差し戻し控訴審判決2008/4/22を前に…【4度目の判決 光市事件が問うたもの(下)】公平さ欠いた裁判報道

2008-04-19 | 光市母子殺害事件

産経ニュース【4度目の判決 光市事件が問うたもの(下)】公平さ欠いた裁判報道
 日曜の昼下がり、読売テレビ系で放映された番組「たかじんのそこまで言って委員会」。弁護士、橋下徹の発言が前代未聞の事態を引き起こした。山口県光市の母子殺害事件の差し戻し控訴審が始まって3日後の平成19年5月27日のことだ。
 「全国の人、あの弁護団を許せないと思うんだったら、弁護士会に懲戒請求をかけてもらいたいんですよ。10万人とか、この番組を見てる人が一斉にかけてくださったら、弁護士会も処分を出さないわけにはいかないですよ」 
 他のコメンテーターから弁護方針を批判する発言が相次いだ後、橋下が弁護団のメンバーへの懲戒請求を視聴者に呼びかけたのだ。
 発言の直後から、インターネット上には氏名を書き込めば提出できる請求用書面の見本まで登場。日本弁護士連合会によると、弁護士への懲戒請求は18年の1367件が最多だったが、弁護団のメンバーへの請求は昨年末時点でその6倍の8095件に上った。
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 だが、光市事件で弁護人への批判が高まったのは、これが初めてではない。きっかけは18年3月、弁護人が最高裁の弁論を欠席したことだ。弁論は当日になって延期され、傍聴のため上京していた遺族の本村洋(32)は記者会見で「裁判を遅延させるための欠席。これほどの屈辱を受けたのは今回が初めてだ」と憤った。
 その後、差し戻し控訴審へ向けて21人からなる弁護団が結成。これまでの判決が認定した犯罪事実を全面的に争ったことがさらなる反発を招き、メンバーへの脅迫も相次いだ。
 こうした経緯について弁護団は「認定事実は客観的証拠とも一致しない。これまでの裁判では、十分な審理が行われてこなかった」と説明する。だが、その説明が広く理解されたとは言い難い。
 弁護団の一人は「守秘義務もあり、情報発信が限られる面は否めないが、記者会見を開いても十分に報じられなかった」と話す。
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 「(テレビの収録)スタジオが裁判所に、お茶の間が裁判所になっている」
 今年3月15日、東京・四谷で集会が開かれた。主催したのは大学教授らでつくる「『光市事件』報道を検証する会」。“橋下発言”を含む光市事件を報じたテレビ番組が一方的な弁護士批判や事実誤認、歪曲(わいきよく)により視聴者に誤解を与えたとして、放送・倫理番組向上機構(BPO)に審理を申し立てた団体だ。
 裁判員制度を間近に控え、刑事裁判への関心が高まること自体は問題ではない。だが、その関心の前提となる報道内容に問題があったとしたら-。同様の問題提起は、法曹界からも行われている。最高裁刑事局総括参事官の平木正洋は昨年9月、「裁判員への予断や偏見を与える」と現在の事件・裁判報道への懸念を示した。
 「検証する会」の申し立てを受けたBPOの放送倫理検証委員会は15日、「『被告・弁護団』対『被害者遺族』という対立構図を描き、前者の荒唐無(む)稽(けい)さに反発し後者に共感する極めて感情的な番組制作が行われていた。公平性に欠き、広範な視聴者の知る権利に応えなかった」との意見書を発表した。委員の一人である立教大学教授(メディア法)の服部孝章はこう危惧(きぐ)している。
 「こうした報道は現状でも大いに問題だが、裁判員制度が1年後には始まる。このままでは報道が規制される事態にもつながりかねない」
(敬称略、連載は福富正大が担当しました)
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