山本太郎語る「れいわ新選組が、重度障害者を国会に送り込んだ理由」 2019/8/4

2019-08-04 | 政治

山本太郎語る「れいわ新選組が、重度障害者を国会に送り込んだ理由」 人間を「コスト」と見る世の中を疑え
 2019/08/04
   時任 兼作 ジャーナリスト

■ 実は練っていた「秘策」
 「山本太郎としては負けた。でも『れいわ新選組』としては勝った、という結果になったと思います。1議席が2議席に増え、政党要件を獲得できたことは大きかった。
 政党になったことで、メディア露出も増えますし、他の党と比べれば額は少ないですが、助成金をいただいて活動を拡大できる。次期衆院選を戦うにあたっても、選挙区と比例区の重複立候補が可能になりました。これでやっとスタートラインに立てた、と思っています」
 今回の参院選、最も注目を集めたのが山本太郎と、彼が率いる「れいわ新選組」であったことは疑いないだろう。
 山本自身は、前回当選した東京選挙区ではなく全国比例で出馬し、個人名では2位に40万票近い大差をつける約99万票を獲得したものの落選。その理由は、党・団体内で優先的に当選させる候補者を決められる「特定枠」候補として、2人の重度障害者を指定したためだ。
 参院選公示前の6月に行ったインタビューの時点では、この「秘策」は伏せていた。選挙後、改めてその真意を山本本人に聞いた(以下、「」は山本の言葉)。
 「決まっていたけど、言えなかったんですよね。公示前日に、私は東京選挙区ではなく比例で出ます、そして特定枠に舩後靖彦さんと木村英子さんの2人を立てます、とサプライズ発表をするつもりだったので。まあ、僕が落選したのは予想外で、一緒に受かるつもりでいたんですが(笑)」
 当選した舩後は難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者、木村は脳性麻痺を伴う重度身体障害者で、ともに移動には大型電動車椅子が必要。実は、両者には早い段階で立候補を打診していたという。
 「特定枠で重度障害の方に立候補していただきたいということは、かなり前から考えていました。アプローチしたのは、舩後さんは1ヵ月前くらい。木村さんは、私が2013年の参院選で当選したときに支援してくださった。それで3年ほど前から、『いつになるかわからないけれど、新しい政党を旗揚げする時には立候補してほしい』と話していました」
 だがネット上では選挙後、「国会の改修費用や介助のための費用をどうやって負担するのか」「障害者に十分な議員活動ができるのか」といった批判が噴出し、国会議員も巻き込んだ論争を招いている。 「木村さんは、以前から障害者政策に関する活動に取り組んでいて、厚生労働省との交渉などにもあたってきましたから、政治家としての適性があることはわかっていました。
 ALS患者の舩後さんについては、コミュニケーションができるのか、という点に疑問を持たれる方が多いと思います。全身麻痺で話ができず、呼吸器をつけて、胃ろうもしていますから。でも舩後さんは、以前から介護事業所の副社長を務めて実際に経営にも参画していますし、もちろん頭脳も明晰です。
 私が重度障害者の方に立候補していただきたいと考えたのは、『生産性で人間の価値を測るような世の中は、もうやめよう』と訴えたかったから。ただ、生産性という観点から言っても、2人は非常に優秀なんです。むしろすごいのは、そんな2人が能力を発揮しなくても、国会にただいるだけでも、周りがどんどん動くということですよね」

■強行採決はできなくなる
 8月1日に召集された臨時国会では、舩後・木村両議員が急遽設置されたスロープを通って登院、本会議場に入った。2人の初登院の様子は、今回当選した議員たちの中で最も大きく報じられている。「れいわ新選組」は選挙期間中のみならず、選挙後にもメディアと世論をジャックしたというわけだ。
 「極端に言えば、2人が国会の場にいてくれるだけでもいいと私は思っているんです。実際、初登院する前から、すでにいろんなことが変わり始めたんですから。
 もちろん、障害者に関わる制度改革など、これから議員として取り組まなければならないことはたくさんありますが、質問などの事前準備をしっかり行えば、コミュニケーションの面でも問題ないと考えています。
 舩後さんの場合、事前に予定していない言葉のやりとりは文字盤を使うことになるし、それには当然時間もかかる。でも、舩後さんが何を言いたいのかわかるまで、他の議員がじっと待つということも、障害者への合理的配慮に含まれるはずです。
 それこそが、国会に重度障害者が入るということの意味なんです。
 これまで、『国会議員は健常者である』という前提で作られてきた国会審議のリズムやペースを、これからは2人に合わせていくのが当然になると思うんですね。法案を急いで審議して無理やり通す、というようなことも、もうできなくなる。スローダウンするしかない」

■「政治は数、数は力」を疑え
 第二次安倍政権下では、数々の法案がいわゆる「強行採決」によって通されてきた。しかし2人の重度障害者の存在が、国会のしくみや採決のあり方そのものを根本的に変えてしまうかもしれない、と山本は言う。
 「選挙の後、テレビなどの『街の声』でも『政治家って激務でしょ? 耐えられるのかしら』といった声を伺いましたが、耐えられるような国会運営をするしかないよね、という話です。今の国会が、障害者が参加できないような制度設計になっているんだったら、そっちを変えればいいじゃないですか。
 それに激務と言っても、仕事の中身にもよる。私から見ても、国会には暇そうな先生がたくさんいらっしゃいますんで(笑)。
 私なんかは一番小さな会派でしたから、朝、委員会に入っても、質問できるのは最後なんです。その間も質問内容を調整し続けていて、居眠りする余裕なんてなかった。でも、大きな党の所属で、ただ出席しているだけの先生方は、他人の質問を聞くだけで、あとは自分で持ち込んだ資料を読んだりしている。何もやることがなくなると、居眠りする。そういう議員の仕事を『激務』と言うのは違和感があります。
 うちは小さな組織なので、どうしても2人の登板回数は多くなってしまうでしょう。でも、本人たちの体調が優先、無理はしないでほしいと伝えています。国会に出られない時もあるかもしれないけれど、自分優先でいいと。むしろ、それに配慮するのは国会の責務である、そういう認識に日本全体が変わっていけばいい」
 田中角栄はかつて「政治は数であり、数は力だ」と言った。しかし今「れいわ」が展開している政治は、そんな古い政治のあり方とは真っ向から対立する。
 「確かに政治は数です。でも、数ではない部分で動くこともある。それを2人が教えてくれたと思うんですよね。数としてはたった2議席だけど、この『2』はケタ違いなんですよ」

■人間を「コスト」と見る社会を変えるために
 山本と「れいわ」が掲げる政策で、一貫しているのが「弱者」に対する意識だ。今回の舩後、木村の擁立はそれを世に示す実践の一環であったとも言える。
 日本では長いデフレの時代を経て、あらゆることを「コスト」をベースに見る思考が、いつしか国民の骨の髄まで染みついてしまった。障害者を含む弱者への福祉政策に関しても、「コスト」と考えて嫌う人が多い。しかし山本は、そうしたものの見方を改めない限り、日本が変わることはできない、と言う。
 「なぜ障害者は『弱者』と呼ばれているのか。それは、健常者の側が彼らを『弱者』と呼ばれる立場に置いているからじゃないでしょうか。
 障害を持っている方の精神力とか信念の強さって、とてもじゃないけど、私たちが敵うようなものじゃないですよ。それなのに、なぜ『弱者』と見られているかというと、それは彼らが健常者と同じように生きられる状況が築けていないから、障害者の社会進出を阻むような制度づくりがなされているからだと思うんです。
 厚生労働省は、コストが増えるのが嫌みたいです。舩後さんと木村さんに関してということじゃなくて、一般論でも制度上、重度障害者の訪問介護サービスには働くことや学ぶことに際する介護は含まれていない。公的補助金や事業者の負担になっているのが現状です。ここを変えるのが2人の目指していることです。
 これを認めてしまえばまたお金が必要になるから、国は見て見ぬ振りをしてきた。バリアフリー化の工事とか、見た目にわかりやすいことは進めるけれど、一番大事な制度の部分は隠し続けてきたんです。実は国会の施設改修は本質じゃない。このままだと、スロープはできたけど、国会でヘルパーさんの補助が受けられません、という事態になってしまう。
 そういう手間のかかる人たちに投資するのは無駄なコストだ、ダメなヤツは切り捨てて当然だ、という社会的な空気さえ最近はあります。
 選挙後にいただくご意見を見ていると、おそらく国民の中には、自分自身も来年どうなるかわからない、今月をどう乗り切ろうか、というギリギリの生活の中で、障害者が議員になって高い報酬を手に入れ、それでもまだ『配慮が足りない』と言っていることに、不満を持っていらっしゃる方も少なくないんじゃないかと感じます。
 でも、ここで冷静に考えていただきたいのは、日本という国は一応『先進国』のグループに入っていて、世界との約束である条約を批准している。障害者権利条約もその一つです。当然この中には『仕事と雇用』という条文もあって、要は障害者が健常者と平等で公正な状況で働けるようにすること、と書かれているんですね。
 例えば24時間介護を受けている人たちは、手足となって動いてくれるヘルパーがいなければ、健常者のように仕事はできませんが。それをアシストするのは当然のことであると。これは法律よりも上位にある条約で定められているんです」

■ いよいよ真価が問われる
 「日本は来年にはパラリンピックのホスト国になり、世界でも初めて重度障害者が2人同時に国会議員になったんですから、今が変わるチャンスですよ。
 逆に言えば、重度障害の方でも普通にサポートを受けながら働ける世の中になったら、その時はどんな人でも、どんな状況に陥っても、胸を張ってサポートを受けられる社会になるのではないでしょうか。
 舩後さんがALSを発症したのは40代のときです。今は健康でバリバリ働いている人も、いつ困難に直面するかわからない。それなのに、日本人は自分たちの手で『弱者』と呼ばれる人たちを作り続けて、切り捨て続けている。どんな人でも、切り捨てるのではなくて引き上げるような社会になれば、どれだけ逞しい国になるんだろうと思います」
 とはいえ、山本自身は今回の選挙で参議院を去った。2人の重度障害者議員が、実際問題として、これから様々な困難に直面することも覚悟せねばならないだろう。
 「参議院議員の任期は6年と長いですし、2人には腰を据えて、900万人以上いる障害者の代弁者になって障害者福祉政策を前進させていただきたい。口の悪い人は、『難病患者なんだからそんなに長生きしないだろ』なんて言いますが、舩後さんはもうALSになって20年生きていますから(笑)。一概にそういう雑なまとめはできないですよね。
 むしろ、出馬を口説きに行った時よりも、2人とも生き生きしていますよ。舩後さんなんて、本来なら筋力は失われる一方のはずなのに、どんどんエネルギーが湧いてきているのが、見ていてわかるんです」
 「れいわ新選組」の真価は、いよいよこれから問われることになる。
 (文中敬称略。写真/西崎進也)

*時任 兼作 KENSAKU TOKITOU
 慶應義塾大学経済学部卒。出版社勤務を経て取材記者となり、各週刊誌、月刊誌に寄稿。カルトや暴力団、警察の裏金や不祥事の内幕、情報機関の実像、中国・北朝鮮問題、政界の醜聞、税のムダ遣いや天下り問題、少年事件などに取り組む。著書に『特権キャリア警察官 日本を支配する600人の野望』(講談社)『「対日工作」の内幕 情報担当官たちの告白』(宝島社)など。

   ◎上記事は[現代ビジネス]からの転載・引用です
...................
〈来栖の独白〉
 山本旋風にも困ったもの。というより、噂通り、彼が都知事選に出たなら、都知事になっちゃうだろう。恐ろしい。これは、させてはならない。都知事にしてはならない。
――――――――――――――――――――――――
「れいわ新選組」当選議員への微妙な感情 〈障害者芸人ホーキング青山 特別寄稿〉 2019/8/3
山本太郎氏の「憲法を変えたいのは憲法を守っていない人たちだ」には、驚いた。 〈来栖の独白2019.7.23〉 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。