安倍首相「一帯一路の件は、リップサービスをしているだけだ。中国にカネをやるわけでも出すわけでもない」

2018-10-25 | 国際/中国/アジア

一帯一路で急接近、日本人が知るべき中国の思惑
2018/10/23(火) 7:06配信 
 読売新聞(ヨミウリオンライン)
 日中平和友好条約発効40周年の今年、中国の日本に対する柔軟姿勢が目立つ。今月25日には安倍首相が北京を公式訪問し、翌日、習近平・国家主席らと会談する予定だ。中国に向き合っていく上で、欠かすことのできない視点は何か。元海上自衛隊司令官で、安全保障問題が専門の香田洋二さんが解説する。

  
  写真;東方経済フォーラムの全体会合で握手を交わす安倍首相(左)と習近平国家主席(今年9月、ロシア・ウラジオストックで)
◆失速する巨大経済圏構想
 中国の巨大経済圏構想「一帯一路」における多数の途上国のインフラ整備計画のいくつかが挫折し、一部の参加国は中国に疑念を持ち始めるとともに、対中債務に起因する自国社会・経済の崩壊が現実のものとなってきた。一帯一路構想は、中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)とセットで中国の国家威信をかけて推進されてきたが、この5年の経緯を振り返れば、参加国、周辺国そして国際社会に不安と混乱をもたらした面が強い。
  ジャーナリストの福島香織氏が論評しているように、中国にとって本構想は、(1)先進諸国からの新植民地主義との非難、(2)途上国からの悪徳金融業者に例えられる遺恨、そして、(3)中国の銀行や企業の利益回収の見込みがない投資の継続と債務不履行の恐怖、という三重苦の提供元、本音は「厄介者」になりつつあると推察される。
 中国指導層も「現下の好ましくない事案の連鎖反応」は承知していると考えられるが、昨年秋に一帯一路構想を党規約にまで盛り込んだ中国共産党と習近平国家主席(党総書記)が、自らの威信を犠牲にしてまで、現在の路線を変更する公算は皆無と言える。その上、現在の米国との厳しい経済と貿易の対立は解決策さえ見いだせないことも影響し、中国経済の将来に暗雲が漂い始めたことは明白である。オウンゴールとも言える一帯一路構想の失速と、米中の厳しい経済対立がもたらす中国経済へのストレスは、中国を抜き差しならない窮地に陥れさせ始めている。最悪の場合、トランプ米政権は、中国経済を再起不能になるまで追い詰める公算さえ否定できない現状である。
◆米国を孤立させ、覇権狙う
 一帯一路構想が行き詰まり、米中貿易摩擦に苦しみ、その影響で人民元が急落する中で中国が起死回生の望みをかけた国が、日本である。それを裏付けるかのように、昨今の日中関係の改善は目覚ましく、両国とも具体的な協力策を模索している。その線上で安倍首相は「今年5月の李克強首相の来日により、日中関係は完全に正常な軌道に戻った」とまで述べている。今月の安倍首相の訪中とあわせ、経済界から大型代表団も訪中するとのことであり、その一部からは我が国企業の一帯一路構想への参画とビジネスチャンス獲得への期待が早くも漏れ聞こえてくる。
  仮に、我が国政府が一帯一路構想への参画を決定するとすれば、それは、瀕死とは言わないまでも、三重苦に苦しみ急速に症状の悪化が進んでいる中国自身及び一帯一路双方の窮状を救うカンフル剤になることは確実である。更に「清廉潔白」な我が国の一帯一路構想への参画が、急速に広がった同構想に対する国際社会の不信感の緩和に大きく貢献する公算は大きい。
  そのような現状の下で我々が認識すべきは、中国が中華思想の下で「中華民族の偉大な復興」を実現するための手段が一帯一路構想であるという現実であり、その結果、生ずる関係国の債務超過による従属国家化などは意に介さないことも明白である。さらに、開発途上国に対する債務によるコントロールに加え、世界規模の一大経済圏を構築することにより、米国と張り合える経済力を獲得して米国と欧州の分断を図り、米国を孤立させて中国が世界の覇者となる有力な手段が一帯一路構想であることも忘れてはならない。
◆「急場しのぎに日本を利用」が本音か
 中国の一帯一路とは全く異なる、自由と民主主義を共通の価値観とする米国、豪州、インドに代表される国々と手を携え、アジア諸国と共に「自由で開かれたインド太平洋」の構築を目指す我が国は、近視眼的な経済上の利益にのみ目を奪われ、国家の本質と目的が水と油以上に異なる中国、特にその一帯一路構想に肩入れすることは,国家百年の計において取り返しのつかない禍根を残すこととなる。同様に米国は、一連の貿易問題を通して明らかになった中国固有の異質性を強く認識したからこそ、先日のペンス副大統領の演説に代表される、妥協のない新たな対中政策を発表したものと考えられる。
  中国の対日接近は、長年の日中対立案件の基本まで立ち返った中国の我が国に対する厳しい立場、つまり、歴史認識や尖閣諸島領有に関わる一方的な主張を根本から変更するものではないことは明白である。それは、中国が陥っている現下の政治と経済の窮状から抜け出るために最も効果的な切り札としての日本を、便宜的かつ一時的に使うことを狙ったもの以外の何物でもない。
  最後に、最近筆者が参加した国際会議における経験を紹介すると、ある中国人パネリストは、「中国は一帯一路構想において何ら困っていない。但(ただ)し、日本が構想に参画を希望するのであれば一切拒まない。それは『アベノミクス』の失敗で低迷し、苦しむ日本経済を救済するビジネスチャンスを日本に与える中国の親心と思いやりである」という趣旨の発言をした。「何をかいわんや」であるが、ここに中国の本音が垣間見えるとともに、これが極めて正直な中国の思惑の表れであろう。
 . 元海上自衛隊自衛艦隊司令官 香田洋二
 最終更新:10/23(火) 7:06 読売新聞(ヨミウリオンライン)

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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【阿比留瑠比の極言御免】中国には譲歩しないことが肝心
2018.10.25 01:00 阿比留瑠比の極言御免

   
  写真:9月12日の会談で、笑顔で握手を交わす中国の習近平国家主席(右)と安倍首相=ロシア・ウラジオストク(共同) 
 「日中外交というのはある意味、日本外交の(あり方の)一つの象徴でもあったのだろう」
 安倍晋三首相はかつて、こう語っていた。昭和47年の日中国交正常化以来、日本外交は「日中友好至上主義」に自縄自縛(じじょうじばく)となり、友好に反することは全否定する空気に支配されてきた。首相は、国益を確保する「手段」であるはずの友好が、いつの間にか「目的」となった倒錯を指摘し、さらに付け加えた。
 「友好に反することは何かを誰が決めるかというと、中国側が専ら決める」
 首相がこれまでの対中外交で実行してきたことは、こんな旧弊を打ち切ることではなかったか。
 振り返れば平成24年12月に第2次安倍政権が発足した当時、日本と中国の関係は最悪となっていた。野田佳彦内閣による尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化がきっかけで、完全に膠着(こうちゃく)状態に陥っていた。
 中国は日本を軽視する一方で、旧日本軍をナチス・ドイツに重ね、首相を危険な軍国主義者だと喧伝(けんでん)する宣伝工作を続けていた。
 首相との首脳会談も拒否し、会談に応じる条件として首相の靖国神社不参拝の確約や、尖閣諸島の領有権問題の存在確認など無理筋な要求を突きつけていた。
■挑発乗らず冷静対応
 それが26年11月には、首相と習近平国家主席による日中首脳会談が実現する。この時の習氏は仏頂面で笑顔はなかったが、今年9月の会談では満面の笑みを浮かべる豹変(ひょうへん)ぶりである。
 この間、日本は中国の要求には一切応じず、友好を請うような言動も取らなかった。何ら譲歩しなかったにもかかわらず、である。
 理由はいくつも挙げられる。首相自身が展開した自由や民主主義、法の支配を訴える「価値観外交」が少しずつ中国を追い詰め、包囲網を築いていったことや、中国の軍事的膨張主義が国際社会で広く認知されたことも一因だろう。
 新疆(しんきょう)ウイグル自治区でのイスラム教徒弾圧が欧米から非難を浴びたことや、米国との貿易戦争で打つ手がない中国が、活路を日本に求め始めたという事情も、もちろん大きい。中国共産党にとって死活問題である経済成長には、日本の協力が必要との判断もあろう。
 ただ、何より重要なことは安倍政権が中国の揺さぶりに動じず妥協せず、挑発にも冷静に対応したことではないか。習政権は日本と対決路線を取っても得るものはなく、損をするだけだと思い知ったのである。
 最近では逆に、安倍政権側も中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への協力など、中国との接近に前のめりになっているのではないかとの見方も出ている。だが、首相は周囲にこんな本音を漏らしている。
 「別にこちらが前のめりということではない。一帯一路の件は、リップサービスをしているだけだ。中国にカネをやるわけでも出すわけでもない
■パンダ頼みたくない
 首相が日中首脳会談で、新たなジャイアントパンダの貸与を求めるとの観測についても突き放す。
 「パンダの件は地方自治体の要請で外務省が勝手に進めていることで、私は知らなかった。そんなこと頼みたくもない
 首相は今回の訪中に合わせて対中政府開発援助(ODA)の終了を決めるなど、姿勢は全くぶれていない。むしろ懸念されるのは政界、経済界の今後だろう。中国の友好ムード演出に浮かれてこちらからもすり寄るようだと、利用されるだけされてはしごを外される。歴史の教訓である。(論説委員兼政治部編集委員)

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *強調(=太字)は来栖
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中国はなぜいま少数民族の弾圧を加速させるか──ウイグル強制収容所を法的に認めた意味 六辻彰二 2018/10/16
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