円借款軸に6000億円合意 日バングラデシュ首脳会談
日本経済新聞 2014/9/7 0:41
【ダッカ=宮坂正太郎】安倍晋三首相は6日、日本の首相として14年ぶりにバングラデシュを訪れた。1億5千万人超の人口を抱えるバングラデシュは成長市場で、首脳外交で日本企業の進出を後押しした。安全保障で協力を取りつける環境づくりにも生かされ、来年10月の国連安全保障理事会の非常任理事国選挙での日本の当選が濃厚になった。
「日本の貿易・投資を拡大していく重要な国としてすぐ目についた」。安倍首相は首脳会談に先立ち、ダッカ市で開かれた企業関係者が出席する「日本・バングラデシュ・ビジネスフォーラム」であいさつし、バングラデシュ重視を強調した。
同国の人口は1億5千万人超で、世界第8位。豊富な労働力を使った繊維産業が盛んだ。隣国のインドと、東南アジア諸国連合(ASEAN)に挟まれた地理的な強みもあり、年6%程度の成長を続けている。発電所や鉄道、道路などインフラ需要は拡大している。
バングラデシュ側は日本の投資に期待を寄せる。同国は2009年に17%だった国内総生産(GDP)に占める製造業の比率を21年までに3割にする目標を掲げている。ベンガル湾沿岸地域での産業地帯建設は、日本の「太平洋ベルト」をモデルにした構想でもある。
安倍首相は首脳会談で円借款を中心に今後4~5年で6千億円の支援を伝えたが、日本の政府開発援助(ODA)としてみればベトナムやミャンマー、インドと肩を並べる大規模なものだ。IHI、清水建設、三菱重工業など約20社に同行を募り、バングラデシュ側の期待に応えた。投資拡大に向け、年内に日本から経済ミッションを派遣する方針も示した。
「両国の良好な関係を踏まえた決断に深く感謝する」。安倍首相は首脳会談後の記者発表でハシナ首相に謝意を示した。
国連安保理の非常任理事国選挙には日本とバングラデシュがともに立候補。同じイスラム教の国々や途上国に集票力があるバングラデシュは、日本が過去唯一敗れた1978年選挙の対抗馬だった。経済最優先の外交攻勢が出馬辞退につながり、外務省幹部は「日本が唯一の候補になった。大きな一歩だ」と話す。
非常任であっても、国連安保理の理事国であるメリットは大きい。経済制裁など、国連の重要な政策決定に携わることができるからだ。安倍首相は将来の常任理事国入りに意欲を示しており、日本は常任理事国と非常任理事国の双方を増やす改革を提唱している。
安倍首相のバングラデシュ訪問は、ハシナ首相を公賓として日本に招いた5月下旬から、わずか3カ月あまりで実現した。バングラデシュにとって日本は最大の援助国だが、政府関係者は「インド洋沿岸国への影響力拡大を狙う中国も、バングラデシュに大型支援を打診している」と打ち明ける。日本としては中国の影響力が増す前に、両国の友好関係を一段と強めておきたかった
◎上記事の著作権は[日本経済新聞]に帰属します *強調(太字・着色)は来栖
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
非常任理事国の席…国際社会での世論戦に布石 首相、改造直後の成果
産経ニュース 2014.9.6 23:57 [安倍首相]
安倍晋三首相は、来年10月に改選される国連安全保障理事会の非常任理事国選挙をめぐり、アジア太平洋枠の1議席を争うバングラデシュのハシナ首相との会談で、日本への一本化で合意した。慰安婦問題などを利用し国際社会で積極的に世論戦を仕掛ける中国や韓国に対抗するため、国連での発言権確保に向け、布石を打ったことになる。
「ハシナ首相が両国間の歴史的に良好な関係を踏まえて立候補を取り下げ、わが国への支持を決断したことを深く感謝し、高く評価する」
安倍首相は、ダッカ市内の首相府で行われた首脳会談後の共同記者発表で、ハシナ首相が非常任理事国選で日本への支持を表明すると拍手をして歓迎し、こうハシナ首相の“英断”をたたえた。
安倍首相がバングラデシュとの関係を重視している理由の1つには、ハシナ首相が非常任理事国選への出馬辞退を示唆してきたという事情がある。
非常任理事国は任期2年の10カ国で構成され、毎年半数ずつ改選される。各地域グループで事前調整するが、調整が付かず投票に持ち込まれることもある。非常任理事国を歴代最多の10回務めている日本が1978年の選挙で唯一敗れたのがバングラデシュ。国連でも一定の存在感を持つだけに事前調整での決着をめざしてきた。
非常任理事国の席を占めることは、安保理の常任理事国入りなど国連改革を目指す日本にとって最低限の条件ともいえるが、国際社会で日本の立場を表明する場を確保するという意味も大きい。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は5日の記者会見で、慰安婦問題に関し「国連をはじめ、国際社会でわが国の立場や取り組みの姿勢をしっかり説明していきたい」と強調。第2次安倍改造内閣発足後初の外遊が、その第一歩となった。(ダッカ 桑原雄尚)
◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
-----------------------------------------------------
日本、非常任理事国当選確実に バングラ不出馬、安倍首相に表明
産経ニュース 2014.9.6 21:18
【ダッカ=桑原雄尚】安倍晋三首相は6日午後(日本時間同日夕)、南アジア2カ国歴訪の最初の訪問国バングラデシュに到着し、首都ダッカの首相府でハシナ首相と会談した。ハシナ首相は来年10月の国連安全保障理事会非常任理事国選挙への立候補を取り下げ、日本を支持すると述べ、安倍首相は謝意を示した。両国は非常任理事国選でアジア太平洋枠の1議席を争っており、日本の非常任理事国当選が確実となった。
首脳会談後の共同記者発表でハシナ首相は「非常任理事国選で日本支持を喜んで宣言する。バングラデシュの立候補は取り下げる」と表明。安倍首相は「ハシナ首相が両国間の歴史的に良好な関係を踏まえて立候補を取り下げ、わが国への支持を決断したことを深く感謝し、高く評価する」と語った。
会談では、安倍首相が積極的平和主義の意義と集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定を説明したのに対し、ハシナ首相は日本の取り組みに歓迎の意を表明。両首脳は来年前半に外務次官級協議を実施することで合意した。「ベンガル湾成長地帯構想」に基づき、都市高速鉄道やエネルギー安定供給など4分野で協力を進めることでも一致した。
◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇ 政府、国連人権理事会などでの広報強化へ 〈慰安婦問題〉朝日新聞記事取り消しを受け 2014-09-07
.........