「改正少年法」施行 2022/4/1 光市母子殺害で死刑確定、割れた実名と匿名 さらなる厳しい判断迫られる報道機関

2022-04-11 | 光市母子殺害事件
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光市母子殺害で死刑確定、割れた実名と匿名 さらなる厳しい判断迫られる報道機関
 2022/4/8(金) 8:00配信 神戸新聞NEXT

 改正少年法が今月1日に施行された。18歳、19歳は新たに「特定少年」と位置づけられ、起訴されれば、これまで禁じられていた実名報道が可能になる。殺人や傷害致死といった重大な事件であっても、報道機関はこれまで、未成年の容疑者や被告は少年法に基づき、匿名で報じてきた。
 はたして、事件に関わり、実名で報道された少年は過去にいなかったのか-。

■特定少年の公表、慎重求める声
 「死刑確定へ」。各新聞社の2012年2月21日付朝刊1面は、1999年に起きた山口県光市の母子殺害事件を大きく報じていた。犯行当時18歳だった大月孝行死刑囚(41)の上告を棄却した最高裁判決の翌日だった。
 30歳になっていた大月被告の実名が出たのは、その時からだ。それまでの新聞報道は「元少年」などと実名は伏せられていた。名前や顔写真など、少年本人の推定ができる報道(推知報道)を禁じる少年法61条を各紙が尊重したためだ。
 ただし、死刑が確定的となれば、大月被告は、少年法が重視する立ち直りや社会復帰への道は限りなく閉ざされる。このため、複数の社が実名や顔写真を出した。理念を重んじ、匿名を継続した社もあった。
 確定死刑囚となる元少年の報道は実名か、匿名か。各社は1面に「おことわり」の文章を載せて判断を説明した。その意味でも、この少年事件は異例だった。

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 それから10年。改正少年法の施行で、匿名報道の「縛り」が緩められた。18、19歳の「特定少年」は、起訴されると実名報道が可能になった。では、どのような犯罪に関わった少年が実名報道の対象になるのか。
 最高検は「犯罪が重大で、地域社会に与える影響も深刻な事案」で起訴された特定少年を実名公表の検討対象にするとし、裁判員裁判の事件を典型例とした。
 改正法は今月施行されたばかりだが、早くも、最初に実名報道が可能となりそうな「特定少年」事件がある。甲府市で昨年10月、男性会社員=当時(55)=と、その妻=同(50)=が殺害され自宅が全焼した事件。殺人や現住建造物等放火などの疑いで逮捕、家裁送致された男(19)を、家裁が今月4日、検察官送致(逆送)すると決定した。起訴される見通しだ。

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 一方で、推知報道の「一部解禁」を危ぶむ声もある。九州大学法学部の武内謙治教授(少年法)は「改正法が積極的な実名報道を求めているかのような誤解がみられる」と指摘する。
 改正法は、起訴された18歳、19歳に対し、推知報道を禁じた61条を「適用しない」というだけで、報道機関に判断が委ねられており、報じた責任も生じると強調する。検察官が起訴した後に家庭裁判所に戻されて保護処分となる事例もあり、判断は慎重であるべきとの立場だ。
 武内さんは、事件報道では匿名を支持し、「犯罪に及ぶ人は元々社会との関係性が弱い人が多い。実名報道をされてそれが壊れると、回復するのはかなり難しく、結果的に再犯のリスクを高めてしまう」と語る。
 さらにデジタル社会では、犯罪歴などの不利益情報が永続的に残る。デジタルタトゥー(電子的入れ墨)と言われる問題だ。

 事件報道で実名や顔写真を求める社会の要請と、「立ち直り」のため抑制的な報道を求める少年法。報道機関は、少年犯罪の「実名・匿名」について、これまで以上に厳しい判断を迫られる。(霍見真一郎)


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