日米首脳会談:沖縄負担軽減で一致 同盟深化を確認

2010-06-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

日米首脳会談:沖縄負担軽減で一致 同盟深化を確認
 菅直人首相は27日夜(日本時間28日朝)、オバマ米大統領とカナダ・トロントで就任後初めて会談した。首相は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を同県名護市辺野古周辺に移設すると明記した5月の日米共同声明について「実現に向けて真剣に取り組みたい」と着実に履行する考えを伝えた。そのうえで両首脳は、沖縄の負担軽減に努力することで一致した。日米同盟を深化させ、韓国哨戒艦沈没事件で日米韓が連携して取り組むことも確認した。
 会談は約35分間行われ、首相と大統領は会談後、そろって記者団に対応し、日米の協力関係を内外にアピールした。
 首相は普天間問題で「沖縄の負担軽減に米国の協力をお願いしたい」と要請。大統領も同意し、「(普天間問題は)日本政府にとって決して簡単なことではないことは理解している。米軍が地域によく受け入れられるよう努力していきたい」と述べた。
 また日米同盟について、首相は「過去50年以上にわたり、アジア太平洋地域の平和と安定の礎として不可欠な役割を果たしてきた。これからも日米同盟を深めていきたい」と強調した。大統領は「日本の安全、米国の安全のみならず、この地域の安全に不可欠な役割を果たしている」と指摘した。
 北朝鮮による韓国哨戒艦沈没事件について、大統領は「挑発的行為は受け入れられない」と批判。両首脳は北朝鮮を非難した主要8カ国首脳会議(G8サミット)の首脳宣言を踏まえ、国際社会が韓国を支持し、北朝鮮に明確なメッセージを出すことが重要との認識で一致した。イランの核開発問題でも、日米の緊密な連携を確認した。
 会談には日本側から岡田克也外相や野田佳彦財務相らが、米側からもガイトナー財務長官らがそれぞれ同席。首相は会談後、記者団に対し、9月の国連総会にあわせて訪米する意向を明らかにした。
 また大統領は会談後、記者団に対し「友好と同盟は新しい環境に応じて、継続的に更新する必要があるが、同盟の核となる価値は変わらない。菅首相とともに今後50年も素晴らしい歴史を築いていけることを確信している」と評価。その上で「日米間の安全保障だけでなく、アジアの平和と繁栄の礎石だった日米同盟50周年の重要性も指摘した」と強調した。
◆菅首相とオバマ大統領の会談骨子◆
・日米同盟はアジア太平洋地域の平和と繁栄の礎との認識で一致
・首相は米軍普天間飛行場の移設実現に真剣に取り組むことを表明し、沖縄の負担軽減を要請
・両首脳は普天間問題の協力、沖縄の負担軽減に努力することで一致
・両首脳は韓国哨戒艦沈没事件に関し、北朝鮮に強いメッセージを出すことで一致
・首相は9月の国連総会に合わせ、訪米する意向を表明
毎日新聞 2010年6月28日 11時30分
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日米首脳会談 再出発へ課題は重い
毎日新聞社説2010年6月29日
 「日米両国の安全だけでなくアジア太平洋地域の平和と繁栄にとっての礎でもある日米同盟をさらに深めていこう」。こうした認識を菅直人首相とオバマ米大統領が確認し合った。普天間問題の処理という重い課題は残るが、関係修復へ日米首脳が出発点に立ち戻ったことをともかく歓迎したい。
 思い返せば、念願の政権交代を果たして初訪米した鳩山由紀夫前首相と、オバマ大統領が同盟関係の強化を確認したのは昨年9月だった。「日米同盟は日本の安全保障の基軸だ」と強調する前首相に、大統領は「今日から長い付き合いになる。その中でひとつひとつ解決していこう」と応じた。
 あれから9カ月。日米関係は普天間問題で揺れ、同盟深化どころか首脳会談さえまともに開けない異常な状態が続いた。それだけに、菅、オバマの両首脳には再出発の確認の場となった今回の首脳会談の重みを認識してもらいたい。
 菅首相はオバマ大統領との会談に向け、日米同盟に関する共通認識を持つことと、個人的信頼関係を築くことに期待を示していた。
 日米同盟に関しては「過去50年以上にわたりアジア太平洋の平和と安定の礎として不可欠な役割を果たしてきた」(首相)、「今後50年も素晴らしい歴史を築いていけることを確信している」(大統領)との認識を確認し合った。11月の横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に訪日する大統領との間で日米安保の新しい意義付けや経済、文化なども含めた同盟深化の具体策をどう練り上げるかが課題となる。
 日米関係修復への大きなハードルは言うまでもなく普天間問題だ。沖縄県名護市のキャンプ・シュワブ周辺への飛行場移設を盛り込んだ先の日米共同声明は、代替施設の位置と工法の検討を8月末までに終わらせることを明記している。
 菅首相は共同声明に基づき移設実現に真剣に取り組む考えを大統領に伝え、それに先立つ記者会見では米軍基地の有無が日米のイコールパートナーシップ(対等な関係)に直結するとは考えていない、と語った。米側への配慮も込めた発言だろう。
 しかし、鳩山内閣が地元の頭越しに米側と合意したことに地元の反発は激しく先の見通しは立っていない。処理を誤れば前内閣の失敗を繰り返すことにもなりかねない。
 首相にまず求められるのは前内閣が県内移設に方針転換した事情をていねいに説明し、地元との信頼関係を築くことに全力を尽くすことだ。オバマ大統領も理解を示したように、両政府は沖縄の負担軽減にも真剣に取り組む必要がある。
毎日新聞 2010年6月29日 2時35分
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日米首脳会談―「同盟深化」も、沖縄も 日米関係もまた再スタートである。
朝日新聞社説2010/6/29Tue.
 菅直人首相とオバマ米大統領が初の首脳会談を行った。両氏は「アジア太平洋の平和と安全の礎」として日米同盟の重要性を確認し、首相は9月の国連総会時に訪米する意向を表明した。
 米海兵隊普天間飛行場の移設問題は、鳩山由紀夫前首相の稚拙な運びによるところが大きいとはいえ、歴史的な政権交代によって生まれた内閣を崩壊させる引き金を引いた。
 日米関係の大局からみて、一基地の問題が両国関係全体をぎくしゃくさせ、日本の首相交代にまでつながったことは、双方にとって不幸だった。
 だからこそ、両首脳とも今回の会談を、信頼関係を築き直す第一歩と位置づけて臨んだに違いない。
 首相は鳩山前政権下で結ばれた日米合意の履行を約束し、大統領も「日本政府にとって簡単な課題でないことは理解している。米軍も地域に受け入れられる存在であるよう努力したい」と応じた。
 大統領から首相の訪米を要請したのも、前首相との間で機能不全に陥った首脳外交を立て直す狙いからだろう。
 しかし、普天間移設を実現する政治的困難さは何ら変わっていない。
 沖縄の民意の大方は、日米合意に盛り込まれた名護市辺野古への移設に反対している。菅政権が合意に従い、地元の理解抜きでも、8月末までに滑走路の場所や工法を決めた場合、県民の反発は一層強まるだろう。11月の県知事選で県内移設反対派が当選すれば、実現はさらに遠のく。
 首相は移設と並行して、沖縄の負担軽減に全力を尽くすことで地元の理解を得たい考えだ。今回、大統領にも直接、協力を求めた。
 しかし、首相にはさらに踏み込んで欲しかった。沖縄の厳しい現状や日米安保体制を安定的に維持するためにも沖縄の負担軽減が欠かせない事情を、もっと率直に語れなかったものか。
 短時間の初顔合わせとはいえ、無難に調え過ぎた印象は否めない。難しい課題を脇に置いたままで日米のあるべき首脳関係を築けるとは思えない。
 両首脳は「同盟深化」の議論を続けることでも一致した。テロや核拡散、地球温暖化、大規模災害など、地球規模の新たな脅威にどう対応するかが中心となろうが、米軍と自衛隊の役割分担の見直しに発展する可能性もある。
 首相は大統領に「日本国民自身が、日米同盟をどう受け止めるか、将来に向かってどういう選択を考えるか、もっと議論することが重要だ」と語った。沖縄の基地問題についても、大きな文脈の中で打開策を考えたい。
 同盟深化と沖縄の負担軽減を一体的に考えるために、国民的な議論を始めなければいけない。首相にはそれを主導する責任がある。
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日米修復へ言葉より行動を
日本経済新聞 社説2010/6/29
 壊れかけていた日米関係を修復する出発点に立った。27日の菅直人首相とオバマ米大統領の初会談の成果はこれに尽きるだろう。
 会談でのやり取りをみると、両首脳は米軍普天間基地問題で広がった傷をふさぎ、ひとまず関係の修復を演出した。
 首相が日米同盟を「アジア太平洋地域の平和の礎」と強調すれば、大統領も「米軍基地が日本国民に受け入れられるよう努力したい」と応じた。
 似たような光景は鳩山前政権でも見た。鳩山由紀夫前首相は昨年9月に大統領との初会談で協力をうたい、11月には「トラスト・ミー(信用してほしい)」と普天間問題の解決を約束した。
 ところが、実際には決着を先送りし、迷走を極めた。この言行不一致ぶりが日米の信頼を損ない、関係を冷え込ませたのである。
 「離米路線」の誤解を招いた鳩山氏に比べると、首相は日米基軸をより鮮明に打ち出し、険悪だった空気は和らぎつつあるようにみえる。
 それでも普天間問題のトゲが日米関係に刺さったままの現実は変わっていない。鳩山前政権のてつを踏まないためにも、首相に求められるのは解決に向けた行動だ。
 日米は8月末までに普天間の代替施設の工法や位置を詰めることで合意している。それを受け、大統領が来日する11月までに事実上、決着させたい考えだ。
 沖縄県名護市辺野古周辺に移設する日米合意をめぐっては、地元の反対が強い。首相は沖縄側の理解を得ないまま、「問答無用」で移設を進めることはないと約束している。
 とすれば、菅政権は今から沖縄側と水面下で接触し、どうすれば協力してもらえるのか、真剣に着地点を探るべきだ。
 時間は長くない。11月の沖縄知事選が近づくにつれ、地元の説得が難しくなるとみられるからだ。
 首相は9月の国連総会に合わせて訪米する意向を大統領に伝えた。それまでに代替施設の工法・位置をきちんと詰められるか。
 これがまず、「日米基軸」という掛け声がどこまで本物なのかをはかる試金石になる。

日米安保条約 発効50年 きしむ北東アジア
日米同盟の強化と日米安保堅持の必要性を国民に説明する努力
若泉敬『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』 沖縄=「小指の痛みを全身の痛みと感じてほしい」
普天間「政治には国民の命を守る責任がある。地元だけで決まらず」=岡田外相 「日米合意、堅持」=菅首相


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