元少年は更生したのか…西鉄バス乗っ取り20年 見えぬ社会復帰後の姿、被害者の区切りまだ 2020.5.2

2020-05-02 | 少年 社会

元少年は更生したのか…西鉄バス乗っ取り20年 見えぬ社会復帰後の姿、被害者の区切りまだ
 2020/5/2(土) 18:55配信 西日本新聞

 2000年5月、当時17歳の加害男性が大型の包丁を持って西鉄高速バスを乗っ取り、乗客5人を殺傷した事件は3日で発生から20年を迎える。男性は医療少年院を退院後に社会復帰したとされるが、被害者や当時の関係者は、近況や心境を知るすべがない。男性は更生したのか、どんな思いで暮らしているのか-。それぞれの心の中で、事件はまだ終わっていない。

「この子も普通の高校生なんだ」
 「ジュディ・アンド・マリーのユキが好きですね」。はにかんだ表情を浮かべ、男性は人気バンドの女性ボーカルの名前を挙げた。男性の付添人団(弁護団)の一人だった弁護士(56)が鑑別所で接見した際、「どういう女の子がタイプ?」と尋ねた時のことだ。
  細身で眼鏡を掛けた男性に、付添人団の弁護士がほぼ毎日接見。心の奥底を探るため、たわいない会話を繰り返した。男性はぽつりと本音を漏らすようになった。「高校に入ってから勉強が厳しくなった」「他校の生徒は威張っている」
  司法試験で不合格が続いた弁護士自身の打ち明け話に興味を持ったのか、「先生はなんで弁護士になったの?」と聞いてくる場面もあった。
  男性にはプライドが高い一面も見られたが、「この子も普通の高校生なんだ」と実感したという。更生の余地があり医療的ケアが必要だと感じた付添人団は、刑事処分相当と判断される「検察逆送致」ではなく、医療少年院に送致する「保護処分」の審判が下るよう尽力した。 事件から約5カ月後、佐賀家裁は保護処分の決定を言い渡す。付添人団の団長を務め、多くの少年事件を手掛けた広島県の弁護士(79)は「医療による更生の機会が与えられたのは良かった」と振り返る。「刑事罰が科され、医療少年院で更生プログラムを受けられなければ、出所後に再び事件を起こしたかもしれない」と思ったからだ。 医療少年院での面会を希望したが、断られた。その後は男性に会えないまま。「今どこで何をしているのか。本当に更生してくれたのか…」。現状を知る手だてはない。

「少年というだけで刑事罰を受けなくて済むのか」
 「人一人殺しているのに、少年というだけで刑事罰を受けないで済むのか」。当時6歳の長女が事件に巻き込まれた佐賀市の男性会社員(61)は、取材に心情を語った。男性への憤りと、長女を1人でバスに乗せたことへの後悔-。複雑な思いを抱え、20年を歩んできた。
  福岡市に住む祖父母に会うために、長女はバスに乗った。首に包丁を突き付けられ、人質として15時間半も死と隣り合わせの恐怖を経験した。
  事件後は狭い場所が苦手になり、眼鏡を掛けている人を怖がるようにもなった。妻も、しばらく包丁が握れなくなった。家族の当たり前の日常が壊された。
  その後、長女は友達や教師らに恵まれ、大学を卒業し、現在は会社員として元気に働いている。
  事件は少年法改正の議論を加速させるきっかけとなり、刑事罰対象年齢の引き下げにつながった。
  これまで男性から謝罪などの連絡は一切ない。男性が今、何をしているのか、更生したのか、知りたいと願う。
  「彼なりに事件を受け止めて社会で自立して生活できていると知った時、私の節目を迎えることができるだろう」(野村有希)

◆西鉄バス乗っ取り事件
 2000年5月3日、刃物を持った佐賀市の無職男性=当時(17)=が、乗客乗員22人乗りの佐賀発福岡行き西鉄高速バスを乗っ取った。バスは広島県の山陽自動車道小谷サービスエリアに停車。4日未明、警官隊が突入し、男性を現行犯逮捕した。刺された乗客3人のうち1人が死亡し、2人が重傷。ほかに2人が逃げる際にけがをした。男性は強盗殺人容疑などで再逮捕され、同年9月、佐賀家裁は「解離性障害の治療が終わるまでは医療的な矯正施設への収容が相当」と医療少年院送致を決定。06年春、同院を本退院した。
 最終更新:5/2(土) 20:07  西日本新聞

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です


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