長引く経済制裁にコロナ禍、台風被害…北朝鮮を襲う「三重苦」 2020/10/10

2020-10-15 | 国際/中国/アジア

長引く経済制裁にコロナ禍、台風被害…北朝鮮を襲う「三重苦」 住民生活に深刻な打撃
 東京新聞2020年10月14日 09時34分
 北朝鮮は10日、支配政党である朝鮮労働党の創建75年を、新兵器が続々と登場する軍事パレードの挙行などで盛大に祝賀、国威発揚を図った。だが、長引く経済制裁に新型コロナウイルスや台風被害が重なった「三重苦」で、経済や住民生活への打撃は深刻化している。来年1月に党大会を開き、新たな「国家経済発展5カ年計画」を発表する方針だが、逼迫した窮状を克服するのは至難だ。 (編集委員・城内康伸) 
 金正恩党委員長は10日未明に演説し、「いまだ努力と真心が不足し、人民が生活上の困難から抜け出せずにいる」と国内経済が直面する苦境を吐露し、反省の弁を語った。 
 正恩氏は2016年5月に開催した36年ぶりの党大会で、20年までの「国家経済発展5カ年戦略」を提示。共同通信の報道によると、毎年平均8%という高い経済成長率を目標に設定していた。

 

 しかし、核・ミサイル開発に対する国連安全保障理事会の決議による経済制裁で、外貨収入は激減。韓国銀行の推計では17年の経済成長率は前年比マイナス3・5%、18年はマイナス4・1%だった。19年にはプラスに転じたものの0・4%の微増にとどまった。 
 米国との非核化交渉は停滞し、制裁解除は遠のいたまま。そこに新型コロナウイルス感染防止のため1月末に国境を封鎖したことにより、海外からの物資調達がさらに困難に。貿易額の9割を占める中国との1~8月の貿易総額は前年同期比で7割も減った。

   
 9月上旬、北朝鮮両江道恵山市のチャンマダン(自由市場)の路上で、商品を売るマスク姿の市民ら(右)=共同

 「生活物資が中国から入ってこなくなり、物価が高騰している。靴や衣服をはじめとする生活必需品の不足が目立つ」。北朝鮮内部に情報源を持つ石丸次郎アジアプレス大阪事務所代表は、庶民が利用するチャンマダン(自由市場)が「大不振に陥っている」と指摘する。 
 「当局は2月末からインフレ抑制のため価格統制を始めた。上限価格を超えると物品を没収。市場で取引する人々の不満が高まっている」(石丸氏)。石丸氏によると、貧しさで都市生活ができなくなった人々の中には、家財道具などを売り払い、山間部に移住するケースまで発生しているそうだ。 
 さらに8~9月に相次いだ豪雨や台風の被害が追い打ちをかけた。韓国統一省によると、被害を受けた北朝鮮の農地は約3万9000ヘクタールで、金正恩政権発足以来最大の被害とされてきた16年の台風被害の4倍。住宅の倒壊や鉄道・道路の寸断も深刻のようだ。統一省当局者は「食料事情が悪化する可能性がある」と分析する。

 
 北朝鮮の黄海北道銀波郡で水害からの復旧作業を視察する金正恩朝鮮労働党委員長(左)。朝鮮中央通信が9月12日に報道=共同

 北朝鮮メディアは正恩氏が被災地をたびたび視察して、復旧状況に満足の意を示したことを伝える。しかし、石丸氏は「復旧が進むのは正恩氏の訪問地。多くの被災地は資材も不足しており、手も付けられない状況が続く」と話す。 
 米国の民間格付け会社は8月、北朝鮮の今年の経済成長率がマイナス8・5%になるとの見通しを明らかにした。現実のものとなれば、「苦難の行軍」と呼ばれた経済難で6・5%減だった1997年をしのぐ最悪の事態だ。 
 北朝鮮は今月5日の党政治局会議で、年末にかけて生産活動に国民を総動員する「80日戦闘」を宣布した。中朝貿易業者は「戦闘に駆り出される住民の多くは、悲鳴を上げているはずだ」と推し量る。

 ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です


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