時効の撤廃・延長を答申=人命奪う罪に限定-法制審

2010-02-25 | 死刑/重刑/生命犯

悲願へ『まだ7合目』 時効廃止答申 遺族ら早期立法化望む
東京新聞2010年2月25日 朝刊
 「世論の高まりという大きな後押しがあったから、ここまで続けてこられた」。殺人の時効廃止を柱とした二十四日の法制審議会答申に、上智大生殺害放火事件の遺族で「殺人事件被害者遺族の会(通称・宙(そら)の会)」代表幹事の小林賢二さん(63)は、感慨を込めた。 
 事件から丸十二年の二〇〇八年九月九日、自宅跡地に献花した小林さんはメッセージを報道陣に託した。「凶悪事件の時効撤廃を目指して活動を進めたい」。時効が三年後に迫り、焦燥感があった。
 報道を知り、未解決事件の遺族らから連絡が寄せられた。「よく声を上げてくれた」。肉親の命を奪われた悲しみや、時効に対する危機感は共通していると感じた。世田谷一家四人殺害事件の遺族でのちに宙の会会長となる宮沢良行さん(81)夫妻も同年十二月、時効の廃止などを求めて会見し、さらに多くの遺族が集まった。
 法務省の勉強会が昨年七月、時効廃止の方針を示したが、直後に政権が変わり、白紙に。落胆したが、署名活動などを続けた。宮沢さんは「現在の刑法は犯人に甘く、遺族を苦しめる内容だ。すべての犯罪で逃げ得を許してはいけない。時効廃止は犯罪抑止にもつながる」と強調する。答申は出たが、小林さんは「まだ七合目」と気を引き締める。同会は二十八日、結成一周年の集会を開き、あらためて時効廃止を訴える。
 「全国犯罪被害者の会(あすの会)」は二十四日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、代表幹事の岡村勲弁護士は「答申に課題は残るが、かつてない試みは評価できる。一刻も早い立法化を望む」と話した。
 同席した同会幹事の林良平さん(56)は、妻裕子さん(49)が大阪市西成区の路上で刺された殺人未遂事件の時効を一月下旬に迎えた。「妻はモルヒネを日に四回服用し、今も後遺症に苦しんでいる。時効はあってはならない」と訴えた。
 既に時効が完成した事件の被害者遺族の思いは複雑だ。北海道小樽市の石川憲さん(59)の姉=当時(29)=は一九七八年に勤務先の東京都足立区の小学校内で殺害されたが、犯人は二十六年後の〇四年八月に自首した。石川さんは「もっと早く時効を廃止してくれれば、救われる遺族があった」と無念さものぞかせ、「(事件は)議論のきっかけになったと思う。姉の死は無駄にならなかった」と語った。
 一方、JR池袋駅立教大生殺害事件の遺族で「犯罪被害者家族の会ポエナ」会長の小林邦三郎さん(64)は「時効をなくす流れにならなければならない」とした上で、「大切なのは犯人を捕まえることと犯罪防止。その議論を深めずに時効廃止の話をしても意味がない」と話した。
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時効の撤廃・延長を答申=人命奪う罪に限定-法制審
 法制審議会(法相の諮問機関)は24日、殺人罪の公訴時効を撤廃し、傷害致死罪などについても2倍に延長することを柱とする公訴時効制度見直し案を千葉景子法相に答申した。政府は答申に基づき、来月にも刑事訴訟法改正案を国会に提出する方針。6月16日までの今国会中に成立させ、迅速な施行を目指す。
 時効完成の期間について現行法は、(1)最高刑が死刑の罪は25年(2)同無期懲役の罪は15年-などと、最高刑の重さに応じて定めている。答申は、殺人など死刑相当の罪の時効を撤廃。同時に、無期懲役以下の罪についても、強姦(ごうかん)致死(現行15年)や傷害致死(同10年)など人命を奪う犯罪を対象に、時効を2倍に延長した。ただ、過失致死に限り、3年のままとした。改正法施行時点で時効が未完成の事件にも適用する。
 一方で、凶悪犯罪であっても、人命が奪われなければ、時効の延長を見送った。その結果、強盗や傷害、身代金目的の誘拐などの時効は据え置く。贈収賄や政治資金規正法違反、詐欺などの罪もそのままだ。(時事通信2010/02/24-17:01)
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法制審 殺人など時効廃止答申
NHKニュース 2月24日 19時34分
 凶悪事件の時効制度の見直しを検討してきた法制審=法制審議会は、最も重い刑が死刑にあたる殺人などの罪については時効を廃止するとともに、すでに時効が進行しているものの、法律が施行された時点で時効がまだ成立していない犯罪については、さかのぼって適用するよう、千葉法務大臣に答申しました。
 法務大臣の諮問機関である法制審は24日、総会を開き、凶悪事件の時効制度の見直しについて答申をまとめ、青山善充会長が千葉法務大臣に手渡しました。答申によりますと、人を死亡させた罪のうち、最も重い刑が死刑にあたる、殺人や強盗殺人、強盗強姦致死など、12の罪については時効を廃止するとしています。また、人を死亡させたものの、死刑にあたらない罪は、今の時効期間を2倍程度に延長するとしています。
 具体的には、民間航空機の安全運航に支障をきたす破壊行為などを行って、人を死亡させた罪や、流通食品に毒物を混入させるなどして人を死亡させた罪、それに強姦致死など8つの罪は15年から30年に、傷害致死や危険運転致死など10の罪は10年から20年に、自動車運転過失致死や業務上過失致死など10の罪は5年から10年に、それぞれ時効を延長するなどとしています。
 また、すでに時効が進行しているものの、法律が施行された時点で時効がまだ成立していない犯罪については、さかのぼって適用するとしています。
 答申に対し、千葉法務大臣は「たいへん熱のこもった活発な議論をいただいた。これを受け止めてぜひ生かしていきたい」と述べました。
 政府は、24日の答申の内容を盛り込んだ刑事訴訟法の改正案を今の国会に提出することにしており、改正案が国会で成立すれば、直ちに公布・施行したいとしています。
 刑事訴訟法の改正案が、今の国会の会期末である6月16日までに成立した場合は、15年前に、東京・八王子市のスーパーで女子高校生ら3人が殺害され、7月に時効を迎える事件にも適用され、時効の成立まであと1か月余りのところで時効が廃止される見通しです。
 法制審議会の答申について、全国犯罪被害者の会「あすの会」の岡村勲代表幹事は「100%ではないが、少なくとも殺人の被害者が救われることは評価したい。こうしている間にも、刻一刻と時効の成立が迫っている人のことを思うと、1日も早く立法化されることを願ってやまない」と話しています。
 また、あすの会の幹事で、妻が15年前に刃物で刺されて大けがを負い、先月、犯人が逮捕されないまま時効が成立した林良平さんは「妻は今も後遺症で苦しんでいるのに、どうして加害者は一定の期間がたつと逃れられるのか。今回の答申は限定されたものだが、一刻も早く立法化してほしい」と悔しさをにじませながら話していました。
 時効の廃止などを訴える遺族でつくる「宙の会」の代表幹事で、14年前、大学生の娘を殺害された小林賢二さんは「答申が出てほっとしていますし、娘が後押ししてくれて、ここまで来ることができたのかなと思います。殺人事件の時効が廃止され、進行中の事件にも適用されるということで、内容についても評価できると思います」と話していました。そのうえで、「わたしの娘の事件も含めて、まさにもうすぐにでも時効が迫っている遺族も全国に多くいる。できるだけ早く国会の場で議論がされることを期待しています」と述べ、法案の早期成立を願っていました。
 日弁連=日本弁護士連合会の細井土夫副会長は「何十年も前に起きた事件で起訴された場合、裁判で被告が反論するための証拠を集めることはきわめて困難で、日弁連としては時効の廃止は反対の立場だ。死刑となる事件も含めてえん罪が増えることを懸念している」と述べました。そのうえで「捜査機関が膨大な関係書類をどのように保存するのかなど課題も多く国会では十分な議論を尽くすべきだ」と指摘しました。

内閣府「基本的法制度に関する世論調査」 死刑制度 公訴時効
死刑容認85.6% 命より大切なものがあるという倫理観にとって代わられた


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