広島女児殺害 最高裁=当事者が立証しようとしていない点まで立証を促す義務はない

2009-10-16 | 死刑/重刑/生命犯

【広島女児殺害】高裁で改めて量刑など判断 最高裁が差し戻し
産経ニュース2009.10.16 18:12
 広島市で平成17年、小学1年の木下あいりちゃん=当時(7)=を殺害したとして、殺人や強制わいせつ致死などの罪に問われたペルー人、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(37)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は16日、2審広島高裁判決を破棄、審理を高裁に差し戻した。差し戻し控訴審の場で、改めて量刑などが審理される。
 1審広島地裁は検察側の死刑求刑に対し、無期懲役を選択。高裁は犯行場所が特定できる可能性のある被告の供述調書を地裁が証拠として調べなかった点などについて、「審理が不十分で、裁判の手続きに法令違反がある」として、地裁に審理を差し戻したため、弁護側が上告していた。
 また、地裁が裁判員裁判を想定し、争点と証拠を絞り込んで速やかな審理を目指す「公判前整理手続き」を取り入れて、集中審理を実施したことについても、高裁は「裁判の予定を優先するあまり、争点をはっきりさせないまま公判前整理手続きを終えたことは、その目的に反する」などと非難していた。
 同小法廷は「公判前整理手続きなどが導入されて以来、合理的期間内に充実した審理を終えることがこれまで以上に強く求められる」と述べた。その上で、当事者が立証しようとしていない点まで、説明を求めて立証を促す義務はないなどとして、1審の手続きは適法と結論づけた。
 判決後に会見したあいりちゃんの父、建一さん(42)は「まだ裁判が続くと思うと、辛い。早く終わらせてもらいたい。
..................................................
<広島女児殺害>2審判決破棄、高裁に差し戻し 最高裁
10月16日15時30分配信 毎日新聞
 広島市で05年、小学1年の木下あいりちゃん(当時7歳)を殺害したとして、殺人罪などに問われたペルー国籍の無職、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(37)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は16日、無期懲役の1審判決を破棄して審理を差し戻すとした2審・広島高裁判決(08年12月)を改めて破棄し、高裁に差し戻した。
 ◇「地裁の訴訟手続きに違法はない」
 1審・広島地裁の審理は、05年導入の公判前整理手続きなど迅速化が図られた刑事裁判制度で行われた。小法廷は「合理的期間内に充実した審理で真相解明できるよう、当事者の主張を踏まえ必要な立証が的確になされるようにすべきだ」との考え方を初提示。その上で「地裁の訴訟手続きに違法はない」と判断し、違法性を指摘した2審判決を覆した。差し戻し後の高裁は、事実関係を巡る争いや量刑などについて判断することになる。
 1審では現場が被告の自室内か屋外かが争われ、検察側は被告の供述調書の証拠調べを求め、調書に室内での殺害を意味する記載があると被告人質問で発言したが、地裁は「任意性を立証してまで調べる必要はない」と却下。現場も「被告のアパート及びその付近」とした。高裁は「現場を特定できた可能性があり、却下は不可解」と指摘した。
 小法廷は、検察側が調書の証拠調べ請求の目的を「殺意や責任能力の立証」とし、「現場の立証」としなかった点などを踏まえ、「被告人質問の内容にまで着目し、調書の内容やその証明力を推測して、任意性を立証する機会を与えるなどの措置をとるべき義務はない」と判断し、「2審は訴訟指揮の解釈適用を誤っている」と結論付けた。【銭場裕司】
 ◇主張立証に万全期したい
 ▽池上政幸・最高検公判部長の話 判決の内容を十分検討した上、それを踏まえて差し戻し審での主張立証に万全を期したい。
 ◇破棄は評価したい
 ▽弁護団の井上明彦弁護士の話 破棄は評価したい。当事者主義という当たり前のことを当たり前に言ってくれたことの意義は軽くない。高裁判決のおかしさが証明された。ただ、ペルーでの前歴などについても判断を示してもらいたかった。
 【ことば】▽広島小1女児殺害事件▽ 05年11月22日、木下あいりちゃんの遺体が、広島市安芸区の空き地で段ボールに入れられた状態で発見された。広島県警は同30日にヤギ被告を逮捕。ヤギ被告は、広島市の自宅アパート前で帰宅途中のあいりちゃんに声をかけ、性的暴行を加え、首を絞めて殺害したとして、殺人、強制わいせつ致死罪などで起訴された。1審では公判前整理手続きが実施され、初公判から2カ月足らずで判決が出された。
--------------------------------------------------
あいりちゃん事件差し戻し 高裁で量刑判断、厳正に
中国新聞 '09/10/18
 国民参加の裁判員裁判をしっかり定着させたい―。木下あいりちゃん事件で、広島高裁への差し戻しを命じた一昨日の判決からは、最高裁のそんな思いが伝わってきた。
 殺人や強制わいせつ致死などの罪に問われたペルー国籍のホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告の上告審では、無期懲役の一審判決への判断を示さないまま審理不十分として差し戻した二審判決の適否が問われた。
 一審の広島地裁が公判前整理手続きに含まれなかった調書の証拠調べをしていなかったことなどを理由に、二審が審理のやり直しを求めていたからだ。
 最高裁判決は二審判決を破棄し、証拠と争点を絞り込む公判前整理手続きの趣旨を踏まえ「合理的期間内に充実した審理を終えることが、これまで以上に求められる」と新しい刑事裁判のあるべき姿を確認した。
 そのうえで検察側が立証の必要を認めなかった事項にまで裁判官が介入するのは、検察側、弁護側という当事者の主張に沿った審理の「当事者主義」に照らして問題がある、とした。最高裁の指摘が法曹関係者から評価されたのは、うなずける。
 ただ、裁判を分かりやすくし、迅速化を促すための公判前整理手続きそのものが問題視され、逆に複雑、長期化したのは残念だ。
 それでも証拠の採否が「事実審裁判所の合理的裁量」に委ねられるとする今回の最高裁判断によって、一審の重みは格段に増す。国民が参加できる裁判員裁判も一審だけだ。ここでの事実審理をできるだけ尊重する。この心構えを裁判関係者が広く共有できれば、遠回りに映った一連の審理に意義も見いだせる。
 差し戻し控訴審では、被告の罪を裁く本来の目的に照らして、一審判決の無期懲役の是非があらためて争点となる。
 「裁判が続くと事件を思い出さなければならず、非常につらい」と父建一さん。幼い子どもが犠牲になる事件が後を絶たない中、遺族をはじめ少なからぬ世論が凶行の再発を防ぐためにもと、極刑を望むのは無理もなかろう。
 これまでの凶悪犯罪では、殺害被害者数や犯行の動機、被告の犯行経歴といった基準が「死刑か無期懲役か」の量刑判断を分けてきた。それだけで十分かどうか、との議論もある。審理を尽くし、厳正な判断を下してもらいたい。
--------------------------------------------------
【広島女児殺害】 精密司法から核心司法へ
光市母子殺害事件(差戻し)・広島女児殺害事件控訴審裁判長だった楢崎康英氏が山口家裁所長・・・

広島女児殺害事件「最高裁」上告申立て受理。 接見拒否をめぐる損害賠償請求訴訟「広島高裁」控訴棄却 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。