能 「箙」「吉野天人」

2016-03-28 | 本/演劇…など

the 能 com.
箙(えびら)
■あらすじ
 西国の僧が都行く途中、摂津の国、生田川のあたりに着きます。そこで咲き誇る梅に気づき、僧が眺めていたところ、一人の男が通りかかります。旅僧が男に、梅の名を尋ねると、男は「箙(えびら)の梅」と呼ばれていると答えます。なおも旅僧は箙の梅の名の由来を尋ねます。すると男は、昔、生田川周辺で源平の合戦があり、梶原源太景李(かじわらのげんだかげすえ)が梅花の枝を箙(えびら)[矢を入れて携帯する道具]に挿して奮戦した、それが由来だと教え、源平の合戦の様子をつぶさに語り始めます。やがて夕刻になり、僧が一夜の宿を請うと、男は景李の亡霊であると正体を明かし、花の木陰に宿をとるようにと言い、消えます。
 夜半に僧が梅の木陰で休んでいると、箙に梅を挿した若武者が現れます。僧が誰かと問うと景李の霊だと答えます。景李の霊は、修羅道の戦いに駆られる様子を見せます。なおも一の谷の合戦で箙に梅の枝を挿し、先駆けの功名を得ようと、敵に向かい、秘術を尽くして戦う場面を見せるうちに夜が明けます。僧の夢の中、景李の霊は暇を告げ、供養を頼んで消えていきます。
■みどころ
 「八島」「田村」とともに、勝修羅物と呼ばれる能です。物語は源平が覇権を合い争った平安時代の末期のこと。主人公の梶原源太景李は源氏方の武将で、源頼朝に重用された梶原平三景時の嫡男です。多くの合戦で、若武者ながら父ともども奮戦し、武名を上げています。その一つ、一の谷の合戦で、生田川付近で戦った景李が、色の異なる花をつけた梅の枝を箙に挿したというエピソードが物語のもとになっています。
 みずみずしい若武者と盛りの花をつけた梅の枝。その取り合わせは、血みどろの陰惨な戦闘の場であるからこそ、際立って美しく輝く美を感じさせます。昔の侍はただ、戦闘に没頭する武骨なだけの存在ではありません。和歌や管弦に秀でる者もあり、風雅な心を解し、美への感受性も高かったようです。もちろん粗野な者たちもいたでしょうが、武将の位にある者たちは、深い教養と独特の美学を持っていました。この能でも、そういった侍の美学が陰影深く描写されています。
 また一方で、歴史に残る合戦の、勇猛で苛烈な戦闘シーンの描写もあり、全体的に生き生きとした躍動感を楽しめる曲です。

 ◎上記事は[the 能 com.]からの転載・引用です *強調(太字・着色)は来栖
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能『箙(えびら)』観世流(HD)京都御所
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 2015/03/31 
吉野天人
■あらすじ
 毎春花見にほうぼうを訪ねる都の者が、今春は吉野の桜を見ようと、仲間たちを連れて出かけます。
 吉野山に着き、見事な桜景色に惹かれ、さらに奥深く入っていこうとすると、そこへ女性が一人現れ、一行に話しかけます。
 高貴そうな女性が一人山中にいることを不思議に思った男が女性に尋ねると、女性は「私はこの辺りに住む者で、一日中花を友として暮らしているのです」と答え、都人と共に花を眺めます。
 ところが女性はいつまでも帰ろうとしません。いよいよ不思議な女性だと思って尋ねると、女性は「実は私は天人で、花の面白さに心引かれて、ここに来たのです。このままここに滞在して、よく御信心なさったならば、古の五節の舞(ごせつのまい)をお見せしましょう。暫くお待ちください」と言って、姿を消します。
 やがて夜になり、何処からともなく音楽が聞こえ、辺りにはなんとも言えない良い香りが漂ってきます。
 するとそこへ天人が現われ、桜の花に戯れ、舞を舞いますが、花の雲に乗って何処かへ消え去っていくのでした。

 ◎上記事は[能楽師・殿田謙吉]からの転載・引用です  
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