生成AIは規制すべきなのか ChatGPTに聞いてみた 高橋洋一
2023/7/23 12:00 産経新聞
生成人工知能(AI)について開発競争が進む一方、欧州連合(EU)や中国では規制の動きも出ている。
生成AIとは、学習データから文章、画像、音声などの一見新しいコンテンツを生成することができる、一連のアルゴリズムだ。Chat(チャット)GPTが典型であるが、誰でも無料で利用できるので、試した人も多いだろう。
実は、筆者は自分のYouTube「高橋洋一チャンネル」(登録者数95・5万人)の会員向けサービスでは、「高橋洋一対ChatGPT」をやっている。会員からの質問に対し、ChatGPTに答えてもらって、筆者がその上の回答をできるかどうかという趣向だ。ほとんどのケースでChatGPTに勝っていると自負している。
生成AIで、楽曲や画像、動画、プログラムのコード、文章などクリエイティブな成果物を生成できるとされているが、筆者の身の回りではまだ驚くほどのものはない。ネット上にある情報をまとめているようで、正しくないものも拾っているとみられる。
もっとも、分野を限定すれば使い道がある。例えば、会員以外の膨大な視聴者からの意見をまとめるには使える。いろいろな意見が来るのだが、それらを読みやすいように整えるのは人で行うのは膨大な時間がかかるが、生成AIならすぐできる。
ネットをみると、AIによって復活したジョン・レノン(ビートルズ)の新曲もあるが、AIがアーティストの偽の新曲を制作するのに使われたこともある。ChatGPTによって書かれた本があるほか、弁護士がAIを使って法的文書を作成し、存在しない判例を引用してしまったこともある。
こうした実例から、生成AIについて規制の動きもある。中国は、8月15日から国家の安全や社会主義の価値観を損ねる内容の生成を禁止した。EUでは、AIで作られたことを明示し、著作権で保護されたデータを利用した場合は公表するという透明性の義務を課す法案を年内に作成しようとしている。
実は、日本ではEUや米国と比較して、AIが著作物を使用することへの規制が緩い。日本は2018年に著作権法を改正し、AIが画像や文章を権利者に連絡することなく自由に学習し営利・非営利を問わず利用できる。この規定をどうするのかまだわからない。
ちなみに、ChatGPTに「生成AIを規制すべきですか」と聞いたところ、規制が必要との意見と、反対の意見をあげつつ、結論としては「規制に関しては、バランスの取れたアプローチが求められます。倫理的な問題や安全性の懸念を軽減しながら、イノベーションや経済成長を促進するための枠組みを構築する必要があります。国や国際的なレベルでのディスカッションや協力が重要となります」と答えた。
これは、ネット上に散見する意見をまとめた無難なものだ。筆者としては最近の各国事情での事実や日本の現状の事実を併せて答えてもらいたかった。
(元内閣参事官・嘉悦大教授)
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です