講演会:大石誠之助らの生き方知って 辻本・佐藤春夫記念館館長が講演 /和歌山
◇大逆事件100周年前に
大逆事件発生から来年100周年を迎えるのを前に、新宮市立佐藤春夫記念館の辻本雄一館長の講演会「『大逆事件』と熊野新宮の犠牲者たち」が24日、和歌山市中島の県企業センターであった。約100人の聴衆を前に、事件で処刑された新宮市出身で医師の大石誠之助らについて、辻本館長は「どんな生き方をしたか、一人でも多くの人に知ってほしい」と訴えた。
辻本館長は、1910年に「明治天皇暗殺」を企てた嫌疑で24人が死刑判決を受けた経緯を紹介。「当時の検事は公判冒頭で、『裁かれるのは被告らの行為ではなく信念だ』と言った。社会主義思想を持つこと自体が悪いという観点だった」と説明した。
また、24人のうち大石ら6人が暮らしていた新宮・熊野について、「新宮のまちの自由な雰囲気は一変し、『大石は逆徒だ』という風潮になった。私たちの先祖はある日突然、大石に石を投げた側に回ったかもしれない」と訴えた。新宮市民が進める大石を名誉市民にする運動の意義を、「先祖が犯した誤りを指摘し、真っ当な人権思想、戦争反対の思想だったということを若い世代に伝えていく義務がある」と説いた。
講演は、和歌山人権研究所のシリーズ講座の一環として開かれた。【山下貴史】毎日新聞2009年11月25日地方版