聞きたい:日本経団連・米倉弘昌新会長
◇政府に依存はしない
日本経団連会長に27日就任した米倉弘昌・住友化学会長は同日までの毎日新聞などのインタビューで新体制発足にあたっての抱負を語った。米倉新会長は「経済の活性化」を最優先課題に挙げ、政府に依存しない民間だけの成長戦略を策定したい考えを表明した。【聞き手・米川直己】
--新会長として取り組む優先順位は?
◆経済の活性化が重要。何としてでも夜明け前のもやの中から脱却しないといけない。経営者も守りの姿勢になっているので、自信を持って攻めの経営に転じていくことが必要だ。
--活性化への具体的なビジョンは?
◆早急に政治に依存しないような形で民間だけの成長戦略を描けたらと思う。夏のセミナーで議論し、提言の形にできたらと思う。
--鳩山政権の評価は?
◆斬新さを出そうとしているがスムーズさ、スピード感がない。社会保障、デフレ脱却と課題を抱えているなかで解決の道をつけるようなことを見せてほしい。政策決定プロセスで肝心なところで透明感が欠けている。
--政権とどう向き合いますか。
◆民主党中心の政権になって経団連が軽んじられているという人もいるが、そうは思わない。省庁とは閣僚級で議論し、電子行政や道州制ではタスクフォースを作っている。我々としては政策本位でこれからも関係を保っていきたい。
--社会保障と財政改革の考えは?
◆財政は先進諸国で最も悪い状況にあり、健全化は待ったなしだ。ギリシャ問題があり、欧州は不安定。各国が必死に財政健全化を進めなくてはいけない。(日本では)税制改革しかない。消費税は上げなくては社会保障は破綻(はたん)する。
--経済外交をどう進めますか。
◆東南アジア諸国連合(ASEAN)が15年に共同体を発足させるが、そこに日中韓で自由貿易協定(FTA)を作って合体させたい。日米でも(FTAよりも自由化対象が広い)経済連携協定(EPA)が大事なので、政府要人やビジネス界のリーダーを説得している。欧州連合(EU)とは非関税障壁を少なくしていくことで議論している。
--温暖化対策はどう対応しますか。
◆(政府が掲げる温室効果ガスの)20年までに90年比で25%削減を実現すると、国民負担は相当なものになる。国民生活、雇用、産業への影響を客観的に検証しなければならない。
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◇副会長陣、過去最大18人体制
経団連副会長には27日、新たに4人が就任。過去最大の18人体制で米倉会長を支える。ナンバー2の評議員会議長には副会長だったJXホールディングスの渡文明相談役が就任した。
新副会長の中村芳夫・経団連事務総長は、御手洗冨士夫前会長が推進した「政策集団化」を支えた。NTTの三浦惺社長は「電子政府の実現」に向けた働きを期待される。日立製作所の古川一夫前社長は昨年、業績悪化を理由に経団連副会長を任期途中で退任したが、川村隆会長が復帰する形となる。
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◇経団連副会長◇
佐々木幹夫(72)三菱商事会長
中村邦夫 (70)パナソニック会長
森田富治郎(69)第一生命保険会長
槍田松瑩 (67)三井物産会長
榊原定征 (67)東レ社長
前田晃伸 (65)みずほFG会長
佃和夫 (66)三菱重工業会長
氏家純一 (64)野村HD会長
大橋洋治 (70)全日本空輸会長
岩沙弘道 (68)三井不動産社長
清水正孝 (65)東京電力社長
渡辺捷昭 (68)トヨタ自動車副会長
西田厚聰 (66)東芝会長
宗岡正二 (64)新日本製鉄社長
★川村隆 (70)日立製作所会長
★坂根正弘 (69)コマツ会長
★三浦惺 (66)NTT社長
★中村芳夫 (67)経団連事務総長
◇評議員会議長◇
★渡文明 (73)JXHD相談役
※★は新任。肩書、年齢は27日現在。FGはフィナンシャルグループ、HDはホールディングス。
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■人物略歴
◇よねくら・ひろまさ
1960年東大法学部卒、住友化学工業(現住友化学)入社。海外プロジェクトを数多く手がけ、00~09年の社長在任中はサウジアラビアの現地国営企業と世界最大級の石油精製プラントを建設するなどグローバル化を推進。M&A(企業の合併・買収)にも積極的に取り組んだ。04年に経団連副会長、08年に経団連評議員会議長に就任。財界きっての国際派として知られ、欧米の大手化学トップや中東産油国の政府首脳などに幅広い人脈を築いている。73歳。
毎日新聞 2010年5月28日 東京朝刊
◇政府に依存はしない
日本経団連会長に27日就任した米倉弘昌・住友化学会長は同日までの毎日新聞などのインタビューで新体制発足にあたっての抱負を語った。米倉新会長は「経済の活性化」を最優先課題に挙げ、政府に依存しない民間だけの成長戦略を策定したい考えを表明した。【聞き手・米川直己】
--新会長として取り組む優先順位は?
◆経済の活性化が重要。何としてでも夜明け前のもやの中から脱却しないといけない。経営者も守りの姿勢になっているので、自信を持って攻めの経営に転じていくことが必要だ。
--活性化への具体的なビジョンは?
◆早急に政治に依存しないような形で民間だけの成長戦略を描けたらと思う。夏のセミナーで議論し、提言の形にできたらと思う。
--鳩山政権の評価は?
◆斬新さを出そうとしているがスムーズさ、スピード感がない。社会保障、デフレ脱却と課題を抱えているなかで解決の道をつけるようなことを見せてほしい。政策決定プロセスで肝心なところで透明感が欠けている。
--政権とどう向き合いますか。
◆民主党中心の政権になって経団連が軽んじられているという人もいるが、そうは思わない。省庁とは閣僚級で議論し、電子行政や道州制ではタスクフォースを作っている。我々としては政策本位でこれからも関係を保っていきたい。
--社会保障と財政改革の考えは?
◆財政は先進諸国で最も悪い状況にあり、健全化は待ったなしだ。ギリシャ問題があり、欧州は不安定。各国が必死に財政健全化を進めなくてはいけない。(日本では)税制改革しかない。消費税は上げなくては社会保障は破綻(はたん)する。
--経済外交をどう進めますか。
◆東南アジア諸国連合(ASEAN)が15年に共同体を発足させるが、そこに日中韓で自由貿易協定(FTA)を作って合体させたい。日米でも(FTAよりも自由化対象が広い)経済連携協定(EPA)が大事なので、政府要人やビジネス界のリーダーを説得している。欧州連合(EU)とは非関税障壁を少なくしていくことで議論している。
--温暖化対策はどう対応しますか。
◆(政府が掲げる温室効果ガスの)20年までに90年比で25%削減を実現すると、国民負担は相当なものになる。国民生活、雇用、産業への影響を客観的に検証しなければならない。
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◇副会長陣、過去最大18人体制
経団連副会長には27日、新たに4人が就任。過去最大の18人体制で米倉会長を支える。ナンバー2の評議員会議長には副会長だったJXホールディングスの渡文明相談役が就任した。
新副会長の中村芳夫・経団連事務総長は、御手洗冨士夫前会長が推進した「政策集団化」を支えた。NTTの三浦惺社長は「電子政府の実現」に向けた働きを期待される。日立製作所の古川一夫前社長は昨年、業績悪化を理由に経団連副会長を任期途中で退任したが、川村隆会長が復帰する形となる。
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◇経団連副会長◇
佐々木幹夫(72)三菱商事会長
中村邦夫 (70)パナソニック会長
森田富治郎(69)第一生命保険会長
槍田松瑩 (67)三井物産会長
榊原定征 (67)東レ社長
前田晃伸 (65)みずほFG会長
佃和夫 (66)三菱重工業会長
氏家純一 (64)野村HD会長
大橋洋治 (70)全日本空輸会長
岩沙弘道 (68)三井不動産社長
清水正孝 (65)東京電力社長
渡辺捷昭 (68)トヨタ自動車副会長
西田厚聰 (66)東芝会長
宗岡正二 (64)新日本製鉄社長
★川村隆 (70)日立製作所会長
★坂根正弘 (69)コマツ会長
★三浦惺 (66)NTT社長
★中村芳夫 (67)経団連事務総長
◇評議員会議長◇
★渡文明 (73)JXHD相談役
※★は新任。肩書、年齢は27日現在。FGはフィナンシャルグループ、HDはホールディングス。
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■人物略歴
◇よねくら・ひろまさ
1960年東大法学部卒、住友化学工業(現住友化学)入社。海外プロジェクトを数多く手がけ、00~09年の社長在任中はサウジアラビアの現地国営企業と世界最大級の石油精製プラントを建設するなどグローバル化を推進。M&A(企業の合併・買収)にも積極的に取り組んだ。04年に経団連副会長、08年に経団連評議員会議長に就任。財界きっての国際派として知られ、欧米の大手化学トップや中東産油国の政府首脳などに幅広い人脈を築いている。73歳。
毎日新聞 2010年5月28日 東京朝刊