明石歩道橋事故:榊和晄被告の初公判/4度にわたって不起訴/弁護側「一事不再理に違反 公訴棄却を」

2012-01-20 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

明石歩道橋事故:初公判で元副署長「過失はなかった」
 花火大会の見物客11人が死亡した兵庫県明石市の歩道橋事故(01年7月)で、神戸第2検察審査会の起訴議決により全国で初めて強制起訴され、業務上過失致死傷罪に問われた元県警明石署副署長、榊和晄(かずあき)被告(64)の初公判が19日、神戸地裁(奥田哲也裁判長)で始まった。榊被告は「警備本部でできることはやったので過失はなかった」などと述べ、起訴内容を否認した。
  榊被告は検察の捜査では4度にわたって不起訴となったが、09年5月の改正検察審査会法施行で導入された強制起訴制度が初めて適用された。このため、事故発生から10年半を経て初めて法廷で裁かれることになった。
  弁護側は起訴内容の認否で、今回の強制起訴に至る手続きは、同一事件で再度の申し立てはできないとする検審法の「一事不再理」に反しているなどとして公訴棄却を主張。さらに、同署の現場責任者で10年6月に同罪で有罪が確定した元同署地域官との共謀はなく、刑事訴訟法上の時効が成立しているとして免訴されるべきだとした。また「被告は事故を予見できなかった」として無罪を求めた。
  指定弁護士は冒頭陳述で、夏まつりの警備本部副本部長という立場で明石署にいた榊被告が、署内のモニターや無線報告などにより、現場の混雑状況を確認できたと指摘。歩道橋の構造や前年末の花火大会の人出などから、雑踏事故の危険性を予見できた、と主張した。その上で、部下に対し観客の歩道橋への流入規制を指示すれば事故を回避できたと述べた。
  また、指定弁護士は、署長の指示で元地域官の代わりに市や警備会社との会議に出るなど事前計画にかかわるなどしており、「過失の共犯」が成立すると主張した。
  共犯者の公判中は時効が停止するという刑事訴訟法の規定が適用され、被告も同罪に問えると説明するとみられる。
  初公判は午後も続き、弁護側も冒頭陳述を行う予定。結審は秋以降となる見通し。【渡辺暢】
 毎日新聞 2012年1月19日 11時10分(最終更新 1月19日 13時34分)

◇明石歩道橋事故
 01年7月21日夜、兵庫県明石市の大蔵海岸で開かれた花火大会の見物客が、会場につながる歩道橋(長さ約103メートル、幅約6メートル)上に滞留。折り重なるように倒れて子ども9人と高齢者2人の男女計11人が死亡、183人が負傷した。県警は明石署、市、警備会社の計12人を書類送検、神戸地検はうち現場責任者5人(署1人、市3人、警備会社1人)を業務上過失致死傷罪で起訴し、全員の有罪が確定した。民事裁判では県警と市、警備会社に総額5億6800万円の賠償を命じた神戸地裁判決が確定している。
毎日新聞 2012年1月19日 東京夕刊
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兵庫・明石の歩道橋事故:「共犯」「一事不再理」争点 元副署長、あす初公判
  花火大会の見物客11人が死亡して183人が負傷した兵庫県明石市の歩道橋事故(01年7月)で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元県警明石署副署長、榊和晄(かずあき)被告(64)の初公判が19日、神戸地裁で開かれる。4度も不起訴となった人物に、09年の法改正で導入された強制起訴制度が初めて適用され、発生から10年を経て被告が法廷に立つ前例のない裁判となる。争点は事故の予見可能性などの他に、公訴時効の法解釈など多岐にわたる。【渡辺暢】
  ■公訴時効
  事故では、同署の現場責任者だった金沢常夫・元地域官(62)が「事故の危険性を予見できたのに回避措置を取らなかった」として同罪に問われ、10年に禁錮刑が確定した。
  争点の一つは、榊被告と金沢元地域官との共犯関係の有無だ。同罪の公訴時効は5年。共犯者の公判中は時効が停止するとの刑事訴訟法の規定が、検察官役の指定弁護士にとっての命綱だ。指定弁護士は少なくとも2人のミスが重なり合って事故につながったと判断し、同法上の共犯にあたると主張。弁護側は共犯関係はなく、時効が成立しているとして「免訴」を求める。
  過失の有無を巡っては▽署内にいた榊被告がビデオや無線などで危険性を認識できたか▽権限を適切に行使したか--などが争われる。今回問われる「過失の共犯」については、専門家の間でもさまざまな解釈があり、司法判断が注目される。
  ■初の強制起訴
  不起訴となった榊被告について、遺族は検審法改正前に2度、改正後に1度、検審に審査を申し立て、地検はその都度不起訴とした。弁護側は今回の起訴を、同法が「同一事件で再度の申し立てはできない」と定めた「一事不再理」に反すると指摘する。強制起訴制度のない旧法時代、申し立てごとに検察が再捜査していたが、ほとんど議論されてこなかった点だ。
  指定弁護士側は「再捜査を経た事件は、元の不起訴処分のものとは別事件」と主張。一方弁護側は、旧法時代の再捜査は検察庁内の通達に基づく慣行に過ぎず、1度目で事件が終結していたと反論する。2度目以降の申し立てを検審が受理したこと自体が違法とし、公訴棄却を求める。
  また、弁護側は「検審の起訴議決で指摘された犯罪事実は、榊被告単独でのもの」と指摘。金沢元地域官との共犯とした今回の起訴は「議決の範囲を超えている」とし、違法性を主張する方針だ。
 
 ◆明石歩道橋事故を巡る経過表
 【01年】
  7月21日 事故発生
 【02年】
  5月 9日 兵庫県警が元明石署長や榊被告ら12人を業務上過失致死傷容疑で神戸地検に書類送検
 10月30日 遺族が県警と明石市、警備会社の3者に損害賠償を求めて神戸地裁に民事提訴
 12月26日 地検が明石署、市、警備会社の現場責任者ら5人を起訴。榊被告は不起訴
 【03年】
  3月10日 遺族が元署長と榊被告の不起訴を不服とし、神戸検察審査会(検審)に審査を申し立て
 【04年】
  4月23日 同検審が2人の起訴相当議決を公表
  9月28日 地検が2人を不起訴(2度目)
 12月17日 地裁が5人に有罪判決。全員が控訴し、うち1人は取り下げ
 【05年】
  6月28日 地裁が県警、市、警備会社に総額約5億6800万円の賠償を命じる(確定)
  7月21日 遺族らが2人の2度目の不起訴を不服とし、同検審に審査申し立て
 12月22日 同検審が起訴相当議決を公表(2度目)
 【06年】
  3月29日 遺族らが2人の起訴を求める要望書を最高検に提出
  6月22日 地検が2人を不起訴(3度目)
 【07年】
  4月 6日 大阪高裁が4人の控訴を棄却。元明石署地域官ら2人が上告
  7月 7日 元署長が病死
 【09年】
  5月21日 改正検察審査会法施行。遺族が榊被告の不起訴を不服とし、検審に3度目の審査申し立て
  7月15日 神戸第2検審が起訴相当議決(3度目)
  9月30日 地検が榊被告を不起訴(4度目)
 【10年】
  1月 8日 同検審が改正検察審査会法に基づき担当検事を聴取
  1月27日 同検審が榊被告について全国初の起訴議決。強制起訴が決まる
  4月15日 検察官役の指定弁護士が榊被告を取り調べ。榊被告は録音・録画を拒否
  4月20日 指定弁護士が強制起訴
  5月31日 最高裁が元地域官ら2人の上告を棄却
  7月29日 公判前整理手続き開始
 【11年】
 12月 8日 公判前整理手続き終了
 【12年】
  1月19日 初公判

毎日新聞 2012年1月18日 大阪夕刊
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明石歩道橋事故、日本初の強制起訴へ 「弁護士」が起訴 被害者参加制度と併せた司法制度改革の一環2010-01-27 | 被害者参加・裁判員裁判/強制起訴


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