財務省の消費税還付金という「クセ球」 狙いは再増税の既成事実化か 高橋洋一

2015-09-15 | 政治

財務省の消費税還付金という「クセ球」 狙いは再増税の既成事実化か
zakzak 2015.09.15 連載:「日本」の解き方
 財務省は、消費税を10%に増税した際の低所得者対策として、年間で1人上限4000円をマイナンバーカードを使って還付する案を、与党の税制調査会で打ち出した。
 こうした話の場合、どのように切り出すかが一つのポイントである。今回は、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席していた麻生太郎財務相が外遊先のトルコでぶち上げた。外遊に同行した記者へのお土産である。こうした形で発信すると、国内からは追加情報や後追い記事が多くなる。
 財務省案では、還付金を受け取るためにはマイナンバーの個人番号カードが必須としている。軽減税率対象品目を購入する際、マイナンバーカードの個人認証が必要となるわけで、いってみれば、すべての食料品購入をクレジットカード決済と同じ仕組みにするようなものだ。
 この案に反論するのは容易だ。「そうした仕組みをすべての小売店に導入できるのか」「還付金の上限4000円が低い」などである。
 筆者の感覚から言えば、あえて素人でも反論できるようにしているみたいだ。こうした問題点ばかりにとらわれると、まんまと財務省の意図に乗ってしまう。
 財務省は、マスコミが目の前の論点整理に追われて、もっと大きな問題点を見逃すことをよく知っている。反論が容易な技術的論点が提示されると、本質的な論点がぼやけてしまうことが多いのだ。
 ここでいう「本質」とは何か。2017年4月からの10%への消費再増税を、誰もが疑わない既成事実化させることだ。
 麻生財務相が出席したG20では、中国経済の懸念が中心議題だった。これはリーマン・ショック級の打撃を世界経済に与えるかもしれない。であれば、消費再増税は経済政策としては愚策になる。しかも、14年4月の8%への増税で経済成長がマイナスになったことを、そのまま17年度に当てはめると、再びマイナス成長になる恐れが大きい。そこに、中国ショックが加われば、それこそ日本経済は沈没である。
 そうしたことまで考えられるG20で消費税還付の話をするのは、消費税の悪影響と中国ショックの悪影響を一緒に考えさせないためではないかと邪推してしまいそうだ。
 案の定、日本のマスコミの多くはG20のことより、消費税還付に目がいってしまった。しかも、この消費税還付案には新聞の軽減税率が抜けている。財務省はあえて「クセ球」を投げてきたのだろうか。還付案への批判が強まっても、主要マスコミの多くは8%への増税に賛成した経緯もあって、10%への再増税自体は批判しないことも折り込み済みかもしれない。
 10%への消費再増税さえ守れれば、別に還付金は潰れてもかまわない-。これが財務省の狙いだと筆者は考える。国民がとるべき正しいスタンスは、「今の経済状況では10%への消費再増税は無理で、その結果、還付も不要」ということだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
 ◎上記事は[zakzak]からの転載・引用です *強調(太字・着色)は来栖
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