【欠陥憲法 新しい国づくりへ】
(5)平和主義条項 柔軟な改正、世界の潮流
産経ニュース2012.5.3 08:05
「現時点でわが国の関与のあり方について検討が始まったわけではないが、今後、慎重な検討を要する」
アサド政権による反体制派弾圧が続くシリアへの停戦監視団の派遣について藤村修官房長官は4月26日の記者会見で慎重な考えを示し、見送りを示唆した。
シリアでは停戦監視団の先遣隊が訪問すると戦火が収まるが、引き揚げると、シリア政府軍が市民に攻撃を加え、暴力行為を働くなどの「いたちごっこ」のような状況が続いている。
国連によるとシリアでは昨年から市民ら9千人超が命を落とした。国連はシリアに国連平和維持活動(PKO)として停戦監視団の本隊を派遣し、日本にもその要員派遣を求めた。
だが、日本は消極的だ。憲法との絡みで「紛争当事者間の停戦合意」など国連平和維持活動の参加5原則を満たす必要があるからだ。元航空自衛隊幹部で軍事評論家の佐藤守氏は「そもそも平和維持活動の参加に『現地の安全が必要』というのはおかしな話。平和を勝ち取るという発想が9条にはないためで、隊員は浮かばれない」と嘆く。
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「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」
現行憲法には数多くの“神話”が存在する。前文もそのひとつで「平和を愛する諸国民」とは外国の諸国民を指す。多くの国民が「国家」「軍」について必要悪と考え、耳にしただけで忌避するステレオタイプの思考が染みついている。
しかし、日本周辺の安全保障情勢は険しさが増す一方だ。北朝鮮はミサイル発射を強行し、核開発をちらつかせる。中国は海軍力を増強させながら、日本固有の領土である尖閣諸島に触手を伸ばそうとしている。
軍事力を敬遠するだけで、平和な世の中が保てるのか。自らの安全と生存、主権や独立を守る備えが、こうした諸国民の「公正と信義に信頼」することだとする憲法前文と現実との乖離(かいり)は誰の目にも明らかになりつつある。
世論調査で憲法改正の反対理由の上位に「現行憲法は世界に誇る平和憲法だから」と挙げられることが多い。「日本国憲法は世界で唯一の平和主義の憲法」という“神話”も存在するからだ。だが、世界各国を見ると、平和主義は日本固有の規定ではない。憲法9条の「武力による威嚇または武力の行使」などの文言は1945年6月に制定された国際連合憲章の影響とされ、憲章制定後の各国憲法では、平和主義条項を盛り込むのがむしろ一般的だ。
「平和」を国家目標にした国もあれば「常備軍の原則的不保持」を掲げる国もある。「侵略戦争または攻撃的戦争の否認」「国際協調(平和共存)」「内政不干渉」「中立政策の推進」「国連憲章の尊重・順守」「紛争の平和的解決」とさまざまで駒沢大学の西修名誉教授によると、何らかの形で平和主義条項を盛り込む国は157カ国に及ぶ。日本国憲法のみが平和主義条項を持つという認識は誤りで、平和主義を憲法に規定しつつも「平和主義=非武装」と考えている国家は皆無ということだ。
「現行憲法は世界的に新しい」という認識も広くある。しかし、世界192の独立国で成典憲法を持つ178カ国のうち、日本国憲法は古い方から数えて14番目。しかも日本より古い13憲法はその全てが憲法改正を図っている。「新しい部類どころか、きわめて古い憲法」(西教授)で、憲法が現実に合わなくなると、柔軟に改正に踏み切る。これが世界では一般的な考えのようだ。=おわり
・この企画は社会部・安藤慶太、政治部・榊原智、峯匡孝、外信部・田中靖人、雑誌正論編集部・小島新一が担当しました。
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◆【欠陥憲法】(1)戦車にウインカー 「軍隊否定」の象徴 2012-04-30 |
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◆『最終目標は天皇の処刑 中国「日本解放工作」の恐るべき全貌』 ペマ・ギャルポ著 飛鳥新社 2012-04-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
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◆中国の漁業監視船、再び尖閣へ 中国は国内法で尖閣諸島や西沙・南沙諸島を中国領土だと主張2011-01-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
田母神俊雄著『田母神国軍』
p29~
▲尖閣諸島が中国に乗っ取られる 中国の謀略は始まっている
尖閣諸島をめぐっての中国の動きは活発化しています。
2004年3月、中国人の活動家7人が魚釣島に上陸し、沖縄県警が逮捕。
2008年12月には中国の海洋調査船2隻が、約9時間にわたって領海侵犯。
2010年4月、中国海軍の艦艇10隻が沖縄本島と宮古島の間の公海を南下し、中国艦の艦載ヘリが監視中の海上自衛隊の護衛艦に、2度も異常接近。
そして2010年9月7日、尖閣諸島の久場島から北北西約12キロメートルの日本領海内で、監視中だった海上保安庁の巡視船が、違法操業をしていた中国のトロール漁船に衝突されるという事件が起きました。
p30~
中国は1992年にこっそりと制定した「領海法」という国内法で、尖閣諸島や西沙・南沙諸島を中国領土だと主張しており、中国国内に「尖閣諸島は中国の領土」という共通の認識をもたせることにはすでに成功したと言えます。
▲最初は中国政府の工作だとわからない
では、日本の領土である尖閣諸島が、実際に中国に占領されてしまうきっかけにはどのようなものがあるか。「漁船」衝突事件とは、別のやり口を考えてみます。
中国は、まずは漁船などを使って、中国人を島に上陸させることから始めると考えるのが妥当です。
もちろんそのとき、中国政府は一応、自国民の違法行為に対して、「遺憾である」という立場を取るはずです。公式に「遺憾」とは言わないまでも、「上陸はするなと押さえていたけれど、彼らが勝手に上陸してしまった」というような言い訳をするでしょう。
本当は中国政府が仕掛けているとしても、そんなことはおくびにも出しません。
中国という国は、何をするにしても、最初は誰がやったかわからないような形で仕掛けてきます。(略)
無断で日本領土である島に上陸されたのですから、日本は当然、上陸した中国人を強制的に排除しようとします。2004年のケースでも、沖縄県警が入管難民法違反の現行犯で上陸した中国人活動家7人を逮捕しています。
ここで忘れてはならないことは、漁船で中国人が上陸するというのは、すでに大きな乗っ取り戦略の1つだということです。
おそらく、上陸行動自体も段階的に行われるでしょう。まずは、漁船で島に近づいてきますが、海保の巡視船に注意されて、ひとまずあきらめて帰ります。
しかし、また少し時間をあけて、様子を見ながらもう1度近づいてくる。それを3、4回繰り返して、5回目ぐらいになるといよいよ上陸してくる。
上陸が始まってからも、中国は段階的に進めてくるでしょう。
p32~
日本側は最初、警察当局が入管難民法違反の容疑で上陸した中国人たちを逮捕します。あるいは、最初は中国人のほうが無条件で撤退するかもしれません。しかし、2度目の上陸では、確実に逮捕者が出ます。
そして3度目の上陸では、より多くの中国人がやって来て、逮捕者も増えます。
それを何度か繰り返す中で、中国は漁民の中に兵士を紛れ込ませてくると考えられます。
すると、強制的に排除しようとする警察と、中国人たちとの間で小競り合いが起きるようになります。この小競り合いも何度か繰り返されるでしょう。
小競り合いが3日、あるいは1週間近くも続くようになってくると、中国が国を挙げて「中国人を保護しなければいけない」と乗り出してくるはずです。
▲危機に自衛隊が出動できない
では、このような事態に、日本政府と自衛隊に何ができるか見てみましょう。
2010年9月に防衛省がまとめた平成22年度防衛白書の「武装工作員などへの対処の基本的な考え方」という項目の中では、武装した工作員が日本国内で不法行為に及んだときに、第一義的に対処するのは警察機関だという考え方を示しています。
そして、警察機関が武装工作員への対応をとっているとき、自衛隊の任務は「状況の把握」であり、「自衛隊施設の警備強化」であり、「警察官の輸送」であるとしています。自衛隊員が警察を支援するわけです。
これが、とても馬鹿げたことであるのは子供でもわかると思います。諸外国とはまったく反対の構図で、何もしないと言っているのと同じです。
中国人が漁船で上陸してきた初期の段階なら、まだ、警察当局や海保庁で対応できるかもしれません。しかし、その人数が増え、中には兵士も混ざり、さらには最終的に「自国民を守る」という御旗の元に中国の軍艦がやってくるまでには、そう時間はかかりません。
「日本の領土に上陸しても、とくに武力行使されるわけでもないし、悪くて警察に捕まる程度か」という認識を中国に持たせれば、彼らは軽い気持ちで軍艦を出します。
問題は、中国人が漁船で上陸した初期の段階で、なぜ、自衛隊が出動できないのかということです。
p34~
この段階で、日本政府が武力攻撃事態対処法に基づいて、防衛出動ができるかといえば、おそらくできません。つまり、自衛隊は動けない。日中関係を悪くしたくないと考える人たちから、「防衛出動を発令すると、中国を刺激してよろしくない」といういつものセリフが出て、そうこうしているうちにうやむやに終わってしまうのがオチです。
おそらく、中国の正規軍が侵攻してくるという事態にでもならない限り、日本政府は武力攻撃事態として認定しないでしょう。
では、諸外国ではこのような事態にどう対処しているのか。
そもそも諸外国では、まず防衛出動が発令されることはありません。防衛出動というものは、ただ軍に対して命令を与えるだけのものですが、他国ではエリアの担当司令官に、その対応が任されています。
例えば、あるエリアが他国から攻撃を受けた場合、当然、そのエリアの防衛を担当している司令官が対応することになります。有事の際には、司令官の判断で対応するというのが、普通の国のあり方です。事は突発的に起るものですから、もたもたしていたのでは時すでに遅し、ということになります。
日本でも国内の事件の場合は、警察の判断によって警察が対応しますが、本来、防衛に関してもそれと同じで、警察のかわりに軍が柔軟に対応するべきです。
p35~
防衛出動が発令されるという異常な体制をとっているのは、日本だけです。日本の場合は、これが発令されなければ、自衛隊は動けないということです。
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◆「核心的利益」中国は主権や領土に関わる問題で外国に妥協しない姿勢を強めた 2011-07-18 | 国際/防衛/中国
拡大する「核心利益」 中国外交を懸念する
2011年7月18日中日新聞【社説】
中国は主権や領土にかかわる問題を「核心的利益」として外国に妥協しない姿勢を強めた。その範囲も野放図に広げ、周辺諸国の警戒を招いている。
「国家の主権と安全、発展は外交の最優先任務だ」「国家の核心的利益にかかわる問題は絶対に、いかなる妥協も譲歩もしない」
中国外務省の馬朝旭報道局長が最近、党機関紙に発表した文章の一節。軍やマスコミばかりか外交官にも勇ましい発言が目立つようになった。今月下旬、インドネシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)などの外相会議では中国への対応が焦点になる。
*2009年の大転換
小平時代、中国は経済発展を最優先に融通を利かせた外交を展開した。日本の尖閣諸島に対する領有権を主張しても外交の争点にせず「次世代に任せよう」と問題を棚上げしたのは代表例だ。
江沢民時代はとう路線を基本的に引き継ぎ、それに続く胡錦濤政権も二〇〇二年の発足以来、「隣国を友」とする協調的な外交姿勢をとってきた。それがおかしくなるのは、08年の金融危機を中国が各国に先駆けて克服し「突如、大国になった自分を発見した」(中国人研究者)ころからだ。
09年7月に世界から大使を集めて開いた第11回駐外使節会議で、胡国家主席は「外交は国家の主権、安全、発展に貢献しなくてはならない」と言い切った。
氏が示した「韜光(とうこう)養晦(ようかい)、有所作為」(能力を隠して力を蓄え少しばかりのことをする)という抑制的な外交方針を「堅持韜光養晦、積極有所作為」に修正した。能力を隠し、力を蓄える姿勢を堅持するが、これまでより積極的に外交に出るという意味か。
*台湾から南シナ海へ
同月開かれた初の米中戦略・経済対話で、胡主席側近の戴(たい)秉国(へいこく)国務委員(副首相級)は核心的利益を「第一に(社会主義の)基本制度と国家安全の擁護、第二に国家主権と領土の保全、第三に経済社会の安定した発展」と述べた。
それまで中国は外国に譲歩や妥協ができない核心的利益を台湾問題に限ってきた。その範囲を大幅に広げたのは外交の「09年転換」ともいえる重要な変更だったが、外国は気付くのが遅れた。
その証拠に、同年11月、オバマ大統領訪中時に発表された米中共同声明には、主権と領土で「両国が核心的利益を尊重し合う」との一節が入った。米国は後に、うかつさに気付き11年1月の胡主席訪米時の共同声明では「核心的利益」という言葉を拒否した。
その後も核心的利益論は独り歩きを始める。09年12月に来日した習近平副主席は「台湾、チベット、新疆ウイグル自治区の問題は核心的利益」と述べた。
10年3月には訪中したスタインバーグ米国務副長官に、中国政府高官が「南シナ海は核心的利益」と語ったといわれる。米国は強く反発し、介入を避けてきた中国と東南アジア諸国による南シナ海の島々の領有権争いに対し「航海の自由」を掲げて中国をけん制し東南アジアに肩入れを始める。
あわてた中国は「指導者が南シナ海を核心的利益と公式に語ったことはない」(外務省高官)と言い訳し、米国との対決回避を図った。しかし、東シナ海や南シナ海など外国との係争地域を核心的利益から除くと表明することもなく周辺国の疑いは消えていない。
主権や領土問題で妥協を拒否する政府の姿勢は、対外強硬論が勢いづく軍や海上実力部隊による独断専行の危険を高めた。
08年12月、尖閣周辺の日本領海に、中国の海上保安庁に当たる国家海洋局東海海監総隊の巡視船二隻が進入し、9時間も徘徊して尖閣への主権を主張する事件が起きた。
中国の外交関係者によると、その後の内部会議で航行を指揮した司令官が尖閣周辺進入を独断で決意し、進入時は無線を切り本部の帰還命令をさえぎったと得意げに報告したという。南シナ海でも今年5月、中国艦船がベトナムの資源探査船のケーブルを切断する事件が相次いだ。ベトナム政府は中国指導部による指示ではなく、海洋当局による「功名争い」が原因と判断していると報じられた。
*抑えきかない下克上
こうした「下克上」も政府が核心的利益をふりかざし、勇ましい物言いを続けている以上、処分や規制のしようがない。戦前の日本は前線の司令官が政府や軍中央さえ無視して中国の戦線を拡大した。マスコミが報じる戦果に国民は熱狂し、破滅の道をたどった。
外交当局がふりかざす核心的利益論と前線の功名争いで中国は同じ轍(てつ)を踏むおそれがある。中国政府は一刻も早く核心的利益の範囲から外国との係争地域を除き、過剰な宣伝を戒めるべきだ。 *強調(太字)は来栖
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