中国・韓国の宣伝紙に成り下がった朝日新聞 国連事務総長の“内政干渉発言”には見て見ぬふり 森 清勇

2013-09-24 | メディア/ジャーナリズム/インターネット

中国・韓国の宣伝紙に成り下がった朝日新聞 国連事務総長の“内政干渉発言”には見て見ぬふり
JBpress2013.09.17(火) 森 清勇
 防衛省には朝日新聞記者も詰めている。その割には国家存続の基本である安全保障(憲法改正・集団的自衛権行使容認など)や自衛隊に関する報道が少ない。
 しかし、国家の安全を毀損し政治を不安定化させ、日本と日本人を世界の笑いものにするような報道には注力する。そのような事例がここ1か月間でいくつかあった。
 麻生太郎副総理は安倍晋三政権のナンバー2でありながら、政権が目指す改憲が“熱狂の中で行われてはならない”ことを強調する意味で、ワイマール体制の崩壊をナチス台頭との関係で語った。橋下徹日本維新の会共同代表がコメントしたように、並みの国語力があればブラックジョークであり、内容は容易に理解できる。
 むしろ潘基文国連事務総長の発言こそ、日中韓について問われながら日本のみを糾弾する、立場をわきまえない言語道断で、後に釈明したように中韓も同時に批判しているとはとても思えない。
 政府は大局的立場から「釈明」を了としたが、国益や国家の尊厳に関わる視点からマスコミは大いに問題視すべきことであった。
 しかし、朝日新聞(以下、朝日とも略記、他紙も同様)は麻生氏の講演主旨を捻じ曲げ、「ナチス政権を肯定」しているかのような記事に仕立てて政権にダメージを与えようとしたが、潘氏発言ではむしろ肯定するような報道をした。
 そのほか、靖国参拝報道や新しい法制局長官の指名なども含め、全国紙の報道姿勢を検証する絶好の機会となった。
*朝日新聞の世論操作は以前から
 私的なことであるが、連れ合いは他人が読んでいる新聞をこっそりと覗き込む習性がある。相手と目が合うと一瞬気まずい思いをするが、「熱心にお読みですね」と言うと容易に免じてくれるそうである。
 また、漢字に関心があり、「1つ分からない漢字があったのですが」と話をつなぐと、親切に話に乗ってくれるともいう。その成果を持ち帰っては漢字を読めない人が多いと愚痴り、便利なコンピューターのお陰で漢字判読率が低くなり、昔の書籍はどんどん読めなくなるだろうと一人心配している。
 そのうえで、今日の新聞に「○○社倒産」「△△大臣が失言 罷免?」 などと書いてあったと話を続け、「□□内閣も長くないのかも」と結論づける。
 当方はスポーツ紙かタブロイド判の芸能紙だと思い込み、「“売らんかな”の一心で面白おかしく書いているから、一寸したことを大風呂敷に広げているんだよ。スポーツ紙などは話半分で、話題提供くらいの気持ちで受け止めた方がいい」と答えるしかない。ところが「いや、朝日新聞に書いてあった」というので、吃驚したことがしばしばある。
 『朝日新聞の戦争責任』(安田将三・石橋孝太郎共著)は1995年に出版された。その副題は「東スポもびっくり!の戦争記事を徹底検証」である。
 該書の「はじめに」は、1年前に『読んでびっくり 朝日新聞の太平洋戦争記事』として刊行され増刷を重ねていたが、朝日の抗議で絶版となった。
 しかし、「朝日がいかに虚報と偏向報道に明け暮れ国民を戦争に導いたかを検証し二度と同じ過ちを繰り返さないため、また戦時下の報道姿勢が現代にも通じると考えた」(大意)ため、再編集して世に出したと述べている。
 戦時中からスポーツ紙もびっくりするような記事を書いてきた朝日で、今に始まったことではないようだ。ちなみに『正論』最新号(2013年9月号)は朝日新聞糾弾特集でもないが、巻頭の「折節の記」ではロッキード事件にまつわる吉永祐介検事総長の評伝で嘘を書いたことをはじめ、「イージス艦衝突事故」では総力を挙げて自衛隊を叩いたなどの糾弾記事が満載されている。
*朝日が歪曲した麻生発言
 そうした中で出てきたのが麻生氏の「ナチス」発言報道であった。発言は国家基本問題研究所(桜井よしこ理事長)が主催した「日本再建への道」と題した7月29日の月例研究会で飛び出した。
 しかし、研究会の概要を報道したのは翌30日の産経だけ、しかも見出しは「靖国参拝は静かに」「麻生氏、国基研で見解」で、300余字の記事でしかなかった。
 31日夕刊まではどの新聞も報道していない。その間に何らかの工作があったのか、8月1日朝刊で、朝日と毎日が在米ユダヤ人人権団体の抗議声明や野党の反発を掲げて攻撃の火ぶたを切る。
 朝日は「天声人語」で「気づいたら、ワイマール憲法がナチス憲法に変っていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうか」と述べたと書き、他面で「ナチス政権を肯定したとも受け取られかねない」とトーンアップする。
 毎日は「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変っていた。誰も気がつかなかった。あの手口に学んだらどうかね」と述べたと書き、「ナチス政権の手法を肯定したとも取れる発言で、波紋を呼ぶ可能性がある」と匂わせる。朝日・毎日の書きぶりは、コピーではないかと疑うほど類似している。
 真意が捻じ曲げられたと感じた麻生氏は、早速発言の撤回を行う。講演内容に違和感を持たなかった両紙以外は、発言の一部撤回を受けて動き出し、1日夕刊から報道し始める。こうして発言を問題化したい朝日(と毎日)のスクープとなったのである。
 しかし、読売は1日夕刊でも、「憲法改正にナチス引き合い」「麻生副総理、発言を撤回」と2行見出し、2段200字の淡々としたもので、何ら問題になるようなことはないと言わんばかりの報道である。その後も講演要旨と撤回コメントを記事にし、社説で重要閣僚としての発言の軽さを戒めているだけである。
 産経も総じて読売と類似の報道である。ただ3日付「産経抄」は「前後の発言を詳しく点検し、当日会場にいた記者や傍聴者の話を聞くと、だいぶ様子が違う」と、朝日の大騒ぎに早くも疑問を呈する。
 麻生氏らしい強烈な比喩が含まれていたが、講演自体は憲法改正に後ろ向きの印象さえ与えるような発言で、文脈的にも「ナチスに習え」とは取れない。
 日本維新の会共同代表の橋下氏が「行き過ぎたブラックジョーク」ではあったが、「ナチスドイツを正当化した発言でないことは国語力があればすぐにわかる」(「読売新聞」「産経新聞」8月2日付)とコメントした通りである。
 主催者兼司会者でもあった桜井氏は「捻じ曲げられた麻生発言」の掲題で、「朝日の報道は麻生発言の意味を物の見事に反転させたと言わざるを得ない」(「産経新聞」8月5日付コラム「美しき勁き国へ」)と語り、朝日が事柄を歪曲していく手口についての感想を述べている。
 ナチスという言葉に色めき立った朝日は、「麻生氏だけでなく日本を国際社会の笑いものにし」(同前)て、あわよくば改憲に傾きつつある輿論にストップをかけようとしたのであろうか。
*朝日報道の異常な突出
 朝日の報道は目を見張るほどに群を抜いていた。8月3日までに「天声人語」と「社説」に取り上げたのをはじめ、読者が味方と言わんばかりに「声」欄にまで取り上げている。
 しかも、発言が誤解されかねないから一部撤回のコメントを出したにもかかわらず、今度は「発言と釈明 矛盾」として、講演要旨とコメントを再掲し、検証する執拗さである。
 一応の落ち着きを見せる3日までの報道状況は、朝日が12件(1日5件、2日5件、3日2件)、字数にして約1万7000字である。1面は大体1万500字(下段1/3が広告の場合は約7000字)であるから、大小の見出しや写真を勘定に入れると、のべ2~3面ほどを投入したことになる。
 その後も4日、6日と「声」欄で取り上げていく。毎日新聞を除く他紙の報道と比較し、5~11倍という異常さである。
 毎日も「社説」や「余録」で取り上げ、6件(1日1件、2日4件、3日1件)、約6000字(広告付きの1面弱)である。
 その後は論評風に5日の「風知草」で「日本の国際的な信用が血まみれになっている」とか、自己弁護的に「マスコミの歪曲、誇張を疑う向きもあるが、録音に基づく詳報が併載されており、捻じ曲げた跡はない」と、マッチポンプの動きをしながら争点化に失敗した言い訳をしている。
 驚くのはそれだけではない。8月30日の「特集ワイド」では「続報真相」として「『舌禍』の波紋やまず」の掲題で、オリンピック招致や尖閣問題、さらに国際金融などへの悪影響にまで言及する。未練がましいとはこうしたことであろう。
 東京新聞(中日新聞社発刊)は3件と少ないが、「撤回で済まない」「米国反発」など件数の割には比較的多い約3500字を使い、朝日・毎日に呼応するような振る舞いをしている。
 「一時の熱狂で改憲してはならない」と、講演内容を冷静に聞き取った読売は先述の報道を含め3件約3000字、日経は2件約1500字、産経は争点化前の報道を含め4件約2900字である。
 産経は講演内容をいち早く報道しただけあって、歪曲・捏造された報道で第2の従軍慰安婦問題に発展させてはならないという意識を強く打ち出す。
 それが先に述べた「産経抄」の「久々にぎょっとした」で始まる「朝日新聞など一部メディアが繰り広げている『麻生太郎副総理ナチス発言』祭り」の批判であり、また桜井氏が前出コラムで約2100字を使って報道機関としての朝日の姿勢を糾弾し、読売が何度か問いかけている従軍慰安婦報道などについての朝日の回答責任の追及である。
*争点化記事の報道姿勢
 国際情勢、中でも極東アジア情勢を考えると、自衛隊の異常に制約された行動と集団的自衛権の行使不可によって、日本の国益が著しく毀損している。中韓の跋扈・横暴もそうしたところに因があろう。
 このような状況を打開する必要性を認識する安倍政権は、日本の安全保障環境の改善に向かって着々と布石を打ちつつある。
 集団的自衛権行使に前向きな小松一郎前駐仏大使を新しい法制局長官に任命したのはその表れである。
 この報道でも読売が「日本の平和を確保するには、集団的自衛権の行使を可能にし、日米同盟や国際連携を強化する必要がある。(中略)集団的自衛権は、国際法上、どの国にも認められている。この権利が行使できないと、周辺国以上の軍備を持たなければ、自国の安全を確保できず、かえって軍備競争を招きかねない」(8月9日付社説)と肯定する。
 朝日は、「揺らぐ『憲法の番人』」と報じて、異例の人事に注文を付け、「声」欄では「新法制局長官 平和国家危うく」などの危惧を掲載する。また、元法制局長官に「集団的自衛権、認める余地ない」などと語らせたりしている。前轍踏襲の感情論で、日本を取り巻く安全保障環境の変化と具体的な対応などを勘案した論議の提案ではない。
 「稲田行革相 靖国参拝へ」「終戦記念日 官邸から了承」(8月3日付朝日夕刊1面)報道の子細については、「週刊新潮」(8月15・22日号)が詳しい。
 当人も所属議員グループもその時点では何らの決定もしていないし、記事が書かれていた当日は官邸にすら行っていないにもかかわらず、掲題が1面に大きな字で載り、記事の中で「現職閣僚が参拝すれば、中韓がさらに批判を強める可能性がある」とも書く。従軍慰安婦同様の朝日一流の仕かけが見えみえである。
 潘氏が韓国外交省で行った記者会見は、中立性を疑わせ、かつ日本への内政干渉とも思える発言であった。読売は3件約2000字を費やして、問答の概要と社説欄で、「耳を疑うような国連事務総長の発言」として糾弾する。
 しかも、事務総長としての会見は国連公用語の英語やフランス語などで行われるのが通例であるにもかかわらず、韓国での会見の大半は韓国語であったという。明らかに、国連総長という立場を逸した韓国代表の姿勢である。
 そうであるからこそ、「日中韓の対立」について聞かれたにもかかわらず、日本批判や日本への注文のみに終わって、中韓に言及しなかったと批判する。
 また、1965年の日韓基本条約で請求権問題は解決済みであるにもかかわらず、元徴用工への賠償や元慰安婦問題を蒸し返して止まないことに関して「国際機関に籍を置くなら、潘氏は、韓国の常識は世界の非常識である」と韓国に伝えるべきだと指摘する。
 産経も3件約3000字を費やして、総長の一連の発言は国連憲章100条違反ではないかと提起する。
 そのうえで、米国紙誌が「核や難民問題に関心がない」「世界の大学で名誉学位を収集する癖がある」「国連の主要ポストに韓国人ばかり起用している」「総長主催の『国連の日』配布の英文パンフに日本海を東海としか書かなかった」などと批判していることを紹介し、国連事務総長としていかにふさわしくない人物であるかを指摘する。
 ところが、朝日は4件約1100字で、「歴史認識で対立 潘氏が遺憾表明」「潘氏発言で菅氏『疑問感じる』」「潘氏発言 真意確認へ」と、論評抜きで動きを伝えるのみである。しかも最後の「潘氏発言で中国『積極的に評価』」という記事は、中国の言い分に肩入れするものでしかない。
 毎日も1件290字で「国連事務総長 日本に異例の注文」と報じるのみである。日本を貶める潘氏の問題発言であるにもかかわらず、朝日と毎日は無関心どころか、あたかも日本が悪者ででもあるかのような報道である。
*日本を貶める新聞の衰退
 朝日は日本、いや世界最大の発行部数であったこともあり、マスコミ界の寵児ともてはやされていたので国民に与える影響は大きかった。しかし、筆者は中韓の宣伝紙で、スポーツ紙並みにしか見ていなかったので、近年の購読者の減少に溜飲を下げている。
 かつて1000万部を超えていた朝日も、1998年1月の朝刊購読者数は朝日849万7831部で、1年前から約13万部減となっている。同時期の読売は1025万3818部で約3.5万部増、産経200万8641部で約5.4万部増など、朝日以外の全国紙は産経をトップに増加している。
 「世界新聞・ニュース発行者協会」(VAN-IFRA)が2013年4月17日発表した“World Press Trends 2011”による「2011年世界の新聞発行部数トップ10」では、朝日750万部である。12~13年間で約100万部、最大時からは250万部以上の減少である。
 一流紙と言われるワシントン・ポスト(米)やフィナンシャル・タイムズ(英)が40万部台でしかないところから見ても、質は量では補えないと言えよう。
 今では多くの誌紙が朝日の罪状を問いつつある。『朝日新聞の戦争責任』の著者が勇気をもって該書の復刻を急ぎ、世に問うた通りである。
 本年5月15日付読売は日本維新の会共同代表の慰安婦発言に関連して、「1992年1月に朝日新聞が『日本軍が慰安所の設置や、従軍慰安婦の募集を監督、統制していた』と報じたことがきっかけで、政治問題化した」と名指しで批判した。
 また「『主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した』と事実関係を誤って報じた部分があり、韓国の反発をあおった」とも書いた。
 さらに、米国で従軍慰安婦の少女像が設置された後の8月1日付社説では「憂うべき米国での『反日』拡大」「強制連行巡る誤解を正したい」の見出しで、再び「従軍慰安婦問題が日韓間の外交問題に浮上したのは、92年のことだ。朝日新聞が・・・。記事には、戦時勤労動員の『女子挺身隊』があたかも慰安婦の強制連行であったかのような表現もあり、・・・」と述べ、重ねて朝日に回答を促している。
 国家の基本法である憲法問題や、日本の安全と存続に直結する集団的自衛権行使問題、さらには国家の名誉と国民の尊厳に関わる従軍慰安婦問題などについては誤報や捏造は到底許せるものではない。「悪貨が良貨を駆逐する」諺に習えば、「良紙が悪紙を駆逐する」のは必然であろう。
*おわりに
 「もう、ウソはつかない」と朝日の8月28日付1面に、白抜きで一際目立つ見出しがあった。麻生発言報道や従軍慰安婦問題で過ちに気づき、朝日が反省の弁でも書いているのかと目をやると、東電のことであった。
 福島原発事故にまつわる東電の失態とその隠蔽がウソにまみれていた点は看過できない。しかし、戦争報道責任や従軍慰安婦問題は、日本と日本人が国際社会を生きていくうえで、歴史認識とも絡み即刻解決しなければならない問題である。
 国際社会、中でも中韓はこの問題を楯に、日本の孤立化を図り、日本を窮地に追い込もうと画策している。日本ほど国際社会の安定と平和を望んでいる国はない。しかし、孤立しては生きていけない。
 世の木鐸とも、第4の権力とも言われるマスコミは、正しい情報や判断材料となる資料を国民に提供する義務と責任がある。
 朝日の購読は高学歴者、高収入世帯が多いと言われる。それだけに、日本の社会動向をも左右しかねない朝日には捏造や欺瞞報道があってはならないし、万一あるならば正す姿勢が求められる。
 「過ちを改めざる、是を過ちと謂う」のである。
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麻生氏“ナチス発言”、日本各紙の批判に温度差
NewSphere  Sun. August 4, 2013
 麻生副総理兼財務相が29日、国家基本問題研究所主催のイベントで、「ドイツのワイマール憲法はだれも気づかないうちにナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうか」などと語った。
 麻生氏は1日、「真意と異なり、誤解を招いたことは遺憾だ」と述べ、発言を撤回した。改憲については落ち着いて議論すべきであり、ナチスとワイマール憲法は否定的な意味で例示したと説明した。
 この講演会については、30日時点で主要各紙が報じていたが、読売新聞と共同通信が“ナチス発言”を取り上げたものの、朝日・産経両紙は「ナチス」部分について触れていなかった。
 しかし、その後は海外メディアの批判的な報道の影響もあってか、各紙は改めてこの問題を追及。2,3日には相次いで社説で取り上げた。
【言葉の選択と、間違った歴史事実認識への批判】
  各紙が共通して批判するのは、言葉の選択と歴史認識についての2点だ。
 まず各紙は、ナチスの手口に「学んだらどうか」という、ナチスを肯定的にとらえていると思われかねない言葉の選択について批判している。朝日新聞は、欧米ではナチスを肯定するような発言は、閣僚の進退問題につながると指摘。麻生氏の発言が、先の戦争に対する日本人の姿勢について、世界に大きな誤解を与えた点を糾弾している。
 次に、そもそも歴史事実を間違って認識している点についても各紙は指摘している。麻生氏のいう「ナチス憲法」なるものはない。ヒトラーは首相就任後、国会同意なしに法律をつくる権限を政府に認める「全権委任法」を制定したことで、ワイマール憲法を実質的に停止した。加えてその過程では、共産党の弾圧などを行なっており、麻生氏が言う「誰も気づかないで」変わったという表現も不適切だ。
【朝日・読売は安倍政権への影響に言及】
  朝日新聞は、麻生氏が明確に謝罪せず、発言の核心部分の説明は避けたままであることを問題視。麻生氏だけでなく、自民党が、歴史や立憲主義への正しい認識なく改憲に向けて動いていることを危惧している。最終的には、「安倍首相の認識が問われる問題」だとして、政府の対応を求める姿勢だ。
  また読売新聞も、麻生氏の失言は、参院選の大勝で「政権のタガが緩んできた」ためでは、と批判的だ。
【産経は改憲論議への影響を危惧】
  一方産経新聞は、この問題で、「憲法改正論議そのものが水をさされる事態を避けなければならない」と主張する。憲法改正は「国民の多数が望んでいる」として、正々堂々、議論を進めればよいという姿勢を示している。
 総じて、各紙の現政権と憲法に対する姿勢が明らかになった社説だったといえる。
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麻生財務相発言 ナチスにどう改憲を学ぶのか(8月3日付・読売社説)
 これが首相経験者の言うことなのか。現在の重要閣僚としての資質も疑わざるを得ない。
 麻生副総理・財務相が憲法改正を巡って、ドイツのナチス政権を引き合いに出し、その手法を学べという趣旨の発言をした問題である。
 ナチスを肯定的に語ったものと受け止められ、国内だけでなく、米国のユダヤ人人権団体などにも、反発が広がった。中国や韓国も、安倍政権の歴史認識の問題と重ねて批判している。
 麻生氏は、「真意と異なり、誤解を招いたことは遺憾」として撤回したものの、日本の国益も損ないかねない事態だ。
 今回の発言は7月29日、都内の講演会で、憲法改正は冷静な議論が必要という文脈で出てきた。
 ヒトラーがワイマール憲法の下で台頭したことに言及し、「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうかね」と述べた。
 しかし、ワイマール憲法は形骸化されただけで、「ナチス憲法」なるものは存在しない。
 ヒトラーは、合法的手段によって政権を掌握し、政府が国会審議を経ずに立法できる全権委任法などで独裁体制の基礎を築いた。ユダヤ人らを強制収容所に送り込み、大虐殺を引き起こした。
 麻生氏は、2日の記者会見で、「狂騒の中で、いつの間にか、ナチスが出てきた。悪あしき例で、我々は学ばないといけないと申し上げた」と釈明した。それが真意というなら、「手口に学べ」という表現は全く不適切だ。
 憲法改正に絡めて持ち出した意図も全く理解できない。憲法改正には国会の発議だけでなく、国民投票が必要であり、「いつの間にか」改正できるはずがない。
 民主党の海江田代表は、「憲法改正は侃々諤々かんかんがくがくの議論をすべき問題だ。こっそりやってしまえばいいなどという、民主主義を無視した発言だ」と批判している。
 麻生氏の発言が、憲法改正を掲げる安倍政権にとって、打撃となったのは間違いない。
 菅官房長官は、「閣僚は立場を十分承知し、慎重に誤解されないよう発言すべきだ」と述べた。
 言うまでもないことである。だが、麻生氏は、外相、首相時代にも「アルツハイマーの人でもわかる」、「医師は社会的常識が欠落している人が多い」といった失言や放言を繰り返している。
 参院選での大勝で政権のタガが緩んできたのではないか。麻生氏の発言には傲おごりも垣間見える。
(2013年8月3日01時49分  読売新聞)
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【主張】麻生氏失言 改憲論議への影響避けよ
産経新聞 2013.8.3 03:09
 麻生太郎副総理兼財務相が、憲法改正の運び方をめぐる発言で、ドイツのナチス政権を引き合いに出した。お粗末な失言であり、撤回したのは当然である。
 発言は日本のイメージや国益を損なった。麻生氏は重職にあることを自覚し猛省してほしい。
 失言の重大さに加えて指摘したいのは、憲法改正論議そのものが水をさされる事態を避けなければならないことだ。
 安倍晋三政権の「右傾化」と結びつけようとする批判などは論外だ。首相や自民党は、引き続き国民の理解を求め、憲法改正の重要性を主張していくべきだ。
 麻生氏は「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口を学んだらどうかね」と語った。撤回したコメントではナチスについて「極めて否定的に捉えている」と釈明した。
 発言の全文を読めば、麻生氏にナチスを正当化する意図がないことは明らかだ。しかし、「学んだらどうか」といった、ナチスの行為を肯定すると受け取られかねない表現を用いたのはあまりに稚拙だった。
 米国のユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は、麻生氏の発言を非難する声明を出した。ナチスを肯定的にみる風潮がいささかなりとも出てくることを許さない立場からだろう。ヒトラーやナチスによるユダヤ人虐殺という未曽有の国家犯罪に対し、極めて厳しい視線が今も注がれていることを忘れてはならない。
 もう一つの麻生発言の誤りは、ナチス政権がワイマール憲法を改正し、新たに憲法を制定したかのように理解していることだ。そのような史実はないことも指摘しておきたい。ナチスは1933年、暴力を背景に、ドイツ国会において全権委任法を成立させ、ワイマール憲法を死文化させて独裁につなげたのである。
 麻生発言を捉え、憲法改正は反民主主義的といった曲解もなされている。麻生氏は「憲法改正は落ち着いて議論することが重要」と発言全体の趣旨を語ったが、「いつの間にか」「誰も気づかないで」憲法が改正されるのが望ましいかのような表現は不適切だ。
 冷静さは大切だが、国民の多数が望んでいる憲法改正をめぐる議論は正々堂々と進めればよい。
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麻生太郎副総理の憲法改正めぐる発言 全文「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に・・・」 2013-08-01 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
 麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細 
朝日新聞デジタル 2013年8月1日2時18分
〈麻生太郎副総理が29日、東京都内でのシンポジウムでナチス政権を引き合いにした発言は次の通り。〉

 僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。
 そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。
 私どもは、周りに置かれている状況は、極めて厳しい状況になっていると認識していますから、それなりに予算で対応しておりますし、事実、若い人の意識は、今回の世論調査でも、20代、30代の方が、極めて前向き。一番足りないのは50代、60代。ここに一番多いけど。ここが一番問題なんです。私らから言ったら。なんとなくいい思いをした世代。バブルの時代でいい思いをした世代が、ところが、今の20代、30代は、バブルでいい思いなんて一つもしていないですから。記憶あるときから就職難。記憶のあるときから不況ですよ。
 この人たちの方が、よほどしゃべっていて現実的。50代、60代、一番頼りないと思う。しゃべっていて。おれたちの世代になると、戦前、戦後の不況を知っているから、結構しゃべる。しかし、そうじゃない。
 しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。
 そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。
 ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。
 靖国神社の話にしても、静かに参拝すべきなんですよ。騒ぎにするのがおかしいんだって。静かに、お国のために命を投げ出してくれた人に対して、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かに、きちっとお参りすればいい。
 何も、戦争に負けた日だけ行くことはない。いろんな日がある。大祭の日だってある。8月15日だけに限っていくから、また話が込み入る。日露戦争に勝った日でも行けって。といったおかげで、えらい物議をかもしたこともありますが。
 僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。
 昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。
 わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。
 *上記事の著作権は[朝日新聞デジタル]に帰属します 
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 「麻生発言」=朝日新聞はこのように事柄を歪曲し、日本を国際社会の笑い物にしていくのか 櫻井よしこ 2013-08-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
 【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】朝日が日本を国際社会の笑い物に…歪曲された麻生発言
 産経新聞2013.8.5 17:26
 なるほど、朝日新聞はこのようにして事柄を歪曲(わいきょく)していくのか。麻生太郎副総理発言を朝日新聞が報じる手口を眼前にしての、これが私自身の率直な感想である。
 8月1日と2日、朝日の紙面は麻生発言で「熱狂」した。日によって1面の「天声人語」、社会面、社説を動員し、まさに全社あげてといってよい形で発言を批判した。
 討論会の主催者兼司会者として現場に居合わせた私の実感からすれば、後述するように朝日の報道は麻生発言の意味を物の見事に反転させたと言わざるを得ない。
 7月29日、私が理事長を務める国家基本問題研究所(国基研)は「日本再建への道」と題した月例研究会を主催した。衆議院、都議会、参議院の三大選挙で圧勝、完勝した安倍自民党は、如何(いか)にして日本周辺で急速に高まる危機を乗り越え、日本再建を成し得るかを問う討論会だった。
 日本再建は憲法改正なしにはあり得ない。従って主題は当然、憲法改正だった。
 月例研究会に麻生副総理の出席を得たことで改正に向けた活発な議論を期待したのは、大勝した自民党は党是である憲法改正を着実に進めるだろうと考えたからだ。
 が、蓋を開けてみれば氏と私及び国基研の間には少なからぬ考え方の開きがあると感じた。憲法改正を主張してきた私たちに、氏は「自分は左翼」と語り、セミナー開始前から微妙な牽制(けんせい)球を投げた。
 セミナーでも氏は「最近は左翼じゃないかと言われる」と述べ、改正論議の熱狂を戒めた。私はそれを、改正を急ぐべしという国基研と自分は同じではないという氏のメッセージだと、受けとめた。
 「憲法改正なんていう話は熱狂の中に決めてもらっては困ります。ワァワァ騒いでその中で決まったなんていう話は最も危ない」「しつこいようだが(憲法改正を)ウワァーとなった中で、狂騒の中で、狂乱の中で、騒々しい中で決めてほしくない」という具合に、氏は同趣旨の主張を5度、繰り返した。
 事実を見れば熱狂しているのは護憲派である。改憲派は自民党を筆頭に熱狂どころか、冷めている。むしろ長年冷めすぎてきたのが自民党だ。いまこそ、自民党は燃えなければならないのだ。
 にも拘(かか)わらず麻生氏は尚(なお)、熱狂を戒めた。その中でヒトラーとワイマール憲法に関し、「あの手口、学んだらどうかね」という不適切な表現を口にした。「ワイマール憲法がナチス憲法に変わった」と氏はいうが、その事実はない。有り体に言って一連の発言は、結局、「ワイマール体制の崩壊に至った過程からその失敗を学べ」という反語的意味だと私は受けとめた。
 憲法改正に後ろ向きの印象を与えた麻生発言だったが、朝日新聞はまったく別の意味を持つものとして報じた。
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 たとえば1日の「天声人語」子は、麻生発言を「素直に聞けば、粛々と民主主義を破壊したナチスのやり方を見習え、ということになってしまう」と書いた。前後の発言を合わせて全体を「素直に聞」けば、麻生氏が「粛々と民主主義を破壊」する手法に習おうとしているなどの解釈が如何(いか)にして可能なのか、不思議である。天声人語子の想像力の逞(たくま)しさに私は舌を巻く。
 朝日の記事の水準の高さには定評があったはずだ。現場にいた記者が麻生発言の真意を読みとれないはずはないと思っていた私は、朝日を買いかぶっていた。
 朝日は前後の発言を省き、全体の文意に目をつぶり、失言部分だけを取り出して、麻生氏だけでなく日本を国際社会の笑い物にしようとした。そこには公器の意識はないのであろう。朝日は新たな歴史問題を作り上げ、憲法改正の動きにも水を差し続けるだろう。そんな疑惑を抱くのは、同紙が他にも事実歪曲(わいきょく)報道の事例を指摘されているからだ。
 典型は「読売新聞」が今年5月14、15日付で朝日の誤報が慰安婦問題を政治問題化させたと報じた件だ。読売の朝日批判としては珍しいが、同件について朝日は説明していない。
 古い話だが、歴史問題にこだわるなら、昭和20年8月の朝日の報道も検証が必要だ。終戦5日前に日本の敗戦を示唆する政府声明が発表され、朝日新聞の編集局長らは当時こうした情報を掴(つか)んでいた。新聞の使命としていち早く、日本敗戦の可能性を国民に知らせなければならない。だが、朝日新聞は反対に8月14日、戦争遂行と戦意高揚を強調する社説を掲げた。これこそ、国民への犯罪的報道ではないか。朝日の歴史認識を問うべきこの事例は『朝日新聞の戦争責任』(安田将三、石橋孝太郎著、太田出版)に詳しく、一読を勧めたい。
 これらのことをもって反省なき朝日と言われても弁明は難しい。その朝日が再び麻生発言で歴史問題を作り出し、国益を害するのは、到底許されない。
 それはともかく、自民党はまたもや朝日、中国、韓国などの批判の前で立ちすくむのか。中国の脅威、韓国、北朝鮮の反日、米国の内向き志向という周辺情勢を見れば、現行憲法改正の急務は自明の理だ。それなのに「冷静な議論」を強調するのは、麻生氏を含む多くの自民党議員は憲法改正に消極的ということか。日本が直面する危機に目をつぶり、結党の志を横に措(お)き、憲法改正の歩みを緩めるのだろうか。であれば、護憲の道を歩む朝日の思う壺(つぼ)ではないか。自民党はそれでよいのか。私の関心は、専ら、この点にある。
 *上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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【この度し難き鉄面皮 朝日新聞の頬被り】西岡 力 『正論』8月号 総力特集「慰安婦」包囲網を突き破れ 2013-07-10 | 読書 
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