海自イージス艦「あたご」無罪/地検は有罪ゲームに勝つだけの組織なのか

2011-05-12 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

「あたご」無罪 ずさんな捜査を批判
中日新聞 社説2011年5月12日
 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船が衝突した事故の裁判で、あたごの元航海長ら二人が無罪となった。検察が描く漁船の航跡図そのものを否定した。ずさんな捜査が批判されたといえる。
 事故が起きたのは、二〇〇八年二月の房総半島沖だった。午前四時ごろは、月も出て、視認状況は良好で、波や風も潮流も穏やかだった。なぜ、そんな海で巨大なイージス艦と衝突したのか。
 最大のポイントは、漁船「清徳丸」がどのような航跡をたどっていたかだ。漁船の測位システムの記録は失われ、乗っていた親子は後に死亡認定された。客観的な証拠がないため、僚船の乗組員らの目撃証言などから推定するほかはなかった。
 ところが、横浜地裁の公判で、僚船船長の供述調書が大きく揺らいだ。調書には清徳丸が「自船の左前7度の角度、三マイルを航行」などと角度や距離が詳細に書かれていたが、船長は「この辺と言っただけ」と法廷で証言した。検察側が作成した清徳丸の航跡図も、この調書ができあがる前に既に作られていたことも分かった。
 検察が立証の柱とした航跡図のほころびが、公判段階で浮かんでいたわけだ。判決が「(検察が先に作成していた)航跡に沿うようにするため、恣意(しい)的に船長らの供述を用いた」と検察側を厳しく指弾したのは当然だ。
 海難審判では「あたごに回避義務があった」と認定したのに対し、判決は「清徳丸に回避義務があった」と正反対の結論になった。それは清徳丸が直進すれば、あたごの艦尾から数百メートルを航行したはずが、衝突前の三分前に清徳丸が右転し、衝突の危険が生じたと、裁判所が判断したためだ。
 原因究明と再発防止に主眼がある海難審判と異なり、刑事裁判では個人の刑事責任が問われる。一般的に立証のハードルは高いといわれる。検察側の立証に対して、判決は「航跡の特定方法に看過しがたい問題点がある。証拠の評価を誤った」とも言及した。
 そもそも「起訴ありき」の捜査ではなかったかという疑問も湧く。無罪となった被告は「地検は有罪ゲームに勝つだけの組織なのか」と訴えた。捜査の在り方をもう一度、点検してみる必要があろう。
 回避義務がなかったとはいえ、あたご側の動静監視が十分だったとはいえまい。二度と悲惨な事故を起こさぬよう海自側にも再点検が求められる。
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海自イージス艦事故無罪判決:遺族「納得いかぬ」、ぼうぜん、憤り、涙
神奈川新聞2011年5月12日
 判決主文が読み上げられると、傍聴席にどよめきが広がった。「何を言っているんだ」。亡くなった清徳丸船長・吉清治夫さんの弟の美津男さん(60)は、ぼうぜんと裁判長の顔を見つめた。事故から約3年3カ月。今でも2人のことを思うと、満足に眠れない時がある。「ふざけてる」。退廷する裁判長に、声を投げ掛けた。
 「清徳丸は大幅に右転してあたごと衝突する危険のある針路となり、一切の回避行為をとることなく衝突した」と判決が認定したことが信じられなかった。
 閉廷後の会見で、美津男さんは「納得いきません。うちの兄貴はそういう…」としばし言葉を継げず、ほおを伝う涙をぬぐった。震える声で続けた。「兄貴はそういうことをする男じゃない。あたごにぶつかっていくような男じゃないんです。兄貴にも過失があるとは思います。でも、無罪はないでしょう。死人に口なしですか? かわいそうですよ」。海に消えた兄と、その息子。死んだのは誰のせいなのか、ぶつける先が見つけられない憤りがその口調に表れていた。
 「2人の墓前に何と報告すればいいのか」。治夫さんのおいの祥章さん(21)も判決への戸惑いを口にした。治夫さんの息子の哲大さんには、子どものころからかわいがられてきた。事故後、2人が使っていた車の中にあったお金を形見代わりに、自分の交通安全のお守りの中に入れている。「裁判長が言う『あたごの警笛』を聞いた人はいるのか。疑問を感じる」と不信感をあらわにした。
 今回の判決は、海難審判の裁決と逆の結果となっただけに、漁業関係者らも戸惑いが隠せない。新勝浦市漁業協同組合の外記栄太郎前組合長(83)は「海難審判は『双方とも見張り不十分』との中で裁決が出て、漁師の考える枠での判断だったが、今回、2被告は無罪。どうして海難審判所と横浜地裁で判断が大きく食い違ったのか」と疑問を投げ掛けた。
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〈来栖の独白〉
 横浜地裁 秋山敬裁判長に、心から敬意を表したい。
 公判では“僚船船長の供述調書が大きく揺らいだ。調書には清徳丸が「自船の左前7度の角度、三マイルを航行」などと角度や距離が詳細に書かれていたが、船長は「この辺と言っただけ」と法廷で証言した。検察側が作成した清徳丸の航跡図も、この調書ができあがる前に既に作られていたことも分かった。”という。なんということだろう。
 現在東京地裁で審理が進められている陸山会事件も、如何にも杜撰な検察の手法が窺われ、作られたストーリーとの感を否めない。証人が具体的に述べれば述べるほど、「造られた」胡散臭さが漂う。
 もう、やめて戴きたい。でっち上げによるシナリオ造りは。裁判所の判断は真実を追究、認定するものであり、遺族の感情とは別だ。
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