警察庁長官狙撃の捜査結果公表「刑事司法を根底からゆるがす」都に100万円支払い命令 東京地裁

2013-01-16 | 死刑/重刑/生命犯

【アレフ勝訴】「刑事司法を根底からゆるがす」と非難 警察庁長官狙撃の捜査結果公表 都に100万円支払い命じる 東京地裁
2013.1.15 15:23
 公訴時効が成立した平成7年の国松孝次警察庁長官(当時)銃撃事件で、警視庁が「オウム真理教信者による組織的テロ」とする内容の捜査結果を公表したことで名誉を傷付けられたとして、教団主流派「アレフ」が東京都などに5千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、東京地裁であった。石井浩裁判長は結果公表について「重大な違法性を有する行為」と認定。都に100万円の支払いと、アレフに謝罪文を交付することを命じた。
 警視庁は平成22年3月の時効成立を受けた会見で「オウム真理教の信者グループが、教祖の意思の下に、組織的・計画的に敢行したテロであった」と捜査結果を公表。裁判では(1)公表結果は犯人としてオウムを名指ししたといえるか(2)オウム犯人視がアレフの名誉を毀損(きそん)するか-が主な争点となった。
 石井裁判長は「犯人を『オウム真理教』『教団』と直接的に指し示していないが、一般読者はオウム真理教が組織的・計画的に事件を実行したとの印象を受ける」と指摘。アレフの施設建設に伴う住民の反対運動などを挙げ「アレフがオウムと同様の危険性を有する宗教団体と認識されていることは明らか」として、アレフの名誉が毀損されたと結論付けた。
 判決はさらに、不起訴処分とした事件の捜査結果公表について「無罪推定の原則に反するばかりでなく、我が国の刑事司法制度の基本原則を根底からゆるがすもの」と厳しく非難した。
 警視庁訟務課の前田守彦課長は「当方の主張が認められなかったことは残念。判決内容を検討した上で対応を決める」とコメントした。
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【アレフ勝訴】
完全敗北…警視庁OB「意外な判決」 アレフ側は「当たり前のこと」
2013.1.15 19:31
 警察当局にとって、「完全敗訴」というべき判決だった。警察庁長官銃撃事件で「オウム真理教信者による組織的なテロ」との捜査結果を警視庁が公表したことをめぐる名誉毀損(きそん)訴訟で、東京地裁は15日、被告の東京都に100万円の支払いとともに、謝罪文の交付まで命じた。警視庁OBは「意外な判決」と驚く一方、教団主流派「アレフ」側は「(判決は)当たり前のこと」と改めて警視庁側の対応を批判した。(1面参照)
 「司法の原則に沿わなければいけないという判断は理解できなくはないが、意外な判決だとは思う」
 オウム事件の捜査に長年携わってきた警視庁公安部OBは、「アレフ」全面勝訴の判決に驚きを隠さない。
 公安部は当時、公表した捜査結果で、匿名にしつつも元幹部や信者の事件前後の動向を詳細に示した。
 不起訴になった教団関係者を犯人と断定して公表したことは人権侵害に当たるとの指摘には、幹部は「公益性と社会正義との均衡を考慮した。刑事責任を問うことと、捜査結果を分析した結果を国民に報告することとは違う。法的に問題があるとは考えていない」と説明し、正当性を主張していた。
 公安部OBは「犯罪を捜査する司法警察ではなく、公共の安全や秩序の維持を目的とする行政警察の立場でいえば、捜査結果をそのまま放置しておくことはできなかった」と、公益上必要な措置であったことを強調した。
 ある警察庁幹部は、「コメントは控えたい」としつつも、「この1審判決は厳粛に受け止める。今後の対応は警視庁が検討することと思う」と述べた。
 一方、アレフの荒木浩広報部長は判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見。「正当な判決だが、よく考えれば当たり前のことを言っているだけだ」と、改めて警視庁への憤りをあらわにした。
 荒木氏は捜査結果公表について「全く違法なものであることは、刑事訴訟法の教科書を見れば明らか。真摯(しんし)に反省すべきだ」と強調。「間違っても控訴するようなことがあってはならない」として、警視庁に判決を受け入れるよう求めた。
 判決は、東京都知事名で「アレフに深謝します」とする謝罪文をアレフ側に交付するよう命じた。アレフ代理人の内藤隆弁護士は「ここまで判決が言い切るのは、非常に厳しい見方といえる。アレフの完全な勝訴で、逆に言えば警視庁の全面敗北だ」と指摘。「警視庁にとってははらわたが煮えくりかえる謝罪文だろうが、それだけのことをしたということ」と非難した。
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【アレフ勝訴】「公平な公表の検討を」渡辺修教授
2013.1.15 19:26
 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)の話「捜査結果の公表には、見込み捜査を真実と発表することで自白を強要し、冤罪(えんざい)を生んできた警察の体質が再び露呈しており、強く批判した判決は正当だ。捜査の失敗を覆い隠すために世論操作しようとしたのは明白で、『疑わしきは被告人の利益に』という刑事手続きの原則、容疑者の名誉侵害を禁ずる刑事訴訟法の原則を無視した典型的な形といえる。ほかの事件についても、捜査情報の公平かつ公正な公表のあり方を第三者もまじえ、検討すべきだろう」
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