精神鑑定=専門家でないのは裁判官も同じ 気負う必要はない、か? 刑事裁判は誰のためにあるのか

2009-11-12 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

JR東京駅突き落とし:裁判員「精神鑑定は難解」--東京地裁公判
 JR東京駅のホームから60代女性を突き落とし、電車に接触させ負傷させたとして、殺人未遂罪などに問われた無職、太田周作被告(25)に対する裁判員裁判の判決で、東京地裁(井口修裁判長)は9日、懲役9年(求刑・懲役12年)を言い渡した。裁判員裁判で初めて精神鑑定医の尋問が行われたが、裁判員は判決後の会見で「専門用語が分かりづらかった」と感想を述べた。
 太田被告は捜査段階の精神鑑定で、コミュニケーションなどが苦手な「広汎性発達障害」と診断され、弁護側は「責任能力が低下していた」と刑を軽くするよう求めた。判決は「医師の説明や法廷での受け答えから知能は正常の範囲内。責任能力が低かったとは考えられない」と退けた。
 会見した裁判員によると、裁判長は「専門家でないのは裁判官も同じ。気負う必要はない」とアドバイスしたという。20代の女性会社員は「医師の説明は分かりやすく、自分なりに理解できた」と話した。一方で、60代の男性会社員(補充裁判員)は「初めて耳にする病名が出てきて難しく、分かる範囲ではなかった」と述べた。
 量刑について判決は「死刑になるため見ず知らずの第三者を無差別に狙っており身勝手で悪質だが、何十社も就職試験を不合格になり自暴自棄になった経緯は理解できる面がある」と述べた。【安高晋】毎日新聞 2009年11月10日 東京朝刊
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JR東京駅突き落とし:裁判員裁判で初、精神鑑定医尋問
 JR東京駅のホームで60代の女性を線路に突き落としたとして、殺人未遂罪などに問われた大阪府富田林市、無職、太田周作被告(25)の東京地裁(井口修裁判長)の公判で5日、捜査段階で精神鑑定した医師の証人尋問があった。裁判員裁判初の精神鑑定医に対する尋問。
 検察側は「善悪の判断能力が著しく減退していたとは言えない」という鑑定書の結論を大型画面に表示後、尋問した。鑑定医が「被告は自閉症」と述べると、検察側は「障害に当たるのはどの部分ですか。簡単に説明してください」と求めた。
 検察側の尋問に対し、鑑定医が「現在はアスペルガー症候群」との見解を示すと、裁判員6人は一斉にみけんにしわを寄せ厳しい表情に。女性裁判員は「鑑定書(自閉症)と違うのはなぜか」と質問し、鑑定医は「(鑑定書では)幼児期に診断された症状名を使うのが慣例」と答えた。【安高晋】
毎日新聞 2009年11月6日 東京朝刊
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〈来栖の独白〉
>「専門家でないのは裁判官も同じ。気負う必要はない」とアドバイスしたという。
 安易に審理してはならない。主客転倒ではないか。裁判員のための裁判ではない。
裁判員裁判の被告に賠償命令 刑事裁判は誰のためにあるのか 司法は何処へいこうとしているのか
 刑事裁判は「被害者自身による報復や、被害者個人の損害回復のための制度ではなく、犯罪を抑止することと同時に犯罪を犯した人の改善更生を実現することを目的としている」。また、「被告人席に立たされた市民に対し、冤罪の危険を3度にわたってチェックするためである」が、被害者・裁判員参加制度導入以来、この原点が忘れられている。
刑事裁判は誰のためにあるのか=裁判員の為ではなく被告人対し冤罪を3度に亘ってチェックする為だ
 刑事裁判は誰のため
 12日付の朝刊で、裁判員制度に関する司法研修所の報告書について報じられていた。控訴審については、裁判員が判断した1審判決を尊重し、破棄するのは例外的なケースに限るとある。
 裁判員裁判は1審のみであり、控訴審では従来通り職業裁判官が審理する。この控訴審のあり方については従来、議論があった。控訴審で職業裁判官のみにより1審判決が安易に覆されるとなれば、市民の声は反映されにくくなる。市民の声を裁判に反映させることを目指す裁判員制度の趣旨からすれば、1審の裁判員による判断は尊重されなければならない、という意見があった。今回の報告書はこの意見を採りいれたものである。
 ここで考える必要があるのは「刑事裁判は誰のためにあるのか」である。裁判員になる市民のためではない。被告人席に立たされた市民に対し、冤罪の危険を3度にわたってチェックするためである。「疑わしきは罰せず」という言葉も、冤罪を防ぐという究極の目的があるからである。だとすれば、有罪・無罪にかかわらず裁判員の意見を尊重する、という今回の方向性が正しいものとは思えない。市民が無罪としたものを覆すことは許されないとしても、事実認定や量刑について問題がある場合にまで「市民の声」ということで認めてしまうのであれば、控訴審は無きに等しいものになる。しかも、被告人には裁判員裁判を拒否する権利はないのである。
 今回の運用について、検察官控訴に対してのみ適用するのなら理解できる(そうした立法例もあると聞く)。しかし結論にかかわらず一律運用されるとすれば、裁判員裁判制度は刑事被告人の権利などを定めた憲法に違反すると思う。今更やめられないとの声はあろうが、後で後悔するのは被告人席に立つ国民である。改めることを躊躇うべきではない。2008/11/16中日新聞朝刊
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