日中開戦 習近平新政権にとって、後退するという選択肢はない

2013-01-18 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

日中開戦 習近平新政権にとって、後退するという選択肢はない
現代ビジネス 北京のランダム・ウォーカー 2013年01月14日(月)近藤 大介
 元旦の朝は北京で迎えた。気温はマイナス15度。大気汚染のせいで薄曇りのため、とても初日の出を拝む雰囲気ではない。そこで代わりに、中国中央テレビが撮ってくれた新彊ウイグルの美しい初日の出をテレビで見ていたら、携帯電話が鳴った。
 「香港フェニックステレビです。正月特番で『2013年 中日はどうしても開戦せねばならないのか』という討論番組を放映することになり、ご出演願えませんでしょうか」
  この番組は、いわば「中国版‘朝生‘」で、昨年春にも似たテーマで声がかかって、コワモテの中国人出演者たちに袋叩きに遭った覚えがある。だが今回は、北京での翌々日の番組収録日は、ちょうど日本へ帰国する日だったので、丁寧にお断りしたところ、「ならば北京空港から電話で出演してください」と言われた。
 ■日本専門家&軍事専門家の過激な発言
  というわけで、薄ら寒い北京空港の片隅で電話を受けた。北京西郊のスタジオでは、中国を代表する日本専門家&軍事専門家5人が顔を揃えていた。羅援・中国戦略文化促進会事務局長(人民解放軍少将)、胡思遠・中国国防大学教授、唐淳風・商務部研究員、沈丁立・上海復旦大学国際研究所教授、張焕利・新華社世界問題研究センター研究員である。
  電話の向こうから、5人の過激な発言が聞こえてきた。
  いったん日本との戦争になれば、わが人民解放軍は一気呵成に勝ちに行く。
 日本よ、何するものぞだ。
  カール・マルクスも「戦争は政治の延長である」と述べているではないか。中日は「一衣帯水の関係」などというのは過去の話で、いまや「一衣帯血」の関係だ!
  戦争をけしかけているのは安倍の方で、安倍の言い分は、戦争が嫌なら中国が妥協しろというわけだ。われわれの選択は、安倍の妄言につきあわずに、軍備増強あるのみだ。
  01年に中米両軍が中国の領空で接触し、中米危機が起こったが、あの時はアメリカ側が中国に全面謝罪して事なきを得た。今回の日本はわれわれに謝罪する意思がないので、あの時のアメリカよりもタチが悪い。
  私は安倍本人はもとより、安倍の父親(晋太郎元外相)、祖父(岸信介元首相)にもインタビューしたことがあるが、3代揃ってゴリゴリの右翼政治家だ。
  激論には、数百人の北京市民も観客として駆けつけ、意見を述べた。
 「すでに日本鬼子(日本人の蔑称)はわが島を占領したのだ。どのみち日本と開戦するなら、解放軍はさっさと開戦すべきだ」
 「その通りだ。わが国で日本企業に儲けさせてやっているのに、日本は恩を仇で返す奴らだ。戦争だ! 開戦だ!」
 羅 空軍同士の対決は、海軍の対決と違ってこちらにも少なからぬ犠牲が出るので注意が必要だ。
 沈 最低でも島の領土の半分は取らねばならない。
 唐 半分ではなく全部だ。自分の子供を半分敵にやれと言われて、やる親がどこにいるか!
 張 日本の衆議院480議席中、共産党が8席、民社党が2席で、合わせて10席しか平和主義者はいない。7月の参院選が終われば、日本はすぐに平和憲法にオサラバだ。
 胡 その通りだ。日本は昨年「9・11事件」(尖閣諸島の国有化)を起こして以降、軍備拡張に拍車をかけているので、われわれも時間がない。
 羅 わが国は79年に対ベトナム戦争に勝利して高度経済成長を始めた。いまこそ79年の再現だ!
  すっかり怖気づいてしまった私は、「安倍政権はまずは『日米同盟の再構築』を外交の最優先課題に掲げているのであって、改憲だとか開戦だとかは気が早すぎる」というようなことを述べた。
  だが実際、北京では、対日強硬派たちの声が、日増しに高まっているのは事実だ。
 ■日本のことを畏れてしまうような記事が日々溢れている
  中国共産党機関紙『人民日報』社が発行する中国で最も人気が高い国際紙『環球時報』(12月29日付)は、年末恒例の「2013年世界の予測」を発表したが、そこには「中日海戦勃発」が入っていた。同紙は、「韓国を味方につけて、中韓vs日として日本を打ち破るべきだ」との戦略にまで言及している。
  さらに同紙(12月31日付)は、「2013年の中日関係はどうなるか」という全国世論調査の結果を掲載したが、「いまよりさらに悪化するだろう」が33・1%、「このままの悪い状況が続くだろう」が38・1%で、実に71・2%が悲観的に見ている。
  1月5日には、庶民に人気の『京華日報』が、「安倍が村山談話を捏造しようとしている」との記事を出した。この時、安倍首相の大きな顔写真をモノクロで載せていて驚いた。著名人のモノクロ写真は訃報の意で、特に正月からこのような扱いは極めて異例だ。
  1月8日の新華社通信も、安倍首相がまるで宿題を忘れた子供のように左手で頬を掻く恥ずかしげな写真を打電した。「同盟国のはずのオバマ大統領に首脳会談を断られた男」という長文の記事も付いていた。
  1月6日の人民解放軍の機関紙『解放軍報』は、「麻生`拝鬼`」という大見出しで、麻生副首相兼財務相のミャンマー訪問を報じた。といっても報じたのは、日本とミャンマーとの新たな経済関係ではなくて、麻生氏がミャンマーの日本軍の墓地を参拝したというニュースだった。「鬼」とは日本人の蔑称だ。
 日々このような記事が出るため、中国の市民たちは、すっかり日本を畏れている。中国は年間延べ8200万人も海外旅行へ出かけ、特に年末から年始にかけては、「三節」(12月のクリスマス、1月の新年、2月初旬の旧正月)と呼ばれるハイシーズンである。ところが日本へ向かう飛行機だけは、観光客が乗っていない。最大手の国旅を始め、大手旅行代理店のパンフレットからも、日本旅行の案内が消えた。
  このところの中国国内のテレビドラマも、抗日歴史ドラマのオンパレードだ。『民兵葛二蛋』『向着炮火前進』『平原烽火』『銃神伝奇』『干的漂亮』『殺狼花』『神銃』『戦旗』・・。テレビのチャンネルをひねると、これでもかというほど、朝から晩まで抗日ドラマが溢れている。
  これらドラマのほとんどが、悪辣な日本兵が罪もない中国人民を殺戮し、共産党パルチザンが復讐に立ち上がるというワンパターンのストーリーだ。しかも、ドラマは共産党員が日本軍を撃退するシーンで、最高潮に盛り上がる。まるで「中国版忠臣蔵」(?)の世界だ。
  このようなドラマばかり毎日見ている中国人が、「憎き日本にいつか復讐してやる」という気分になるのは当然のことだろう。ちなみに中国では、大学入試でも「共産党抗日史」は必須である。
 ■尖閣問題一色の中国
  中国最大のネット通信会社「新浪」の関係者によれば、昨年1年間で、自社のウエブサイトのトップページにある「軍事」のクリック数が「ゲーム」のクリック数を上回ったという。中国の若者たちは、ゲームよりも尖閣問題に関心が高いというわけだ。
  12月27日には、国防部(防衛省)の楊宇軍スポークスマンが、一年を締めくくる記者会見を開いた。この時の会見も、尖閣問題一色となった。
 記者 日本はF-15戦闘機を繰り出して、無慈悲にわが海監機を追い払っている。ひとたび日本の戦闘機がわが飛行機を直接威嚇した場合、中国空軍はどう応対するのか。
 楊 わが軍は自衛隊機について、高度の関心を持ち、かつ警戒を行っている。わが軍は海監部門とも密接に連携を取り、国家の主権と海洋権益を守っていく。
 記者 国家海洋局によれば、中国海監の飛行機が東海(東シナ海)の春暁油田(白樺油田)空域を巡回している際にも、日本の戦闘機が妨害してくるという。
 これに対して軍は対策を取らないのか。
  われわれは決死の覚悟で、領土主権と海洋権益を守っていく。初の軍用大型輸送機「運-20」の活用も計画中だ。
  ちなみに習近平総書記は先月、中国共産党トップの総書記に就任して初の視察地に、広東省を選んだ。この時、広東軍区にある海軍基地に足を運び、若い頃からの`盟友`である呉勝利・海軍司令員(中国海軍トップ)と会談を行っている。
 呉司令員は、有名な抗日戦士だった父親から、抗日戦線勝利の月(1945年8月)に生まれたことで「勝利」と名付けられた。軍内部の強硬派として知られる。
 私は、ある中国人に聞いてみた。
 --中国国内は、日本に対して、なぜこれほど強硬な雰囲気なのですか。
 「それは昨年秋に始動した習近平体制が、日本に対して強気の姿勢を見せているからでしょう」
 --それは中国外交部も同様なのですか?
 「外交部には対日宥和論者が多いですが、外交部にはそれほど権限はないですよ。中国の外交方針を決めるのは、外交部ではなく共産党中央政治局ですから。しかも25人の中央政治局メンバーに、外交部出身の者は一人も入っていません。
  昨年暮れに日本で安倍政権が誕生した際、わが国は祝電を送りませんでした。外交部は、国交正常化以来40年間で祝電を送らなかった前例がないとか、それは他国に対しても同様だとか言ってきましたが、党中央が突っぱねたと聞いています」
 --中国外交部が最も融和的だというなら、逆に中国国内で日本に対して最も強硬なのはどのグループですか。
 「それは人民解放軍、特に呉勝利司令員率いる海軍です。いま海軍は日本やフィリピン、ベトナムに対抗するため、軍事費の大幅増強を要求していて、おそらくそれは、3月の全国人民代表大会(国会)で承認されるでしょう」
 --中国側の主張する「9・11事件」(日本の尖閣国有化)によって、海軍の日本への反発が強まったということでしょうか。
 「表向きはそうです。だが海軍の関係者曰く、『石原慎太郎と野田佳彦に感謝している』とのことです。
  1972年の中日国交正常化の際、周恩来総理は釣魚島(尖閣諸島)の領土問題を棚上げしました。その後、40年にわたって解放軍は一貫して、釣魚島奪還を主張してきましたが、時の党中央に封じ込められてきました。それが昨年4月に、石原都知事が釣魚島の東京都購入を宣言し、9月に野田首相が国有化したわけです。
  これによって初めて、これまでの『軍の主張』が、党のコンセンサスになりました。そして13億国民は、軍を全面的に支持しています。だから軍としては、石原と野田の二人に感謝したいということなのでしょう」
--中国軍は、なぜそれほど強硬に、尖閣諸島占領にこだわるのですか。
 「それは釣魚島が、中米間の海洋覇権争いのヘソに位置するからです。わが国の継続的な発展のためには、カムチャッカ半島から千島列島、日本列島、台湾、フィリピンへ至る第一島嶼線内の海洋権益を完全に確保せねばなりません。その最大のポイントが、台湾と釣魚島なのです。逆に、アメリカ軍によって釣魚島に軍事レーダーを建設されたら、わが国は一発でノックアウトされます。だから絶対に譲歩できないのです」
 --中国の行為は、昨年秋は海洋局の海監船による領海侵犯だったのが、年末になって海洋局の探査機が領空を侵犯するようになりました。今後も侵犯を続ける気なのですか。
 「何度も言いますが、石原と野田がパンドラの箱を開けたのです。もはや習近平新政権にとって、後退するという選択肢はないでしょう」
 --このまま中国がエスカレートし続けると、日本と軍事同盟を結んでいるアメリカが黙っていないのではないでしょうか。
 「果たしてそうでしょうか? 安倍首相はあれほど、すぐにも訪米してオバマ大統領と首脳会談を行うと吹聴しておきながら、ホワイトハウスに拒絶されてしまったではありませんか。その点、1月21日にクリントンに代わって国務長官に就任するジョン・ケリー上院外交委員長は、わが国と長年にわたって非常に友好な関係にあり、わが国からの要求を拒絶したことがないほどの親中派です」
  今年の日中関係は、ますます複雑で不穏な一年になりそうで、気が重い。
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