日銀総裁 政府人事案 総裁に黒田東彦アジア開発銀行総裁 副総裁に岩田規久男氏・中曽宏氏

2013-02-25 | 政治

日銀総裁、黒田氏で決着の全真相 「円安批判の中・韓への配慮」懸念も…
zakzak2013.02.25
 注目の次期日銀正副総裁人事について、政府は総裁に黒田東彦(はるひこ)アジア開発銀行総裁(68)、副総裁に学習院大の岩田規久男教授(70)、日銀理事の中曽(なかそ)宏氏(59)を充てる方針を固めた。安倍晋三首相の金融緩和政策を支持する黒田氏と岩田氏の起用で金融緩和が加速するとの観測から、総裁人事を見極めていた為替市場では円安が急加速、株高も進んだ。ただ、財務省や日銀の意向にも配慮したバランス人事で「本当に日銀が変わるのか」と懸念する声も残る。
 「白川(方明総裁)」から「黒田」への交代を市場は歓迎した。
 週明け25日朝のオセアニア外国為替市場で円が売られ、一時1ドル=94円77銭近辺と、2010年5月上旬以来の円安水準に。東京市場では94円台近辺で取引された。
 これを受けて同日の東京株式市場も大幅続伸し、日経平均株価の終値は、前週末比276円58銭高の1万1662円52銭。2008年9月29日(1万1743円61銭)以来、4年5カ月ぶりとなる高値となった。
 黒田氏はデフレ脱却に向けた金融緩和を主張し、インフレ目標の導入も唱えている。岩田氏も「日本で最も古くから金融緩和の重要性を掲げ、日銀と戦ってきた論客の一人」(金融緩和派のエコノミスト)であることから、市場は金融緩和が一段と加速するというメッセージを受け止めた。
 安倍首相は同日昼、公明党の山口那津男代表との与党党首会談で日銀の人事案について協議した。民主党幹部も黒田氏の総裁起用について「既に(党としての)基準を決めていて、その枠の中に入る人だからなかなか反対は難しい」と前向きに検討する構えだ。
 政府は今週半ばに国会に人事案を提示し、国会で同意されれば新体制は3月20日付で発足。4月3、4日の定例会合が初会合となるが、市場では新体制発足直後に臨時会合を開き、大胆な追加緩和策を打ち出すとの観測も浮上している。
 黒田氏は東大法学部卒で、オックスフォード大経済学修士。1999年から2003年まで財務省の国際交渉の責任者である財務官を務め、円高対策として為替介入を指揮し、アジア地域の金融危機防止策をつくる交渉でも中心的な役割を果たした。05年からアジア開発銀行総裁を務めている。
 安倍首相は日銀総裁の要件として「金融政策への批判に理論で反論できる人物、国際金融のインナーサークルに自分の言葉で伝えることができる人物がふさわしい」と説明。積極的な金融緩和論者としてアベノミクスを支持し、各国政府高官や中銀幹部と親しい黒田氏が選ばれた。
 今回の人事案は、黒田氏の華々しい経歴を評価しただけでなく、財務省や日銀、市場など関係各所の「三方一両損」のような絶妙のバランスで配置されている点が特徴だ。
 財務省にとっては第一希望だった武藤敏郎元事務次官の総裁起用には失敗したが、1998年に大蔵・日銀接待不祥事で辞任した松下康雄氏以来15年ぶりに財務省出身者が総裁の座を取り戻すことになる。
 日銀にとっては、“天敵”の岩田氏が乗り込んでくることへの危機感も強い。ただ、「プロパーの中曽氏を副総裁に潜り込ませたことで、5年後の総裁ポスト奪還の可能性が残った」(日銀関係者)。
 岩田氏については積極的な金融緩和を主張するエコノミストや市場関係者が強く支持し、みんなの党も候補者の1人としている。「総裁起用の方がより強いデフレ脱却のメッセージになるはずだが、岩田氏が日銀に入ること自体は画期的なこと」(前出のエコノミスト)という。
 黒田氏は国内の人脈も広く、霞が関に根を張っている教駒(東京教育大学附属駒場高校=現筑波大附属駒場高校)出身で、同級生には自民党の細田博之氏がいる。
 「組織運営を重視する麻生太郎財務相にも一定の配慮をしている。ちなみに黒田氏は麻生氏の地盤の福岡県出身だ」(永田町関係者)
 「正副総裁候補については“身体検査”も念入りに行われたようだ」(関係者)とされるなど、選出をめぐりトラブルがないように配慮を重ねた感のある安倍人事だが、元内閣参事官で嘉悦大の高橋洋一教授は「まだ政府案の段階なので、国会できちんと長い時間を費やして、適任かどうか明らかにしてもらいたい」と要望する。
 金融緩和によるデフレ脱却の重要性を主張する上武大の田中秀臣教授はこう語る。
 「報道されている通りの人事案に決まれば、短期的には黒田氏はデフレ脱却に強い意志を示し、市場も好感するだろう。ただ、黒田氏は円安を批判する中国や韓国などに配慮する可能性もあり、中長期的には金融緩和からの“出口政策”をめぐり大きな政治的議論になるかもしれない。日銀法改正を含め、本当の戦いはこれからだ」
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反応さまざまなあのニュースをどう読む?メディア読み比べ(2月25日)
市場は好感「日銀新総裁に黒田氏起用」 読売はみんなの党の反発に懸念
Business Journal 2013.02.25
 日本政府の為替介入、円安誘導を懸念する声が各国から上がる中で、注目を集めている日銀新総裁人事。先週23日、朝日新聞が一面トップで「日銀総裁黒田氏を軸に調整」と報じた通り、政府は翌24日、元財務官でアジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁(68)を日銀新総裁に起用する人事案を固めた。本日25日の各紙が、これを大きく取り上げている。
 「黒田氏、組織運営に強み国際人脈、財務官時代から」との見出しで、ポジティブな見方を示しているのは、新人事案を他紙に先駆けてすっぱ抜いた朝日新聞。記事によれば、黒田氏は財務省やADBで見せてきた「組織人」の顔とともに、財務官として通貨政策を取り仕切っていた99年、円高を食い止めるために為替介入を実施、英フィナンシャル・タイムズ紙に金融政策の転換を求める論文を起稿するなど、「緩和論者」としての顔を持っている。国際的な人脈も広く、海外から厳しい目を向けられるアベノミクスについて、理解を促すという面でも期待がかかる。
 日経新聞は、副総裁に起用される岩田規久男学習院大教授、中曽宏日銀理事について大きく取り上げた。岩田氏は、大胆な金融緩和で緩やかなインフレをおこして、景気を立て直すことを主張する「リフレ派」学者の代表格。同紙は「20年以上にわたって日銀を批判し続けてきた。『アンチ日銀』派の正副総裁への起用で、日銀に金融政策の抜本的な転換を迫る構えだ」としている。
 また、中曽氏は「政策委員会には中央銀行の実務に精通した日銀出身者が最低1人は必要」(同紙)との日銀の要請に、政府側が理解を示すかたちで起用すると見られる。同紙によると、中曽氏は、欧米の政府や中央銀行関係者から一目置かれる国際派。語学も堪能で、2006年から国際決済銀行(BIS)の市場委員会で、日本人として20年ぶりの議長を務める。リーマン・ショック時にドル資金の大量供給などの緊急対策を取りまとめた金融実務のエキスパートとして、「眠らぬ市場の番人」の異名をとっている。これらの人事案が報じられたことで、市場では積極的な緩和策への期待感が再燃。ロイターによると、25日の外国為替市場で、ドルが2010年5月以来の高値となる1ドル=94.77円を付けた。
 同じく25日の東京株式市場は大幅続伸で始まり、一字上げ幅は220円を超え、1万1600円台に乗せている(産経ニュース)。
 またブルームバーグも東京株式相場の上昇を大きく取り上げており、人事案への好感とともに、先の日米首脳会談で日本が環太平洋連携協定(TPP)交渉入りへの前進を果たしたこともその一因だと分析している。日銀首脳の交代をきっかけに、加速する円安で輸出企業は利益増、株価も上がり景気も回復! ……と、事がうまく運ぶかどうかは、まだわからない。
 読売新聞はふたつの懸念を指摘している。
 ひとつは、ADB総裁の後任人事の問題。黒田氏の任期は16年11月までであり、民主党内では「任期途中で黒田氏がADB総裁を辞めると、後任総裁のポストを中国に奪われるのではないか」との懸念が持ち上がっているという。ADBはアジア・太平洋地域で開発支援を行っており、今後急伸すると考えられる新興国への日本の影響力が低下しないかーー今回の総裁人事が、短期的な利益を追ったものになりはしないか、という見方もあるようだ。
 また、そもそも人事案が国会で承認されるかどうかについても、不透明な部分がある。与党自民党は参院で過半数に16議席足りない。12議席を持つみんなの党は、財務省OBである黒田氏の総裁起用に反対しており、これがネックになる可能性がある。人事案が国会で揉まれ続け、金融政策が停滞すれば、“アベノミクス・フィーバー”にも陰りが出てくるだろう。過度な金融緩和が国債の暴落、金利の暴騰を招くとする声も根強く、一度、アベノミクスが停滞すれば、市場や世論の風向きが変わることも考えられる。今般の“景気回復”が継続するかどうかは、日銀総裁人事がスムーズに本決まりするかどうかにかかっていると言えそうだ。
 (文=blueprint)
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日銀新総裁に黒田氏有力との朝日新聞スクープ、財務省のリークか
Business Journal 2013.02.23
 本日(2月23日)付朝日新聞朝刊は、3月に辞任する日本銀行(日銀)の白川方明総裁の後任について、黒田東彦・アジア開発銀行総裁、元財務官の起用を軸に調整される見通しだと報じた。昨日22日、安倍晋三首相はワシントンで「月曜日(25日)ぐらいから日銀総裁と副総裁人事について進めていきたい。その週の間に、各党にお願いをしていく。候補者本人にも了解をとる」との意向を明らかにしていたこともあり、朝日の報道は、早くも市場関係者の間に波紋を呼んでいるという。
 今回の報道について、全国紙記者は次のように話す。
「記事では『財務省や内閣官房の関係者らが明らかにした』とされていますが、財務省のリークではないかとの見方が有力です。以前は日銀総裁ポストは、旧大蔵省(現財務省)OBと日銀出身者が交互に就任する“たすきがけ人事”が行われていましたが、1998年に着任した速水優氏以降、3代続けて日銀出身者が就いています。よって、今回財務省はなんとしても総裁の座に同省OBを送り込みたい。しかし、昨日、同省大臣でもある麻生太郎副総理・財務・金融相が『財務省OBでなくてもよい』と発言。あせった同省関係者が、既成事実化を狙って、朝日にリークした可能性があります」
 もしリークが事実の場合、日本経済新聞ではなく朝日新聞に対して行われた理由について同記者は、「日経(新聞)は日銀の広報部みたいなもので、まさに一心同体。リークを受けても、日銀の意にそぐわないことは書けませんから」と語る。
 また、別の全国紙記者によると、今回の報道を受け、かえって黒田氏就任の線が薄くなった可能性もあるという。
「麻生さんにしろ安倍さんにしろ、自分の発言のすぐ後に、あたかもその内容を覆すかのような『黒田氏有力』との報道を心良くは思いません。あえて別の人を推す可能性もあります」(同記者)
 現在、黒田氏のほかに、次期日銀総裁候補として
  ・武藤敏郎 大和総研理事長(元財務事務次官) 
  ・伊藤隆敏 東京大学大学院教授
  ・岩田規久男 学習院大学教授
  ・岩田一政 日本経済研究センター理事長
らの名前が挙がっているが、「依然流動的との見方が強い」(前出の記者)という。
 (文=編集部)
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世界標準へのレジームチェンジを目指す安倍政権と、旧来レジームに取り込まれ続ける日本のメディア 2013-02-23 | メディア/ジャーナリズム 
 世界標準へのレジームチェンジを目指す安倍政権と、旧来レジームに取り込まれ続ける日本のメディア
現代ビジネス「ニュースの深層」2013年02月22日(金)長谷川 幸洋
 日銀総裁選びが大詰めになってきた。新聞やテレビはこの数週間、いろいろ候補者を予想して記事や番組を作ってきたが、はっきり言ってピンぼけ解説ばかりではなかったか。私からすると、ほとんどは財務省や日銀の意向を忖度した提灯記事ばかりだったように見える。とてもじゃないが、独立したジャーナリズムの仕事とは思えないのだ。
 たとえば、NHKは2月20日夜の番組で民間のエコノミスト10人が予想する候補者を挙げて解説した。その結果はといえば、岩田一政日本経済研究センター理事長と武藤敏郎大和総研理事長(元財務事務次官)の2人が最有力という話になっていた。
 これは驚くには値しない。なぜかといえば、そもそも投票したエコノミストの顔ぶれが財務省や日銀と取引している金融機関のサラリーマンばかりだからだ。中には、日銀なくして存在できない短資会社のエコノミストまでいた。彼らが最重要のお得意様である財務省や日銀の意向に背くような候補者の名を挙げるはずがないのだ。
 とくに番組に顔写真が出た短資エコノミストは、「日銀の宣伝係」として金融業界で知らぬ者はいない。もちろん、そんなことはNHKだって百も承知のはずなのに、そういう人に投票させるという企画自体が日銀(と背後にいる財務省)の意向を反映している。
 それで、もっともらしい解説番組になったと満足しているとすれば、私も「やっぱり受信料払うの、やめるか」と思ってしまう。べつにNHKだけでなく、他のテレビや新聞も似たり寄ったりである。
■御用エコノミストの世論誘導作戦
 今回、どうしても日銀総裁にOBを送り込みたい財務省は、エコノミストはもちろん新聞やテレビの記者たちにも猛烈な刷り込み作戦を仕掛けて、相場観作りに勤しんできた。そんなエコノミストたちの発言を新聞、テレビがこぞって紹介することで、財務省路線が世の中に浸透し、安倍に「世論はこう期待してますよ」と圧力をかける。そういう仕組みである。
 ズバリ言えば、御用エコノミストとポチ記者たちの世論誘導作戦である。私はNHKの番組を見ていて、あんまりばかばかしいので、途中でチャンネルを切り替えてしまった。こういうものをいくら見ても、なんの役にも立たない。自分の頭が濁るだけだ。
 私は金融政策について安倍の考え方(人事ではない)を何度も本人から聞いているので、実は日銀総裁人事そのものについては、ほとんど心配していない。
 なにより安倍自身がまったく最初からぶれていない。2%の物価安定目標は日銀に飲ませた。肝心の大胆な金融緩和は次の総裁にかかっているが、万が一、安倍が指名したにもかかわらず、次の総裁が緩和に消極的なら、安倍はためらわず日銀法改正に踏み出すだろう。基本的な路線はもう出来ているのだ。これが大前提である。
 だから、だれがいいとか悪いとか、人事を当てることにも、率直に言って大して関心がない。だれが総裁、副総裁になったところで、日銀は大胆な金融緩和に踏み切らざるを得ないのだ。したがって、その結果であるデフレ脱却と景気回復についても、そう心配していない。
 そのうえで、あんまりメディアの報道がひどいから、あえて私自身の見方を書いておこう。はっきり断っておくが、これは私の見方であって、安倍の考え方そのものではない。まして私が安倍からこっそり聞いた話ではまったくない。
■安倍は世界標準を重視する
 まず安倍自身はなんと言っているか。
 最初から「金融政策のレジームチェンジ(枠組み変更)を目指す」と言ってきたのは、2月7日公開のコラムで書いたとおりだ。加えて、20日には参院予算委員会で重要な発言をした。
 安倍は「金融政策への批判に対し理論で反論できる人物、国際金融のインナーサークルに自分の言葉で伝えることができる人物がふさわしい」と言ったのである。注目すべきは「理論で反論できる」という部分だ。単に国際金融のインナーサークルに顔があるというだけではダメで、理論で語るとなると、学識がモノを言う。
 安倍は、ともすれば狭量なナショナリストと誤解されがちだが、実はグローバルスタンダード(世界標準)を極めて重視している。そのことが、日銀総裁問題では「国際金融のインナーサークルで自分の言葉で語る。しかも理論で」という点に如実に示された。
 日本を一歩出て、世界に身を置けば、自分の言葉で語るのは常識である。自分の所属する組織の論理をいくら語っても「お前は自分の頭がないのか」とバカにされるだけだ。財務省や日銀のような組織が大きな顔をしていて「そういう組織の人間」というだけでチヤホヤされるのは、まったく日本だけの現象である。
 理論をもとに英語で語るのも当たり前だ。そんなことが重視されるという事実自体が、日本がいかにダメな国になったかという話なのだ。途上国の人間だって、ちゃんとした人は理論と英語で語る。金融政策を理論で語らず、組織の論理優先で運営するなら、先進国どころか前近代の「ムラ社会」そのものだ。それが失敗したのは、原発問題で証明済みである。
 安倍の世界標準重視は規制改革にも表れている。私は1月12日公開のコラムで、自民党が日本の規制を世界標準にするために「国際先端テスト」を導入するという公約を掲げている点を評価した。安倍は1月25日の日本経済再生本部で稲田朋美行革相に国際先端テストの導入に向けて取り組むよう指示している。
 なにかと議論が多い国防軍の創設についても、世界標準重視の文脈でとらえることができる。安倍自身が何度も説明したように、自衛隊は英語にすれば「Self Defence Force」だ。だが、ときに「Selfish(自分勝手な、利己的な) Defence Force」と揶揄されることもあるから「National Defence Force」(国防軍)にしようという話である。世界を見れば、Nationalのほうが標準なのだ。
■あとは大胆な金融緩和だ
 以上のようなレジームチェンジと世界標準志向で考えれば、日銀人事の候補者もおのずと絞られてくると思う。
 たとえば武藤はどうか。先のコラムで書いたように、武藤では「レジームチェンジ」にならないだけでなく「理論で反論」もできないから候補にはならない。この1点だけを見ても、エコノミストたちの見方がトンチンカンなのは証明できる。
 財務省もさすがに武藤については、もう諦めただろう。どう考えても、安倍が示した選考基準を満たさない。2月15日にロイター通信が「武藤有力」と報じると、あっという間に株価は下落し、円相場は円高になった。御用エコノミストたちが、いくら武藤を持ち上げようと、皮肉にも肝心の市場が評価していない(そんなので、よくエコノミスト商売になるな、と感心する)。
 岩田一政はどうか。岩田は理論家だが、やはり先のコラムで書いたように、そもそも安倍が唱えた2%物価安定目標に冷ややかだった。2006年に量的緩和解除に賛成した経緯もある。安倍の考え方を共有しているとはいえない。
 黒田東彦アジア銀行総裁(元財務官)はどうか。黒田も有力候補の1人には違いない。だが、いかんせん組織の人間である。そこを安倍がどう判断するか。
 2月20日の首相動静を見ると、財務省の真砂靖事務次官、中尾武彦財務官、山崎達雄国際局長がそろって首相を訪問している。G20が終わったばかりのタイミングで首相に報告する内容があるとも思えず、ここは黒田一本に絞った陳情活動だったのではないか。
 岩田規久男学習院大学教授も候補になる。だが、いまから国際金融のインナーサークルに入れるかとなると、いま1つ弱い。副総裁候補どまりではないか。
 国際金融のインナーサークルに顔があって、理論で語れる人はだれか。私は竹中平蔵慶大教授が一番ではないかと思う。いまは学者をしているが、小泉純一郎政権の経済財政担当相として政治家の経験もある。経済と政治の双方を知る候補である。
 竹中については、たとえば麻生太郎副総理兼財務相が嫌っているという話がある。いま竹中は産業競争力会議の委員として、安倍政権の産業政策がターゲティング・ポリシーに傾斜している点を厳しく批判している。竹中が産業競争力会議を離れて日銀の金融政策に専念してくれれば、麻生にはかえって都合がいいのではないか。
 日本経済に求められているのは、おろそかにされてきた金融緩和を物価安定目標の下でしっかり実行する。財政出動も加えて、まずはデフレ脱却に全力を挙げる。そのうえで長年の課題である規制改革にしっかり取り組む。そして中長期的な安定成長への道筋をつける。これに尽きる。
 このうち物価安定目標はできた。あとは大胆な金融緩和だ。政権の側がようやく財務省・日銀ムラから脱して、新しい世界標準のレジームを構築しようというとき、エコノミストやメディアが旧来レジームに取り込まれていて、どうするのか。(文中敬称略)
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