【どうなる日米関係】米国の国防費削減と対中包囲網 オバマ政権のしたたか外交に要注意★(4)
zakzak 2013.01.25
日本では「アベノミクス」で経済論議が湧いているが、米国は「オバマノミクス」で経済再生を狙う。オバマ大統領は年明け早々、最大の危機「財政の崖」(減税停止と歳出削減が同時発生する緊急財政危機)のうち減税停止は回避した。
しかし、歳出削減の解決については3月に先送りした。現在の米国の財政赤字は2012年の予算教書によれば1兆6450億ドル(GDP比10・9%)であり4年前の政権発足当時よりも悪化している。
そのため、オバマ大統領は今まで聖域であった国防予算削減に大幅に切り込み、オバマ政権は今後5年間で2590億ドルの国防予算削減を発表した(予算教書)。しかしながら、それでも足りないと米議会は国防費を10年間で4870億ドル削減するトリガー条項を決めた。
もし、3月末までに米議会で削減額が合意されねば、この条項が発動される。そうなれば、併せて7470億ドルの国防費削減となる。
次に問題となるのが、この削減額がどの程度、米軍戦略に影響するかである。米国の政府系シンクタンク(CNAS)の試算では、約8000億ドル削減されても米国本土防衛は可能であるが、その他の地域防衛には大きな懸念が出て地域が不安定化する。
そこで、国防費削減のなか台頭する中国をいかにヘッジ(封じ込め)するかがオバマ第2期政権の大きな課題となる。
その点、米国防戦略(QDR2010)では「同盟国からなるセキュリティー・アーキテクチャー(対中包囲網)を強化する」と指針を示している。すなわち削減される国防費のために米軍はどうしても前方展開が薄くならざるを得ない。そのために同盟国を総動員していわゆる「万里の長城」を中国の周りに築く構想なのである。
その「万里の長城」に参加すべき同盟国をパネッタ国防長官は発表している。第1に「中核的同盟」として日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイをあげている。次に「中核的パートナー」にインド、シンガポール、インドネシアを挙げた。これまで米中と等距離外交をとってきたベトナム、マレーシア、ニュージーランドも米側に引きよせる。
また、オバマ第2期政権にはケリー国務長官、ヘーゲル国防長官が加わる。そのことにより、軍事力を安全保障上の礎石としつつも、国際協調主義や外交的関与による解決を優先する従来のオバマ・ドクトリンが前面に押し出される可能性が強い。
結果、中国に対する「万里の長城」を築く一方、オバマ政権は悠々と米中経済的互恵関係を追求する可能性もある。こういった、したたかな外交に安倍政権は要注意である。
--------------------------------
◆ 【どうなる日米関係】気になる第2期オバマ政権 恐ろしくリベラルでリアリストな集団(1) 2013-01-22 | 国際
◆ 【どうなる日米関係】オバマ2期目は波乱の幕開け 世界はテロのドミノ倒しに揺れる(2) 2013-01-23 | 国際
◆ 【どうなる日米関係】米のシビアな対テロ政策とうまく連携できるか(3) 2013-01-25 | 国際
◆ 【どうなる日米関係】米国の国防費削減と対中包囲網 オバマ政権のしたたか外交に要注意(4) 2013-01-25 | 国際
◆ 【どうなる日米関係】米国は尖閣を本当に守ってくれるのか 失墜した日米関係の修復を(5) 2013-01-27 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
---------------------------------
◆ 安倍晋三首相が提唱した「セキュリティー・ダイヤモンド」安全保障 「インド◇日本◇ハワイ◇豪州」連携 2013-01-17 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
◆「安保ダイヤモンド」形成着々 中国包囲網へ豪重視鮮明
産経新聞 1月14日(月)7時55分配信
岸田文雄外相がオーストラリアのカー外相との会談で、米国を含めた安全保障分野の協力を加速させる方針で合意したのは、海洋進出を進める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。民主党政権下では豪州側の“片思い”が続いていたが、政権交代を機に「戦略的パートナー」として豪州重視を打ち出した形だ。
安倍晋三首相は就任直後に発表した論文で、豪州、米ハワイ、インド、日本を結ぶ「安全保障のダイヤモンド」を形成する戦略構想を明かしている。
この中で中国については、海上交通路(シーレーン)が通る南シナ海を「北京の湖」として影響力を増していると警戒を示し、インド洋と西太平洋の海洋安全保障を目的とした日米豪印の協力強化を訴えた。
首相は第1次政権時代もアジア地域などで自由や民主主義、法の支配の定着を目指す「自由と繁栄の弧」構想を掲げた。
日豪両国は平成19年の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を受け、物品役務相互提供協定(ACSA)や安全保障に関する情報保護協定に署名するなど着実に安保協力を進展させてきた。
しかし、首脳・閣僚間の交流では豪州の一方的な熱意が目立っている。民主党政権時代の3年余りの間、豪州の首相や閣僚が来日したのは延べ22回だったのに対し、日本側はわずか7回。外務省幹部は「日本がどれだけ豪州のラブコールに応えられているのかという反省はある」と語る。
豪州は昨年4月に米軍のローテーション展開を受け入れており、中国を念頭に置いた米国との関係強化に乗り出している。日本に対しても協力拡大を要請している。日豪当局者間の協議では、豪州側が日本に集団的自衛権の行使容認をたびたび求めているという。
安倍政権は「豪印両国との関係をより高い段階にしたい」(外務省幹部)として、会談を機に安保協力をさらに拡大させる方針だ。政府内には「公海上で日豪いずれかの船舶が攻撃を受けた際に、双方が守る“疑似同盟”を将来的には考えるべきだ」(政府関係者)との声も出ている。(杉本康士)
最終更新:1月14日(月)8時55分
=========================================================
「ダイヤ形」安保 輝くか インド◇日本◇ハワイ◇豪州 連携
中日〈東京〉新聞 2013/01/17Thu. 特報
海洋進出「封じ込め」狙い
ダイヤモンド安保構想-。耳慣れない言葉だが、安倍晋三首相が昨年末、提唱した外交安保のアイデア。日本、インド、豪州、米ハワイ州の連携を強め、ダイヤモンドの形の枠組みをつくる。狙いは海洋進出に野心的な中国に対するけん制であり、「封じ込め」戦術。ダイヤモンド安保の可能性と問題を考えた。(上田千秋・林啓太)
■中国けん制へ首相提唱
「インド洋から西太平洋にかけて共有する海を守るため豪州、インド、日本、ハワイ州が『ダイヤモンド』を形成する」。「ダイヤモンド安全保障構想」は安倍首相が十二月二十七日、国際NPO「プロジェクト・シンジケート」に寄稿した論文で提唱した。
ダイヤモンドは、日本など四カ国・州を線で結ぶと浮かび上がるひし形を指す。四角い海域での「航海の自由」を、日米印豪の四カ国が連携して守る戦略という。
「プロジェクト・シンジケート」のウェブサイトには「安倍晋三首相」の名前が入っているが、実際には首相就任前に書いたものとみられ、そのためか、やや踏み込んだ表現が目立つ。
論文にはこの海域に軍事面で進出を図る中国に対する首相の強い警戒感が込められている。中国は南シナ海の南沙諸島の領有権をめぐりフィリピンやベトナムなどと対立を深めているが、安倍首相は南シナ海が「『北京の湖』になるようにみえる」とかなり刺激的な表現を使っている。加えて首相は「日本が東シナ海で中国に屈してはならない」と強調。日中の尖閣諸島の領有権問題で日本の立場の正当性を訴えている。
■価値観外交
安倍首相は以前から「自由、民主主義、基本的人権といった価値観を共有する国との関係を深める」と、「価値観外交」を主張している。今回のダイヤモンド安保構想も、こうした価値観外交に基づくもので、立命館大学の宮家邦彦客員教授(外交・安全保障)は「日本は米国、インド、豪州と民主主義の価値観を共有している。中国に尻込みしない民主主義国家をつなぎ、太平洋での自己主張が強まった中国に対し、現状の海洋秩序を守らせようとしている」と指摘。中国への牽制が最大の狙いだろうと解説する。
東京財団の渡部恒雄上席研究員は「民主主義の価値観を共有しない、と言われることは中国からすればいやなこと」と指摘。その上で「首相は、ダイヤモンド構想の方針を示して中国に圧力を加え、自由主義国が海洋秩序を維持する枠組みに加わらざるを得なくさせる作戦だろう。そうすると、中国は尖閣諸島をめぐる行動も制限されるようになる」
前の安倍政権ではこれと同じように「自由と繁栄の弧」があったが、ダイヤモンド安保構想はこれとはどう異なるのか。宮家氏は「戦略の切り口が海か、陸かの違いだ」と説明する。「自由と繁栄の弧が唱えられた当時は、日本がテロ対策をめぐり、イラクやアフガニスタンを支援し、ユーラシア大陸の東西を結ぶ価値観外交に重点が置かれていた。今は中国の海洋進出が大きな問題で、海を意識した構想を立てなければならなくなった」
双日総合研究所(東京)の吉崎達彦副所長は「海洋国家である日本の価値感に裏打ちされたものの見方。セキュリティー・ダイヤモンドという言葉も斬新だし、コンセプトで闘うとの発想は今までの日本にはなかった。首相の発言としてはやや軽い印象があるが、政治家・安倍晋三個人の発言なら非常に面白い」と構想を評価した。
佐藤優・元外務省主任分析官は「ロシアは静観するだろう。しかし、(中国を牽制する意味で)腹の底では歓迎するはずだ」との見通しを示した。
高まる緊張 逆効果?
安倍政権はこの構想に沿って動き出している印象がある。ダイヤモンドの枠に入る東南アジアを重視する姿勢を鮮明にしている。
今月に入って麻生太郎財務相がミャンマーを訪問。岸田文雄外相はフィリピン、シンガポール、ブルネイ、豪州を歴訪。安倍首相も十六~十九日、ベトナム、タイ、インドネシアの三カ国を回る。
「日本も世論戦でカウンターパンチを出せるんだと、中国に意識させることができる」(吉崎氏)との好意的な見方もある一方、実際にダイヤモンドを形成するには、問題が山積しているのも事実だ。
■豪印に温度差
岸田外相と会談した豪州のカー外相は十三日、「日豪関係は中国を封じ込めるものではない。日本との関係緊密化は豪中、日中の関係強化と共存できる」と述べて日本の出方をけん制。「日豪はともに米国と同盟国。戦略認識を共有し、協力関係をいっそう推進していきたい」と語った岸田外相とは微妙な温度差を感じさせた。
ダイヤモンドを結ぶ、もう一つの国、インドが同調するかどうかも疑わしい。外交評論家の孫崎亨氏は「インドの中国との貿易量は日本の何倍にも当たり、国の重要度は中国の方がはるかに上。現実的に考えれば、できるとは思えない」とみる。
岐阜女子大南アジア研究センターの福永正明センター長補佐も「『日印の関係が、日米関係を超えるわけがない』というのがインドの一般的な考え方。インドからすれば、日米を基軸としたものよりも東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係や自由を中心とした別の枠組みを考えていくだろう」との見方を示す。さらに「日米同盟の強化や対中政策のためにインドを犠牲にしようとしているのでは、と考えている識者もいる」と指摘する。
■口実与える?
ダイヤモンド構想が中国を強く刺激し、尖閣問題などをめぐる緊張を高める危険があるとの見方もある。
慶応大学の渡辺靖教授(文化外交)は構想自体は「悪くないアイデア」という一方、「日中関係は今、非常に危険な領域に入っている。構想は、『中国にとって脅威になる。拡張路線を進めなければならない』との口実を与えかねず、逆効果になる可能性がある」と指摘する。
渡辺氏はこうした構想と並行して、中国政府の中枢にパイプをつくるなど地道な努力の積み重ねによって、関係改善を図るべきだとの考えだ。「いざという時に落としどころを見つけるのは政治家同士のコミュニケーションなのに、それができていない」と説く。
孫崎氏も、ダイヤモンド構想の裏には米国の戦略がちらつくと否定的な考えを強調。「日米は価値が共通だとか、中国と連携できるわけがないと主張するが、それは米国の軍産複合体が使うロジック。米国は自国のカネを使わずに、日本などに負担させたいだけのことだ」と述べた。 *リンクは来栖
..............
Asia’s Democratic Security Diamond by Shinzo Abe- Project Syndicate http://po.st/e9XtMg
--------------------------------------------