【主張】集団的自衛権 「抑止」踏み込んで論じよ
産経新聞2013.7.7 03:27
日本の安全保障の基軸である日米同盟を機能させ、中国や北朝鮮への抑止力を高めるため、集団的自衛権の行使を容認することが極めて重要な課題となっている。
従来の憲法解釈や安全保障政策の転換にあたるものだ。参院選での議論は物足りない。
安倍晋三首相は「近くにいる米軍を助けなければ、日米同盟は大きな危機に陥る」と、国会などで行使容認の必要性を主張してきた。
民主党は選挙前に、細野豪志幹事長が行使の必要性を認める発言を行った。海江田万里代表の見解も聞きたい。日本維新の会などは行使容認を明確にうたう。党派を超え、日本の平和と安全を確保する議論に挑んでほしい。
中国は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の周辺海域で調査活動を行い、権益拡大を図ろうとしている。領海侵入などを繰り返し、海上自衛隊艦船に射撃管制用レーダーを照射した。尖閣奪取を狙い力による威嚇をためらわない。北朝鮮の恫喝(どうかつ)外交も相変わらずだ。
日米共同で対処する能力を高めるには「保有するが行使できない」という従来の憲法解釈の変更に踏み込むことが急務だ。
また首相は、第1次安倍内閣で設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」での議論を再開し、今秋にも報告書を求める考えだ。
公海上での米艦船防護や米国向けミサイルの迎撃を可能にすることなどが柱となりそうだが、かつての議論の時点と比べ、日本を取り巻く安保環境は激変していることを加味すべきだ。
産経新聞社とFNNの4月の世論調査では、行使容認への賛成論が66%で、反対の3倍に上った。国民の多くが、周辺環境の悪化を感じ、行使容認の必要性を認識しているといえる。集団的自衛権の対象を、さらに拡大して検討する必要性もあるだろう。
だが、自民党は公約で集団的自衛権の言葉を用いず、行使容認に向けた「国家安全保障基本法の制定」との表現にとどめている。連立を組む公明党の山口那津男代表は、憲法解釈変更には「国民的手続き」が必要だと自民党を牽制(けんせい)している。
秋以降の行使容認をめぐる議論に備え、なぜ行使が必要なのか、参院選の機会に国民の前で十分に語り合っておくことが大切だ。
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