「春闘」の陰で ~正規と非正規と<下> 配慮し合う労組 ◆崩したくない「連帯」

2009-03-13 | 社会
中日新聞2009年3月13日
◆崩したくない「連帯」
 名古屋・栄の久屋大通公園で8日に開かれた連合愛知の「春闘1万人総決起集会」。パート従業員らでつくる労働組合代表の女性が呼び掛けた。
 「非正規労働で働いても食べていけないのはおかしい。ともに頑張りましょう」
 「女性労働者の代表」としての決意表明が、今年は違う。非正規労働者の代表としてだった。「昨今の雇用情勢で非正規の立場からの参加が求められていた」。連合の担当者は打ち明ける。
 もちろん、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)によって雇用維持を図るといった正社員の痛みを伴う対応策は語られないまま。賃上げで内需を拡大することで、非正規労働者の就業促進につなげるべきだというのが連合の路線だ。
 だが、集会終了後に行われたデモ行進では「非正規労働者の雇用環境改善を」というシュプレヒコールも。自動車総連傘下の労組役員は「正社員のクビも危ない状況だが、非正規にも精いっぱい目配りした」。
 こうした配慮は、正社員の労組だけではない。
 連合の集会からさかのぼること2週間前に名古屋市内であった「愛知派遣切り抗議大集会」。タイトルに「愛知」ではなく「トヨタ」の3文字が使われてもおかしくなかった。
 実行委員会に名を連ねた東京・日比谷公園の「年越し派遣村」村長湯浅誠さん(39)らが主張した。「企業責任を追及するためトヨタの名を出すべきだ」と。「トヨタ派遣切り」という言葉は、確かに強烈な印象を与えられる。
 だが、連合愛知も含めた広がりを目指す地元の実行委メンバーは困惑した。「トヨタ系正社員が“被告席”に座るような集会名では乗れない」との声が耳に届いていたからだ。
 関係者の一人は振り返る。「激論があった。でも『愛知』にしたことで、広がりを得られたのならそれでいい」
 すべての労働者が連帯する「総労働」のムードだけは崩したくないという思いが、「雇用春闘」のあちこちにのぞく。正規と非正規双方の立場で働いた経験を持つ名古屋市の設備製作会社の男性(32)は「みんなが団結するなんて幻想」としながらも、正規、非正規労組が互いに配慮し合うことは悪くないと思う。
 派遣社員だった数年前には、正社員が嫌がるような、くさくて爆発の危険がある薬品を扱った。正社員時代には、長時間残業などのつらさも味わった。それだけに実感がこもる。
 「しょせんはみんな雇われの身。バラバラでいて、笑うのは誰か。笑わせておいていいのか」
 (この連載は社会部・大村歩、山田祐一郎が担当しました)

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