潮 匡人著 『「反米論」は百害あって一利なし』~日本を二流国へと転落させる反米リベラル勢力の妄言を糺す

2013-01-08 | 本/演劇…など

「反米論」は百害あって一利なし
PHP Biz Online 2012年12月05日 公開
潮 匡人(評論家、国家基本問題研究所客員研究員)
 《 『「反米論」は百害あって一利なし』より》
■「反米」が日本に益することはない
  いまや日本は国難の最中にある。平成24年(2012年)11月現在、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺には連日、「海監」や「漁政」など中国政府の公船が押し寄せ、わが国の領海に侵入を繰り返している。
  なぜ、こんなことになってしまったのか。結論から言えば、日米同盟が弱体化したからである。3年前、民主党に政権が交代し、自民党政権下で実施されていたインド洋上での給油活動が終了。さらに鳩山由紀夫総理(当時)が、普天間移設問題で「最低でも県外」と公言し、アメリカ大統領にも「トラスト・ミー」と大言壮語した。その結果は、読者ご案内のとおりである。日米同盟に深く刻まれた傷跡は、いまも消えていない。
  驚くべきは、その後の展開である。当時、鳩山総理のブレーンと目された知識人が、いまも大手を振ってメディアで活躍する。マスコミの寵児と化す。全国の大型書店では、アメリカ陰謀論を振りまく新刊が平積みされ、ベストセラーとなっている。
  そうした反米論者の責任もさることながら、今なお彼らを重用するNHK以下、マスコミの責任も重い。本文で述べるように、普天間基地へのオスプレイ配備を巡る報道をはじめ、連日連夜のごとく、国民の反米感情を煽っている。マスコミ世論には、低俗なアメリカ陰謀論が渦巻く。
  日米が離反することで、得をするのは誰か。深く傷ついた日米同盟の惨状を見ながら、ほくそ笑んでいるのは誰か。日本のマスコミ世論を席巻する反米論は、日本の国益を害する。反米を合唱しても、何一つ、日本に益することはない。
 (『「反米論」は百害あって一利なし』まえがきより抜粋)
■オスプレイは本当に危険なのか
  平成24年9月19日、日本政府は、防衛省と外務省の連名で「MV-22オスプレイの沖縄配備について」と題した報告書を公表し、こう「結論」を述べた。
  「我が国におけるMV-122オスプレイの運用について、その安全性は十分に確認されたものと考える」「我が国におけるMV-22オスプレイの飛行運用を開始させることとする」
  これを受け、翌々日の9月21日、アメリカ軍はオスプレイが一時駐機していた岩国基地(山口県)から試験飛行を実施した。拙著が発売される頃には、普天間基地での正式な連用が始まっているであろう。
  だが、政府報告書の“安全宣言”とは裏腹に、いまも国民の不安は大きい。関係自治体も「配備ありきで進んでいる」(沖縄県知事)、「怒りを感じる」(宜野湾市長)など反発を隠さない。オスプレイは本当に「安全」なのか。
  政府の報告書は、最近の墜落事故について「機体自体に問題があるわけではない」「人的要因によるところが大きい」「再発防止策は十分に図られる」などと結論した。
  さらに今後も「(危険な)転換モードの時間を可能な限り短くする」、あるいは、500フィート(約150メートル)以上の高度で飛行する、原発や人口密集地域上空の低空飛行訓練は避ける、「可能な限り海上を飛行する」などを日米で合意したことを挙げ、安全性を強調する。
  他方、9月21日の試験飛行では、オスプレイが下関市の市街地上空を飛行する姿が地上から視認された。テレビ各局がその光景を放送した。国民注視のもとでの初飛行なのだ。市街地は「可能な限り」避けるべきではなかったのか。たしかに、そうした疑問は残る。
  これまで日米両政府は、被害総額が200万ドル以上の死亡事故など、重大な「クラスA」事故のデータだけを「事故率」として公表し、「安全性の記録を有している」と説明してきた。
  だが以上の数字にはカラクリがある。案の定、7月20日付『朝日新聞』朝刊が一面トップで「オスプレイ事故58件」とスクープ報道した。御多分に漏れず、NHKも「比較的程度の軽い事故が起きる頻度は、海兵隊の航空機の平均を大幅に上回っている」と大きく報じた(7月26日)。実際、より被害が小さい「クラスB」の事故率は、海兵隊の平均を上回る。「クラスC」に至っては平均の2倍を超える。
  だが政府の報告書は、これらの指摘を「機体の安全性を示す指標としては不適切」と退け、改めて「低い数字」と断定した。たしかに、これでは「配備ありき」の印象を与えかねない。
■中国が恐れるオスプレイの性能
  では、やはり危険な輸送機なのか。必ずしも、そうとは言えない。現に、一部マスコミが煽るほどの危険性は実証されていない。ゆえに、他の機種と比べ、格別に危険な輸送機であるかのごとく喧伝する姿勢は公正さを欠くのではないか。
  もしオスプレイがダメだというなら、引き続き、CH-46Eが飛ぶことになってしまう。この輸送機は、自衛隊も退役させた古い機種であり、20年前に製造が終了している。いまも軍用として飛ばしているのは米海兵隊だけである。老朽化した機種を、これ以上、普天間で継続使用することは、それこそ安全性の観点からも疑問が残る。
  なのに、マスコミ報道の多くが、オスプレイの危険性だけを煽る。オスプレイが岩国に陸揚げされた7月23日放送の「NHKニュース7」は冒頭、上空から撮影したオスプレイの映像を流し、「反対や不安の声が上がるなか」云々と報道。ロンドン五輪などの話題を押しのけ、トップで扱い、「安全性への懸念が高まるなか陸揚げされました」と報じた。以下、多くの報道が「不安の声」や「安全性への懸念」を強調する。
  ならば同時に、オスプレイ配備の意義も語るべきであろう。オスプレイは「CH-46Eに比べ、速度2倍、搭載量3倍、行動半径4倍という優れた性能を有している」(防衛省)。
  端的に言えば、懸案の尖閣諸島を行動範囲に収められる。報告書を補足すれば、CH-46と違い、空中給油を受けられる。艦船に搭載して運用することもできる。
  ゆえに朝鮮半島、台湾海峡に加え、中国が聖域化を図る南シナ海へも抑止が効く。中国の対艦ミサイルの射程外からも運用できる。前述したアーミテージ報告が敷衍した、中国の「A2AD(接近阻止・領域拒否)」に対抗する、米軍の新戦略「統合エア・シー・バトル(JASB)」構想ないし「統合接近作戦構想(JOAC)」の柱を担う。
  もちろん日本の安全保障にも有効であり、邦人救出や「トモダチ作戦」のような運用にも大きな力を発揮できる。実際、先日も山火事の消防活動に出動した。だがそれを、一部のマスコミは「米軍ヘリ」が出動したとしか報じない。意地でも「オスプレイ」とは言いたくないのかもしれないが、オスプレイは「ヘリ」(回転翼機)ではない。あえて言えば、垂直離着陸できる固定翼機である。
  詳しくは、山田吉彦教授(東海大学)と私の対談書『尖閣激突』(扶桑社)に委ねるが、今後オスプレイの安定的な運用は、中国の海洋進出に対抗するうえで、決定的な意味を持つ。
  だが、マスコミ報道の多くが、こうした配備の意義や抑止効果に言及しない。中国を刺激したくない本音が覗く。政府もマスコミも、中国の反発を恐れず、正面から配備の意義を語るべきではないだろうか。
■日本国の主体性はどこに?
  問われるべきは、日本国としての主体性であろう。野田佳彦総理は、去る7月16日、フジテレビの番組で「配備自体は米国政府の方針だ。どうしろ、こうしろという話ではない」と語った。安保条約や交換公文を念頭に置いた発言であろうが、自国民に向けたメッセージとしては表現が乱暴に過ぎよう。結果、国民の反米感情は増した。
  政府への、政治そのものへの信頼が揺らいでいる以上、いくら政府が「安全性は十分に確認された」と宣言しても、国民の安心には繋がらない。
  そもそも、絶対に安全な航空機やヘリなど存在しない。特に、垂直離着陸時の危険性が高い。軍用機なら、なおさらである。
  もし3度、事故が起きれば、オスプレイの運用はおろか、日米同盟そのものが危機に瀕する。2004年に起きた沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故では、米軍のMP(憲兵)に阻まれ、沖縄県警や消防は現場検証すらできなかった。万一あれが再現すれば、「全基地閉鎖」(沖縄県知事)ともなりかねない。
  そうならないためにも、日本政府は最大限の努力をすべきだ。リスクを直視した危機管理に万全を期すべきであろう。本土への訓練移転も鋭意、進めるべきだ。そのうえで、日本政府の責任において安全性を説明してほしい。
  地元との交渉が円滑に進まない原因としては、従来、基地行政を担当してきた旧防衛施設庁が、不祥事により解体された経緯も大きい。今回のオスプレイ騒動は、日米同盟が抱える問題を浮き彫りにしたとも言えよう。
  オスプレイの危険性と、国民の反米感情を煽るだけでは、問題は解決しない。配備の意義と一定のリスクを踏まえた公正かつ冷静な議論を期待したい。
 潮 匡人(うしお・まさと)
 評論家、拓殖大学日本文化研究所客員教授
 昭和35年(1960年)、青森県生まれ。早稲田大学法学部卒。同大学院法学研究科博士課程前期課程修了。防衛庁・航空自衛隊勤務、元三等空佐。書籍編集者、シンクタンク研究員、聖学院大学専任講師、旧防衛庁広報誌編集長、帝京大学准教授等を経て現在に至る。拓殖大学日本文化研究所客員教授、国家基本問題研究所評議員、評論家。
 著書に『アメリカが日本を捨てる日』(講談社)『常識としての軍事学』(中公新書ラクレ)『自衛隊はどこまで強いのか(共著)』(講談社+α新書)『日本を惑わすリベラル教徒たち』(産経新聞出版)『司馬史観と太平洋戦争』『日本人として読んでおきたい保守の名著』(以上、PHP新書)などがある。
◇書籍紹介◇
 「反米論」は百害あって一利なし
 潮 匡人 著
 本体価格 1,400円   
 「TPP参加」「オスプレイ配備」「原発推進」はアメリカの陰謀なのか? 日本を二流国へと転落させる反米リベラル勢力の妄言を糺す。
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「無法」中国との戦い方 古森義久著 小学館101新書 2012年12月8日初版第一刷発行 

     

p3~
 はじめに 中国の「日本叩き」政策は「大成功」を収めつつある
 中国での反日デモは「水道の蛇口」と同じ
 2012年秋、中国の多数の都市で反日デモが荒れ狂った。日本が尖閣諸島を国有化したことへの中国の国民一般の怒りなのだという。
 しかし、共産党の一党独裁で結社の自由や集会の自由が厳しく抑圧される中国では、国民一般からの自由な自然発生のデモというのはありえない。政府当局が黙認、あるいは煽動しない限り、多数の人間が集まること自体が許されないからである。
 だから、中国での集会とかデモというのは、当局にとって水道の蛇口の操作に似ている。抗議の動きをどこまで許すかは、水道の蛇口から出す水の量を調節するのと同じなのだ。栓を開ければ開けるほど、水は勢いよく噴出してくる。もうこれで十分となれば、蛇口を閉めればよいのである。
p4~
 共産党支配が続く限り、反日暴動は繰り返される
 私自身が目撃した実例は1999年5月の北京での反米デモだ。このデモは米軍機を主力とする北大西洋条約機構(NATO)軍機が当時のユーゴスラビアの首都ベオグラードの中国大使館を爆撃し、内部にいた中国人3人が死亡、20人ほどが重軽傷を負った事件への中国側の抗議だった。米国側は当初から一貫して誤爆だと弁解していた。
 事件から数日もすると、北京の米国大使館前には連日、抗議のデモ隊が押しかけるようになった。当時、産経新聞中国総局長として現地に駐在していた私も連日、米国大使館前に出かけ、現状を眺めた。
 このデモは完全に当局に管理されていた。デモ行進をして、米国大使館構内に石まで投げ込む当事者たちはみな北京内外の大学の学生たちだったが、全員がバスで動員されていた。大学ごとに現場近くにバスで運ばれてきた男女学生たちは、バスを降りて、隊列を組み、大使館前へと行進していく。その間、道路から石を拾って、大使館にぶつけるのだが、大使館の前には中国人警官が並んで立っていて、普通サイズの石を投げることは黙認するが、そのサイズが一定以上に大きくなると、すぐ停止させるという手の込んだ「管理デモ」だった。なにからなにまで中国当局がシナリオを描いた抗議デモだったのだ。
p5~
 今回の反日デモも、当局のそうした管理があることは明白である。ただし中国の国民一般の間では日本や日本人がそもそも大嫌いという向きが多いから、当局にとって「反日」の動きは放置するだけでも、盛り上がる。当局の管理はむしろ、どこで止めるか、である。反日が暴走して、「反中国共産党」「反中国政府」になってはならないのだ。
p39~
 朝日新聞が喧伝する元外交官の「奇説」
 こうした膨張を続ける中国に対し、日本側では尖閣の実効支配を明確にする措置に反対する声も聞かれる。たとえば朝日新聞は、東京都の購入提案に反対し、なにもせず、もっぱら「中国との緊張を和らげる」ことを求める。2012年7月11日付の同紙では、孫崎享・元外務省国際情報局長の「尖閣は日本固有の領土ではない」という意見までを喧伝する。この孫崎氏の発言は日本の国益を守るために長年、活動した日本国外交官だった人物のそれとはとても思えないほど奇異だった。とにかく中国の主張を優先させ、ひたすら中国への歩み寄りを説くのである。
 孫崎氏は朝日新聞のインタビューで、日本の尖閣領有が100年ほどでは固有の領土とは呼べないとして、中国は14世紀に尖閣周辺まで軍事的影響を及ぼしていたから、「中国のものと主張」することも根拠がないわけではない、と述べた。中国の14世紀といえば、モンゴル帝国の元の統治時代だったが、モンゴルといまの中国の領有権が直結できる、というのだからメチャクチャな理屈である。
p40~
 孫崎氏はまた、中国が尖閣に軍事攻撃をかけても、米国が日本を支援して防衛にあたるると考えるのは甘い、とも断言する。米国政府が公式に日米安保条約の尖閣への適用を宣言しているのに、孫崎氏の言はそれがウソだと断じるのに等しいのだ。そして尖閣問題は「現状が日本に最も有利」と説く一方、「係争地」と認めて中国との協議にのぞむことを勧めるという矛盾を語る。なにしろ尖閣についての「日本の主張は国際的にも認められない」と簡単に自国の権利を切って捨てるのだから、なにをかいわんや、である。なにがそこまで中国に媚びさせるのか。
「中国を刺激するな」的なこの種の主張は、中国側の尖閣奪取への意欲を増長するだけである。この種の宥和は、尖閣が日本領であることを曖昧にするのが主眼だから、それだけ中国の主張に火をつける。そもそも緊張の緩和や融和を求めても、中国側の専横な領有権拡大を招くだけとなる現実は南シナ海の実例で証明済みなのである。
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尖閣危機と悪化する国際情勢の中で、日本が「脱平和ボケ」の覚悟を突きつけられている 2012-12-04 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
「外交・防衛は票にならない」と言うのなら、北朝鮮や中国があざ笑うだけである 2012-12-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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『アメリカに潰された政治家たち』孫崎亨著(小学館刊)2012年9月29日初版第1刷発行


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