産経ニュース 2015.10.4 05:00更新
【主張】原発のゴミ 処分地選び皆で考えよう
原子力発電で生じた高レベル放射性廃棄物の処分をどうするかは、国民全体で考えなければならない課題である。
廃棄物を含むガラス固化体を地下深くに埋める最終処分事業への理解を深めてもらおうと、国が本腰を入れ始めた。
今月を「高レベル放射性廃棄物の最終処分 国民対話月間」と銘打ち、4日の東京から29日の岡山まで、計9都市で全国シンポジウムを開く。経済産業省・資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO(ニューモ))が実施する。
原子力発電を認めない立場の人にも、最終処分について偏見なく考える機会としてもらいたい。
日本の原子力発電は45年前から本格化し、高レベル放射性廃棄物を含む大量の使用済み燃料が発生している。
この廃棄物は、強い放射線を長期にわたって出し続けるため、ガラス固化体に加工し、地下300メートル以深の岩盤中に埋設して最終処分する計画だ。
しかし、その場所を探し始めてから10年以上が経過しているにもかかわらず、いまだ候補地さえ見つかっていない。フィンランドとスウェーデンでは最終処分地が決定済みである。
これ以上の遅れを防ぐため、国は今年5月の閣議で、最終処分の基本方針の改定を決めた。
従来はNUMOに対する市町村の応募を待つ方式だったが、これを改め、国の側が「科学的有望地」内の自治体に対して、受け入れの可能性を打診する申し入れ方式を追加したのだ。
全国シンポジウムでは、科学的有望地の決め方やその後の申し入れの手順など、処分地選定の段階的な流れを中心に説明することになっている。
科学的有望地は、活断層や火山、地下水、隆起などの地質学的条件を考慮して決められるが、その公表はこれからだ。
シンポジウムには、そのための地ならしの意味がある。エネ庁とNUMOは説明に意を尽くし、信頼を得なければならない。
最終処分事業は、着手から完了までに100年を要する長期プロジェクトだ。若い世代の理解が欠かせない。
高レベル放射性廃棄物の最終処分は、原発再稼働とは次元の異なる問題である。国民全体で前向きに取り組みを進めたい。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です