台湾の蔡総統、「香港の一国二制度は失敗」中国を批判 2019/10/10

2019-10-10 | 国際/中国/アジア

台湾の蔡総統、「香港の一国二制度は失敗」中国を批判
米中衝突 中国・台湾    
  2019/10/10 13:45
【台北=伊原健作】台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は10日、双十節(建国記念日に相当)の式典で演説し、「香港は(中国が返還後も高度な自治を認めるとした)一国二制度が失敗し、秩序を失っている」と中国を批判した。台湾は、一国二制度の受け入れを拒否すると強調した。中国の圧力で外交関係を相次ぎ失っていることについては、米国や日本などと連携して対抗する方針を示した。
 蔡氏は演説で、民主派と警察の対立が激化し混乱する香港問題について触れたうえで、「中国は一国二制度の『台湾版』を掲げ、我々を不断に脅かしている」と警戒感をあらわにした。
 香港で適用されている「一国二制度」はもともと、中国が台湾を統一するために考えた制度。同制度が適用されながらも中国が香港への支配力を年々強めるのを見て、台湾でも警戒感が強まっている。蔡氏は、この制度を受け入れれば「(台湾の)生存空間は失われる。拒否は、政党などを超えた台湾の最大のコンセンサスだ」と強調した。
 台湾は9月、中国の圧力で南太平洋のソロモン諸島、キリバスとの外交関係を相次ぎ失い、台湾を外交承認するのは15カ国まで減った。蔡氏は「中国は権威主義と民族主義、経済力を結集して台頭し、自由と民主主義という世界の価値と秩序に挑戦している」と指摘した。中国は台湾の外交関係を奪うと同時に、地域での軍事・経済的な影響力を拡張する狙いだとの考えも示唆した。
 蔡氏は「インド太平洋地域の最前線に位置する台湾は、民主的価値を守る第一防衛線だ」と強調した。米国は東・南シナ海での中国の台頭を抑え込むため、日豪など域内国家と連携する「インド太平洋戦略」を推進し、台湾を「信頼できるパートナー」と位置づける。蔡氏はこの戦略に貢献することで中国に対抗する姿勢を鮮明にした。

 ◎上記事は[日本経済新聞]からの転載・引用です


中国、南太平洋で影響力 台湾断交のソロモンと国交へ
 米中衝突 2019/9/17 19:45

  

 【北京=羽田野主、シドニー=松本史】中国は近く南太平洋の島しょ国・ソロモン諸島と国交を樹立する見通しだ。ソロモンが台湾との外交関係を解消したことを受けたもの。背景には経済力を武器に国際社会で台湾を孤立させる中国の戦略がある。国交が樹立すれば中国が米豪の海上交通路(シーレーン)に関係する南太平洋地域での影響力を高めるのは確実だ。
 中国外務省の華春瑩報道局長は17日の記者会見でソロモン諸島の台湾断交の決定を「高く称賛する」と話した。「両国関係発展の新時代を切り開きたい」と述べ、国交樹立に期待感を示した。
 豪ロウイー研究所によると、中国は太平洋諸国に2011年以降、総額12億ドル(約1300億円)超の経済支援をしてきた。ソロモンにも最大の貿易相手国という立場を背景に、1983年以来の台湾との外交関係を絶つよう働きかけていた。中国が今年最も重視する10月1日の建国70周年を前に決着を急いでいた節がある。

   台湾もソロモン諸島へ8年間で約100億円を援助してきたが…(首都ホニアラに立つ台湾からの支援を記す看板)
  台湾もソロモン諸島へ8年間で約100億円を援助してきたが…(首都ホニアラに立つ台湾からの支援を記す看板)

中国にとってソロモンとの国交樹立は特に軍事面で大きな意味を持つ。
 中国は近海から太平洋など遠海に活動範囲の拡大を志向している。近海防御戦略として沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」を設定。さらに米国の影響力排除をめざし、日本の小笠原諸島からグアム、サイパンを経てパプアニューギニアに至る「第2列島線」を設ける。ソロモン諸島はこの第2列島線近くに位置し、南太平洋の戦略的要衝を占める。
 中国がソロモンの西部州ノロ港の拡張を意図しているとの見方は根強い。台湾当局は「中国は軍事基地の建設を目指している」(外務省)と警鐘を鳴らしていた。海域での権益確保や戦略物資の輸送ルートの安全確保につなげていく狙いがあるとされる。
 ソロモンに近いバヌアツではすでに中国が17年後半から大規模な港を建設している。バヌアツからは南太平洋の米豪の軍艦の動向が一目でわかる。米議会の諮問機関は18年、第2列島線を巡って、中国軍が陸海空それぞれで米軍に対抗する能力があるとの報告書をまとめた。
 中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部はソロモンとの国交樹立を足がかりに、20年1月の台湾総統選に圧力をかけていく。
 16年に発足した、台湾独立志向の蔡英文政権が外交関係を失うのは6カ国目。なかでもソロモンは台湾がアジア太平洋地域で外交関係を持つ国のうち最大だった。台湾を外交承認するのはキリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ法王庁)など残り16カ国となった。
 蔡英文総統は16日に「中国は絶えず台湾を国際的に孤立させようとしている」とツイート。「台湾の人々の勇気をくじき、(高度な自治を認める)『一国二制度』を受け入れさせようとしている。断じて受け入れない」と続けた。
 米国やオーストラリアはソロモンをきっかけに南太平洋での台湾との断交ドミノが起きる事態を警戒する。今回の断交が今後ツバルやナウル、パラオなど台湾と国交を結ぶ残る域内5カ国にも波及する可能性がある。ナウルでは中国に批判的だったワガ前大統領が19年8月の選挙で落選した。9月に総選挙があったツバルでも議員が大幅に入れ替わった。中国がこうした国への攻勢を強めるのは確実だ。
 米政府内からは「グアムに近い南太平洋に中国の軍事拠点ができれば、西太平洋における米軍の優位性が損なわれる」と危惧する声がでている。
 中国共産党系メディアの環球時報は17日付の社説で「米国の支持があっても台湾が国交を結ぶ国を失い続けるのは止められないだろう」とけん制した。

 ◎上記事は[日本経済新聞]からの転載・引用です


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