか、私がハノイで会ったベトナム政府の首脳たちは、アメリカよりも中国が怖いと訴えていた。(略)
p61~
アジア各国は中国の軍事力増強を警戒し、領土的野心に対抗して動き始めているが、アメリカに国の安全を頼りっぱなしにして半世紀以上を過ごしてきた日本は、自国の安全を守るための体制を積極的にとろうとしてこなかった。こういった情勢に火をつけたのが、石原前都知事の尖閣列島買い入れ発言だったのである。
東シナ海に浮かぶ小さな島々に過ぎない尖閣列島は、アメリカのオバマ政権が触れたくないと思ってきた問題を白日の下にさらしてしまった。いまオバマ政権の閣僚や官僚たちは、尖閣列島問題がこれ以上拡大したり、さらに悪化して火がついたりすることを恐れ、話し合いで問題を収めてしまおうと全力を挙げている。
しかし、オバマ政権はもはや、この問題をこれまでのようにうやむやのうちに片づけることはできなくなっている。中国の帝国主義的な侵略という事実は、誰の目にも明らかになっているからだ。しかも50%政権として政治力を失ったオバマ政権は、中国に対して厳しい姿勢を取るグループの存在を無視できなくなっている。
いまわが国がとるべき道は、「尖閣列島の実効支配を行っているのは日本である」という事実を強化することである。
p62~
石原前都知事が主張しているように、漁場をつくったり、台風避難施設をつくったりすることも有効な方法だと思われる。
日本が積極的に動き出せば、中国側は当然のことに、『人民日報』や北京放送を通じて批判攻撃を強め、金にあかせて世界中に訴えるだろうが、それは北京政府の宣伝であるとして日本政府もアメリカ政府も聞き流さねばならない。
中国が軍事行動に出た場合には、アメリカはいやおうなく軍事的対応を迫られる。いままでのような、うやむやな姿勢は許されない。日本にとって幸運なことは、親中国政策をとるオバマ大統領が再選されたものの、アメリカの主流である白人グループの信頼を大きく失ったことだ。
尖閣列島の問題は、石原前都知事が予想した通りの方向に動いている。これは国際社会の現実から見れば当たり前のことだが、日本国民のなかには、そうした国際社会の現実と新しい情勢について理解できない人も多い。
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