「東京新聞は護憲ですが、私は違います」 記者が社説と異なる主張をする自由こそ、ジャーナリズムの基本だ

2013-02-01 | メディア/ジャーナリズム/インターネット

「東京新聞は護憲ですが、私は違います」 記者が社説と異なる主張をする自由こそ、ジャーナリズムの基本だ
現代ビジネス「ニュースの深層」2013年02月01日(金)長谷川 幸洋
 このコラムは「ニュースの深層」というタイトルが付いている。だから、普通は日々のニュースについて裏側とか背景事情とか、私の見方を書くことになる。今回はちょっと趣向を変えて、私の立ち位置について書いてみたい。
 私は「完全に中立な立場からの報道」というのはない、と思っている。同じテーマを報じていても、報じる側、つまり記者によって事実の解釈も分析の角度、深さも異なる。それは当然だ。記者によって経験も力量も、そもそも取材源だって異なるからだ。言い換えれば、ニュースにはみんな「記者の色」が付いている。
 だから「ニュースの深層」というとき、報じられる側、つまり取材対象である官僚とか政治家の事情や思惑に目を凝らして、そこを深く掘り下げるという作業と同時に、実は報じる側、つまり記者の事情を紹介するのも大事な作業になる。取材対象と記者の双方に目を配って互いの事情と思惑、それらの交錯のありようをよく考えてみる。そういう双方向の作業が重要になる。
 そういう考えから、ここ数年、私は政治や報道を観察するとき、同時に記者の側も観察してきた。たとえば『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社、2009年)はそういう仕事だ。1月に上梓した『政府はこうして国民を騙す』(同)は当コラムの連載が柱になっているが、同じように記者の側にも視線を向けている。
■自分の意見が社説と異なる場合があるのは当然
 そこで報じる側の1人である私自身について書く。
 私はジャーナリストが本業と思っている。東京新聞論説副主幹という仕事もあるが、それは私の仕事の一部だ。それ以外に当コラムも書いているし『週刊ポスト』にも連載コラムを書いている。ときどきテレビやラジオでも発言する。本も出す。それら全体が私の仕事である。東京新聞はそんな私の立場を容認している。
 そういう中で、私の署名がないのは東京新聞と中日新聞に書く社説だけだ。それは文字通り「社の説」という建前になっているからだ。社説は私だけが執筆しているわけではない。私と違う意見を持つ論説委員が書く場合があり、むしろ私以外が書く場合がほとんどである。
 そういう事情だから、東京新聞の社説と私の意見は異なる場合がある。最近でいえば、憲法改正問題だ。
 東京新聞は基本的に護憲の立場に立っている。しかし、私は改憲に賛成である。この点は社内でもかねて明言していたが、社外に向けて公言したのは、1月26日未明に放送されたテレビ朝日系列『朝まで生テレビ!』の番組中が初めてだった。同日朝のBS朝日系列『激論!クロスファイア』でも、同じく改憲の立場で発言した。
 その際、視聴者の誤解を招かないように「東京新聞は護憲ですけど、私は違います」と東京新聞の立場についても注釈を加えた。中には「論説副主幹という立場で社説と違う意見を言っていいのか」という向きもあるかもしれない。実際、社内にもそういう意見がある。
 だが、私は論説副主幹だろうがヒラの論説委員だろうが、自分の意見が社説と異なる場合があるのは当然だと思っている。社説というのは論説委員の集団討議で決まっている。なかなか意見を集約しきれなければ、最終的には論説主幹がまとめる。結論が出たからといって、論説委員がみんな、その結論に同意しなければならない理屈はない。
 社説は社説として発表し、一方、論説委員の意見は意見として尊重する。それが言論の自由というものではないか。私はそう思っている。だから、私は同僚論説委員が私と違う意見を唱えて社説に書こうとしても、ただの一度も反対したことはない。私の意見は言うが、最終的には書き手の意見を最大限に尊重している。私が目を通したうえで、実は私とは違う意見の社説が掲載されたことは、それこそ無数にある。
 その逆もある。私は社説が護憲を唱えているからといって、自分の意見を変えるつもりはまったくない。改憲についてはテレビで公言したし、いまもそう書いている。「社説がこうだから、私の意見もこうだ」などということになったら、どうなるのか。単なる迎合ではないか。そんなことで、言論の自由が守れるはずがないのだ。
■記者が独立して自由に書くのがジャーナリズムの基本
 この問題については、先の『政府はこうして国民を騙す』の冒頭でも、こう書いた。
〈 念のために言えば、私が署名入りで書いた記事やテレビ、ラジオでの発言はすべて私個人の意見だ。東京新聞・中日新聞の主張ではない。私は東京新聞を代表して発言しているわけでもない。
 ときどき私の意見が東京新聞の主張であるかのように受け止める読者もいるが、それはまったくの誤解である。私の意見が両紙の社説と同じ場合もあるし、異なる場合もある。複数の論説委員たちによる議論の末に決まる社説の内容がいつも私の意見と同じだったら、むしろ、そのほうがおかしいだろう。 〉
 なぜ、こういう話を書いているかといえば、言論とか議論といった民主主義の根幹にかかわる問題について、この国ではどうもタブーがありすぎて自由闊達さが失われていると思うからだ。「みんながこう言っているから、私もそう言う」みたいな大勢に従う姿勢があまりに染みついている。そんなことで本当の議論は成立しない。独創的な発想も生まれない。
 これはメディアやジャーナリズムの世界だけの話でもない。どこかの会社にも「上がこう言っているから、とりあえず従っておこう」みたいな話はごろごろしているのではないか。そんなヒラメ集団では、新たなビジネスの挑戦はできない。真に自由な議論とか独創的なアイデアは周囲の様子をうかがいながら発言するような人からは、けっして出てこないのだ。
 新聞の読者や視聴者からの反応を見ていると「東京新聞の立場と違うなら、会社を辞めるべきだ」などというご意見もある。そういう考え方もあるかもしれない。しかし私は違う。それは「記者はみんな会社人間になるべきだ」と言っているようなものだ。そういう新聞だったら、私はぞっとする。
 幸い、東京新聞はそうではない。その証拠に私はテレビで改憲の立場を公言しても、まだこうして東京新聞論説副主幹の職にある。1人1人の記者が完全に独立して自由に記事を書く。ジャーナリズムはそれが基本だ。そういうメディアが大切である。
 なぜ憲法改正に賛成かについては、テレビで触れたが、いずれ機会を見て書くことにしよう。


アルジェリア人質事件と自衛隊法改正  中日新聞 【核心】  
 自衛隊法 便乗で改正? アルジェリア人質事件
 中日新聞 【核心】2013/01/26
 日本人十人の犠牲が確認されたアルジェリア人質事件を受け、政府・与党は、邦人保護のため海外での武器使用基準を緩和するなどの自衛隊法改正や国家安全保障会議(日本版NSC)設置などを目指そうとしている。浮上している案は、自衛隊法改正を筆頭に、タカ派とされる安倍政権がもともと公約として実現をさせようとしていたものが多い。事件に「便乗」して世論を誘導しようという思惑も透けて見える。(政治部・金杉貴雄)
邦人保護に「陸上活動必要」 武器使用緩和 目的の恐れ
■非現実的
 「海外の最前線で活躍する企業・邦人の安全を守るため、必要な対策に政府一丸で迅速に取り組んで欲しい」。安倍晋三首相は二十五日、事件対策本部で、事件の検証と対応策の検討を指示した。
 事件発生後、政府・与党から「課題」として真っ先に声が上がったのは「邦人保護、救出」をできるようにするという自衛隊法改正だ。
 現在の自衛隊法では海外での災害、騒乱などの緊急事態の際、邦人を航空機や艦船での輸送はできるとしているが、陸上輸送の規定はない。陸上輸送を可能にし、そのために海外での武器使用制限を緩和する法改正を検討すべきというのが、改正を求める代表的な意見だ。
 しかし今回の事件では現行法に基づいて、政府専用機を首都アルジェに派遣した。安全性の確保や滑走路の状況などの条件が揃えば、事件現場近くのイナメナスの空港にも自衛隊機が行うことも可能だった。
 武器使用基準を緩和しても、活動する武装勢力や現地の情報もないまま、自衛隊が事件現場近くの陸上で活動するのは非現実的だ。
 このため「事件を契機に、これまで憲法との関係で禁じられてきた海外での武器使用を緩和するのが目的ではないか」との指摘も上がっている。
■機動性に疑問
 NSC創設についても事件後、必要性を強調する声が上がっている。菅義偉官房長官は二十二日の記者会見で、「今日までの対応の中でNSC設置は極めて大事だと思っている」と述べた。
 NSCは、外交・安全保障政策の企画を官邸に一元化させることを狙いとした組織。第一次安倍政権でも設置を目指したが、実現していない。安倍首相は、事件前から仕切り直しを目指し、有識者を交え検討を始める考えだった。
 だが、今回の事件との関連でいえば、官邸内部からも「危機管理は現在、首相、官房長官、危機管理監などの縦の命令系統で対処している。NSCのような合議体では、逆に機動的に対応できないのでは」(首相周辺)と疑問視する声もある。
■焼け太り
 事件では、情報収集力の不足が指摘されたため、防衛駐在官の増加を含め、在外公館の人員体制を強化すべきだとの意見もある。
 だが自民党幹部からも「体制を十倍にしてもテロ事件を未然に察知、予防することは困難。事件のたびに役所は体制強化を主張し、焼け太りになるパターンだ」と懐疑的な見方もある。
 安倍首相は二十二日のテレビ番組では、「事件を利用し(自衛隊法改正などの)法律を通そうとの考えは毛頭ない」と予防線を張るが、政府高官は「事件の検証では自衛隊法改正も含め、幅広く検討する」と、事件を追い風にしようという意欲を隠さない。
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〈来栖の独白2013/01/27 Sun. 〉
 中日〈東京〉新聞は、浅薄な左翼に成り下がった。光市事件の元少年被告(死刑確定囚)の実名報道を控えるなど、優れた面も垣間見られるのだが。
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『憲法が日本を亡ぼす』古森義久著 海竜社 2012年11月15日 第1刷発行 
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防衛大綱改定へ まず専守防衛の見直しを 2013-01-28 
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