石川知裕議員「検察は水谷建設に騙されている」/水谷建設元運転手の証言「現場へ送った記憶、ない」

2011-09-28 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

関連;陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26

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有罪判決の石川知裕議員、即時控訴「断固として戦い続ける」  
2011年09月26日21時30分BLOGOS編集部
小沢一郎氏の元秘書3人が政治資金規正法違反で全員有罪を言い渡された本日の判決。懲役2年、執行猶予3年の判決を言い渡された、元秘書・石川知裕衆議院議員が閉廷後記者会見を開いた。いつもは笑顔でベビーフェイスの石川議員も、長時間の裁判から、疲れ果てた表情で登場。検事に言われた「事実と裁判の結果は違うものだ」という言葉が忘れられない、「判決内容には大変不満を持っている」とし、直ちに控訴することを明らかにした。【取材・構成 田野幸伸(BLOGOS編集部)】
*明日一番で即時控訴する
石川弁護団・木下主任弁護士(以下、木下):今日の判決は一言で言って、遺憾であり、不満であります。検察官が主張もしていない、それに添う証拠も出していない事実について裁判所が独断的といえるような認定をしている点がいくつかある。裁判所を本来もっと信頼していた。アンパイア的な立場に立って、検察、弁護側の主張立証を踏まえて、検察官の主張立証を認めることができなければ却下する。これが本来の刑事訴訟法のもとにおける裁判所のあり方。そこを超えた判決をしている。我々としては、明日一番で即時控訴をして、戦っていく。
*「事実と裁判の結果は違うものだ」
石川知裕議員(以下、石川):今日、東京地方裁判所から判決が出ました。今、木下弁護士が言ったように、判決内容には大変不満を持っております。拘置所の中で検事さんから言われた言葉が忘れられません。それは「事実と裁判の結果は違うものだ」という言葉でした。今日検察が主張してきた水谷建設からの(裏金)5000万円を含め私としては到底受け入れることが出来ない、まったく事実のないことを元に判決内容が下されました。控訴して、断固として戦い続けて行きたいと思っております。
*質疑応答
北海道新聞・細川:今回の有罪判決を受けて、議員活動を続けるという考えに変わりはないか。有権者の失われた信頼について、北海道の有権者にどう説明していくか。
石川:今日の判決は不当だと思っておりますので、政治活動を続けることにためらいはありません。「信頼を失った」というのは細川さんがお感じになっていることかもしれません。私自身はこれからもきちんと訴え続けて行き、控訴審で必ず着せられている罪が晴らせるものだと信じております。
自由報道協会・田中龍作:(検察から記者クラブへの)リークが今回の捜査・裁判に及ぼした影響をどのように考えているか。具体的にこれは真っ赤なウソだ、というリークはどれか。
石川:与えた影響は大きかったろうと思っております。今回、裁判所によって却下された、不採用とされた調書を元にしたによる報道というのが、事実に基づかないものだと思っております。
検察も諦めた収賄が認められた
IWJ・岩上安身:水谷建設からの闇献金があったとされる話、これは検察側は正面から起訴するのをあきらめた事案であるにもかかわらず、判決の中で事実認定されていた。大変驚いた。これをどうお感じになったか。そして本日の(元秘書)お三方の有罪判決を受けて、これから始まる小沢さんの裁判にどんな影響を及ぼすか。裁判の政治性についてどう感じているか。
石川:まず水谷建設からの5000万円認定に関しては大変驚きましたし、憤りを持っております。これがもし認定されるのであれば、一方的に渡した、(という水谷建設側の話)を日本の裁判所が一方的に認めてしまうことになりますので、司法の危機だと思います。小沢さんについてですが、検察の政治的主張をどう裁判所が認定するか分かりませんが、政治活動にはやはり、今日の判決は影響があるのかもしれません。裁判については、私はそこまで分からないので、主任弁護人から話してもらいます。
木下:小沢一郎議員への影響ですが、あちらの裁判を担当していないので直ちには読み切れませんが、小沢先生のほうは4億円が記載してあったかなかったか、そして共謀、この2つが大きな点ですから。しかも共謀についてはこちらの裁判に証拠が出ていませんから、今のご質問にお答えするのは難しいと思います。
岩上:証拠がなくても、今回、事実認定してしまったわけですよね。
木下:そこの所は恐ろしい話ですよね。最近の検察の行き過ぎは、それを許容してきたから。裁判所がもっとクールにアンパイアとしての立場を持って、ダメなものはダメと蹴飛ばしてこなかった。石川議員が言った「司法の危機」とはそういう意味だと受け取っています。
フリーランス・畠山理仁:今回の裁判に限らず、報道によって付くイメージというものもあると思いますが、一方で取り調べの実態は国民に見えにくいものだと思います。石川さんは東京地検特捜部の取調べを録音しているそうですが、その音声を公開するつもりはないのか、音声を公開することの影響についてどう考えているか。
木下:今の点については弁護人からお答えします。実は、録音記録は、小沢一郎議員の裁判において、指定弁護人から証拠請求が行われており、今後向こうのほうでも法廷で調べられる予定ですので、今、公開したり、ダビングしてお渡しすることは控えたい。
ニコニコ動画・七尾:小沢元代表について、今、どういう思いか
石川:ま、特にどういう思いもこういう思いもないのですけれど、これから小沢さんも10月6日から裁判が始まります。私も証人として呼ばれております。裁判というのは時間と精神的にも大きな負担がかかりますので、体に気をつけて頑張って欲しい。今、国の内外が大きな危機ですので、強制起訴という事で、政治活動が制限されていますけれど、必ず疑いが晴れるときが来ると思っておりますので、その時には、第一線で頑張って欲しい。
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「検察は水谷建設に騙されている!」―石川知裕議員 有罪判決後インタビュー
2011年09月28日14時37分 BLOGOS編集部  
 小沢一郎元民主党代表の資金管理団体「陸山会」を巡る裁判において、東京地裁は26日、元秘書である石川知裕議員に有罪判決を下した。翌9月27日、石川知裕議員は議員会館でインターネットTV局であるODAIBA TVのインタビューに応えた。石川氏は、インタビューの中で裁判所の判決に対し、怒りをにじませている。有罪判決直後の石川議員の心情をインタビューの書き起こしでお伝えする。
インタビュー動画(UstreamのODAIBA TV「時局放談」より)
*「推認につぐ推認」には憤りを感じる
一先生、昨日は大変でしたね
石川議員(以下、石川):13時半から裁判が始まりまして、17時過ぎまで掛かりましたけど、ああいう判決がでるとはまったく予想しておりませんでした。
一証拠がない中での有罪判決を意外に思った方も多かったと思うのですが
石川:特に水谷建設からの5千万円に関してはまったく物証がないので。それを隠したいから一連の経理操作を行ったんだという、正に「推認に次ぐ推認」で認めてしまったということには、私は非常に驚いておりますし、憤りを感じております。
―水谷建設の会長も「石川さんはかわいそうだ」と発言したと新聞で報じられていましたが
石川:水谷建設の会長に言われても複雑な感情がありますが…。いずれにしても川村なるものが、まったくもって嘘でたらめを言っているわけです。私に金を渡したと。それで検察側は"自分が不利になることを言っているんだから"と事実だと主張して、それを裁判所も認定した私は、収支報告書の作成に関しては"違法だ"という認識はなかった。評価は裁判所が行うので、そこの評価が分かれるのは仕方ない。しかし、事実の検証がない、物証がないままというのには驚きましたね。
―今回の判決に関しては、非常に珍しい"一歩踏み込んだ判決"という評価が聞こえてきます。一歩踏み込んだというよりも既に俵を割っているんじゃないかという声もありますが
石川:まぁ推認に次ぐ推認ですからね。
―これは推定無罪の判決を覆す前代未聞の判決という声もありますが
石川:「小沢の秘書だから」という先入観が働いていると思います。小沢一郎狙い撃ちの裁判、検察の捜査ですからね。そういう先入観は当然あったと思います。
―推定無罪とは「被告人が有罪であると主張する検察官がその被疑事実について立証しなければ、被告人は有罪判決を受けることはない」ということなんですが、今回は裁判官が疑わしいと考えたから有罪ということのように思えます。これは控訴審では、どうなるのでしょうか
石川:私は控訴審の裁判では必ずいい判決を受けることができると思っております。あまりにも乱暴。これはもうびっくりでした。
―今回の公判においては、供述調書が却下されているんですよね。で証拠がないまま推定につぐ推定で判決が下っている。これでは、今後いろんな形で冤罪が起きるのではないかと危惧してしまうのですが
石川:私は今回の調書却下は、検察が脅迫や誘導でとった調書ではなくて、裁判所が自分たちが裁判所で聞いたことを基にして判決を下すという一つの転換点になると思っていました。しかし、実際にはあまりにも物証がないまま、乱暴な推認が続いたことに驚きました。
―これで「日本の司法制度は死んだも同然だ。今の日本はもはや法治国家の体をなしていない」と考えることも出来ると思うのですが
石川:昨日、「水谷5千万円」の認定を聞いたときには、そういう思いもありました。これでは"相手を貶めよう"と考えて、いろんな作戦を練った検察の作戦が成功したことになるんですよ。その前に検察がだまされている、水谷建設が何らかの形でだましているんです。私が拘置所での検事さんの話で忘れられないのは「事実と裁判の結果は違う。裁判の結果は積み上げてきた証拠をもって、裁判官が判定するから。だから、事実と裁判の結果は違うんだよ」という話です。これは未だに頭にこびりついてますね。昨日からは特に。
―よく言われるのは「事実と"法廷の事実"は違う」ということですが、その通りになったということですかね。
石川:そうですね。だから、運転手が運んでいないといっているのに運んだことになっている。そして、経理担当者が5千万を川村に渡しました、それを石川に渡しましたという証言のみが取り上げられている。私のアリバイを証明しろっていっても、5年も6年も前の何月何日の午後なんて証明できないですよ。その時政治家やってれば日程もありますけどね。本当に信じられないですよ!
―お怒りはよく伝わってきます。
石川:本当に信じられないですね。
*識者も今回の判決を疑問視
―NHKのコメンテーターである若狭弁護士は、今回の判決について以下のようにコメントしてます。
"今回は、供述調書を却下し証拠調べもしていない。供述に頼らず、状況証拠だけで有罪判決を出せるというのは、特捜部としては大きな力を得たと思う。"これはかなり踏み込んだ発言ですね。またジャーナリストの江川紹子さんも"裁判官の価値観、想像で物語を組み立てることには危惧を覚える。裏づけのないものを事実として断定してしまうのは非常に危険である。"と感想を述べています。
石川:江川さんは、ずっと傍聴していらっしゃって比較的中立な立場でお話されていると思うのですが、やっぱり乱暴ですよ、裁判官は。いくらなんでも。
―下衆な話しになりますが、裁判官と検察の方が"お友達"であるケースもありますしね。
石川:判検交流という言葉もあるように、"お友達"になるようなシステムになっているんです。
―以下は、twitterで寄せられた、ある弁護士さんの意見です。"やはり裁判所は信用してはいけないということがわかりました。元々、最も検察よりの裁判長と言われていましたが、その通りになりました。判決の真意は証拠ないけど「小沢の秘書」だから有罪。こんな判決が許されるのでしょうか。"
石川:まぁ「悪党である小沢一郎に仕えた」という先入観をどうしても持ってますから。
―もう一人ご紹介します。この方は記者会見に出席した記者の方です。"記者会見で、この一連の裁判および記者クラブ報道の政治性を痛感した。あれだけの報道陣がいながら、質問のために挙手したものが私以外4人しかいなかった。私にとって闇献金まで事実認定されたのは想定外だったが、それ以外の報道陣は驚きもせず想定内のような態度だった。"
石川:裁判所の判決は、想像以上にとんでもない不当判決でした。しかし、司法記者クラブの方から見れば、検察寄りで一番書きやすい判決なわけです。だからいちいち質問する必要はないんです。もし、これが比較的我々に有利な判決であれば質問が続出したと思いますね。「こういう部分に疑いが残るんじゃないですか」とかね。でも、我々の主張はすべて退けられましたから。
―今後については、どのようにお考えですか。
石川:現在27日16時過ぎですけど、もう控訴しました。弁護士にお願いしてます。日程的には来年、控訴審の裁判が始まると思います。その前に10月6日に小沢一郎元民主党代表の裁判が始まりますので、私も10月28日、11月1日と証人尋問で呼ばれております。この裁判は来年4月ごろに判決が出る予定ですので、まだまだ裁判は続きます。
―裁判、裁判で大変ですね。
石川:そうですね、時間的にも精神的にも疲れます。費用もかかります。ただ、地元からの応援、全国からの支援カンパをいただいておりますので、そういう応援の声が自分を奮い立たせてくれます。
―当然裁判だけでなく、国政のほうも
石川:今まで地域間の要望に出来るだけ応えていけるように活動してきています。よくテレビや新聞で「石川はちゃんと政治活動できるのか」と言われてますけど、それは地域関係者の声を聞いたことがない人が言ってるだけなんです。地域の町長さんや農業関係者の声から私の活動を知ってほしいと思います。もう一つ宣伝がありまして、9月12日から有料のメールマガジン「石川ともひろの汚名返上」を始めました。昨日、正に汚名を着せられましたからね。裁判の様子や日常の身近なことを書いています。それと「小悪党の処世術」ということで小沢さんの傍でどういう立ち回りをしてきたかというようなことを書いています。まぐまぐでやってますので、どうか入会いただければと思います。


陸山会事件公判 水谷建設の元運転手証言「川村尚元社長を裏金5千万円受渡し現場へ送った記憶、ない2011-05-24 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 「記憶ない」元運転手、裏金提供の元社長送迎を否定
産経ニュース2011.5.24 12:31
 小沢一郎民主党元代表(69)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人の第13回公判が24日、東京地裁(登石郁朗裁判長)で開かれ、中堅ゼネコン「水谷建設」の元運転手が出廷。検察側の主張では、元運転手は石川被告に裏金5千万円が渡された日に川村尚元社長(54)を受け渡し現場のホテルに送迎したとされるが「その日に送った記憶はない。もっと後だった」と証言した。
 検察側が作成した自身の供述調書について「訂正してほしい」とも述べた。
 これまでの公判では、川村元社長を含め同社の元幹部ら4人が、小沢元代表側に裏金が提供されたことを裏付ける証言をしている。
 午後には、同社の水谷功元会長(66)が出廷する。
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「小沢氏側に裏金1億円払った」 水谷建設元社長証言
産経ニュース2011.4.27 11:25
 小沢一郎民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人の第10回公判が27日、東京地裁(登石郁朗裁判長)で開かれ、中堅ゼネコン「水谷建設」の川村尚・元社長(53)が証人として出廷。石川被告らに手渡したとされる小沢事務所への裏金計1億円について「衆院議員会館の小沢先生の部屋で大久保隆規被告(49)から要求された。その後、お支払いした」などと証言、裏金の提供を明言した。
 小沢元代表側への裏金提供を当事者が公の場で言及したのは初めて。
 検察側の質問に、川村元社長は小沢事務所に営業活動を行った理由を「小沢先生の地元のダム。力が強い小沢事務所に反対されると工事に参入できないと聞いていたため」と証言した。
 平成15年の社長就任以降、受注したい具体的工事名2つを挙げて大久保被告にあいさつや料亭接待を続けたところ、16年9月になって「それぞれの工事業者決定後に5千万円ずつ」と要求され、「同年10月15日と17年4月中旬ごろに支払った」と語った。
 15年末には大久保被告の自宅で、お歳暮として現金100万円と高級牛肉を渡したとも明かした。
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ロッキード事件に酷似 陸山会事件公判 (川村尚)証人が具体的に述べれば述べるほど低下するリアリティ2011-04-28
〈来栖の独白2011/04/28〉
 陸山会事件の公判。水谷建設前社長・川村尚氏の供述に耳を傾けるほどに、ロッキード事件が重なってしまう。
 現金受け渡しの場面などは、まったく酷似している。陸山会事件のそれは全日空ホテル(現ANAインターコンチネンタルホテル)であり、ロッキード事件はホテルオークラであった。「陸山会」は水谷建設前社長川村氏が渡し、「ロッキード」は丸紅の伊藤宏専務が渡した(という)。陸山会は「5000万円を宅急便の袋に入れて折りたたみ、それをひと回り大きい紙袋」に入れ「床をスライドさせるような形で渡し」、ロッキードは「1億2500万円入りの段ボール箱」。どちらも証人がことさら具体的に述べれば述べるほど、意図に反してリアリティは低下し、胡散臭さが漂ってしまう。これで、弁護側証人水谷建設元会長水谷功氏なんかが出てきた日には、この法廷はどうなるんだろう♪
 ロッキード事件で成功した検察。裁判所まで同じでは困る。
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『検察を支配する「悪魔」』田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)  
 第三章 絶対有罪が作られる場所
p80~ ロッキード事件の金銭授受は不自然---田原
 ここからは、ロッキード事件の話をしたい。
 ロッキード事件で田中角栄は、トライスター機を日本が購入するにあたって、ロッキード社から4回にわたって、丸紅を通じて計5億円の賄賂を受けと取ったとして、1983年10月に受託収賄罪で懲役四年、追徴金5億円の判決を受けましたね。
 この4回あったとされる現金の受け渡し場所からしても、常識から考えておかしい。1回目は1973年8月10日午後2時20分頃で、丸紅の伊藤宏専務が松岡克浩の運転する車に乗り、英国大使館裏の道路で、田中の秘書、榎本敏夫に1億円入りの段ボール箱を渡した。2回目は同年10月12日午後2時30分頃、自宅に近い公衆電話ボックス前で、榎本に1億5000万円入りの段ボール箱を。3回目は翌年の1月21日午後4時30分頃、1億2500万円入りの段ボール箱がホテルオークラの駐車場で、伊藤から榎本に渡された。そして、同年3月1日午前8時頃、伊藤の自宅を訪れた榎本が、1億2500万円が入った段ボール箱を受け取ったとされている。
 最後の伊藤の自宅での受け渡しはともかく、他の3回は、誰が見ても大金の受け渡し場所としては不自然です。とくに3回目のホテルオークラは、検察のでっちあげ虚構としか思えない。
 伊藤の運転手だった松岡にインタビューしたところ、検察によって3回も受け渡し場所を変更させられたと言う。もともと松岡は、受け渡しに対して記憶はまったくなかったのですが、検事から伊藤の調書を見せられ、そんなこともあったかもしれないと、曖昧なまま検察の指示に従った。
 検事が、最初、3回目の授受の場所として指定してきたのは、ホテルオークラの正面玄関です。松岡は検事の命令に添って、正面玄関前に止まっている2台の車の図を描いた。
 でも考えてみれば、こんなところで1億2500万円入りの段ボール箱の積み下ろしなどするわけがない。正面玄関には、制服を着たボーイもいれば、客の出入りも激しい。おまけに、車寄せに2台車を止めて段ボール箱を運び込んだら、嫌でも人の目につく。
 検察も実際にホテルオークラに行ってみて、それに気が付いたんでしょう。体調を崩して大蔵病院に入院していた松岡の元に検察事務官が訪ねてきて、「ホテルオークラの玄関前には、右側と左側に駐車場がある。あなたが言っていた場所は左側だ」と訂正を求めた。
 それでも、まだ不自然だと考えたのでしょう。しばらくしたら、また検察事務官がやってきて、今度は5階の正面玄関ではなく、1階の入り口の駐車場に変えさせられたと言います。
 それだけならまだしも、おかしなことに、伊藤が描いた受け渡し場所も変更されていた。最初の検事調書では、伊藤も松岡とほぼ同じ絵を描いている。松岡の調書が5階の正面玄関から1階の宴会場前の駐車場に変更後、伊藤の検事調書も同様に変わっていた。
 打ち合わせもまったくなく、両者が授受の場所を間違え、後で揃って同じ場所に訂正するなんてことが、あり得るわけがない。検事が強引に変えさせたと判断するしかありません。百歩譲って、そのような偶然が起りえたとしても、この日の受け渡し場所の状況を考えると、検事のでっち上げとしか考えられない。
 この日、ホテルオークラの宴会場では、法務大臣や衆議院議長などを歴任した前尾繁三郎を激励する会が開かれていて、調書の授受の時刻には、数多くの政財界人、マスコミの人間がいたと思われる。顔見知りに会いかねない場所に、伊藤や田中の秘書、榎本が出かけていってカネをやり取りするのは、あまりにも不自然です。
 しかも、この日の東京は記録的な大雪。調書が事実だとすれば、伊藤と田中の秘書が雪の降りしきる屋外駐車場で、30分以上立ち話をしていたことになる。しかし、誰の口からも、雪という言葉が一切出ていません。
 万事がこんな調子で、榎本にインタビューしても、4回目の授受は検察がつくりあげたストーリーだと明言していました。
 もっとも、丸紅から5億円受け取ったことに関して彼は否定しなかった。伊藤の自宅で、5億円を受け取ったと。それは、あくまでも丸紅からの政治献金、田中角栄が総理に就任した祝い金だと。だから、伊藤は、せいぜい罪に問われても、政治資金規正法だと踏んだ。そして、検察から責め立てられ、受けとったのは事実だから、場所はどこでも五十歩百歩と考えるようになり、検察のでたらめにも応じたのだと答えた。
 つまり、検察は政治資金規正法ではなく、何があっても罪の重い受託収賄罪で田中角栄を起訴したかった。そのためにも、無理やりにでも授受の場所を仕立てる必要があったというわけでしょう。
p83~ 法務省に事前に送られる筋書き---田中
 ロッキード事件のカネの受け渡し場所は、普通に考えておかしい。またそれを認めた裁判所も裁判所ですよ。ロッキード事件以来、ある意味、検察の正義はいびつになってしまった。
 政界をバックにした大きな事件に発展しそうな場合、最初に、検察によってストーリーがつくられる。被疑者を調べずに周りだけ調べて、後は推測で筋を立てる。この時点では、ほとんど真実は把握できていないので、単なる推測に過ぎない。
 でも、初めに組み立てた推測による筋書きが、検察の正義になってしまうのです。なぜ、そんなおかしなことになるかと言えば、政界や官界に波及する可能性がある事件の捜査については、法務省の刑事課長から刑事局長に、場合によっては、内閣の法務大臣にまであげて了解をもらわなければ着手できない決まりになっているからです。とくに特捜で扱う事件は、そのほとんどが国会の質問事項になるため、事前に法務省にその筋書きを送る。
 いったん上にあげて、了承してもらったストーリー展開が狂ったら、どうなりますか?検察の組織自体が否定されますよ。事件を内偵していた特捜の検事がクビになるだけでなく、検察に対する国民の信頼もなくなる。
 本当は長い目で見たら、途中で間違っていましたと認めるほうが国民の信頼につながる。それは理屈として特捜もわかっているけれど、検察という組織の保身のためには、ごり押しせざるを得ないのが現実です。
 特捜の部長や上層部がなんぼ偉いといっても、一番事件の真相を知っているのは被疑者ですよ。その言い分をぜんぜん聞かず、ストーリーをどんどん組み立てる。確かに外部に秘密がまれたり、いろいろあるから、その方法が一番いいのかもしれないが、だったら途中で修正しなければいけない。
 ところが、大きい事件はまず軌道修正しない。いや大きい事件になるほど修正できない。だから、特捜に捕まった人はみんな、後で検察のストーリー通りになり、冤罪をきせられたと不服を洩らす。僕を筆頭として、リクルート事件の江副浩正、KSD事件の村上正邦、鈴木宗男議員と連座した
外務省の佐藤優、村上ファンドの村上世彰(よしあき)、ライブドア事件の堀江貴文・・・全員、不満たらたらで検察のやり方を非難している。
 これを特捜が謙虚に反省すればいいのですが、特捜はそんなことはまったく頭にない。「あのバカども、何を言っていやがるんだ」という驕りがあり、最初にストーリーありきの捜査法は一向に改善されません。
p85~ 尋問せずに事実関係に勝手に手を入れる---田中
 とくに東京の特捜では、まずストーリーありきの捜査しかしない。被害者を加害者に仕立て上げてしまった平和相銀事件がいい例ですよ。
 東京に来て驚いたのは、調書ひとつをとっても、上が介入する。調書作成段階で、副部長や主任の手が入ることも多く、筋書きと大幅に異なったり、筋書きを否定するような供述があると、ボツにされる。だから、検事たちも、尋問をするときから、検察の上層部が描いた筋書きに添う供述を、テクニックを弄して取っていく。
 僕も手練手管を弄して自分の描いた筋書きに被疑者を誘導することはありましたよ。しかし、それは、あくまでも現場で捜査に携わっている人間だから許されることだと思う。捜査をしている現場の検事は、こりゃあ違うなと感じれば、軌道修正する。被疑者のナマの声を聞いて判断するので、自分の想定したストーリーが明らかに事実と違えば、それ以上はごり押しできない。人間、誰しも良心がありますから。
 しかし東京では、尋問もしていない上役が事実関係に手を入れる。彼らは被疑者と接していないので容赦ない。被疑者が、これは検事の作文だよとよく非難しますが、故のないことではないと思った。恐ろしいと思いましたよ。冤罪をでっち上げることにもなりかねないので。
 だから、僕は東京のやり方には従わなかった。大阪流で押し通した。上がなんぼ「俺の言う通りに直せ」といっても、「実際に尋問もしていない人の言うことなんか聞けるか」で、はねのけた。
p86~ 大物検事も認めた稚拙なつくりごと---田原
 4回目の授受の場所を特定したのは誰か---ロッキード事件に関わった東京地検特捜部のある検事にこの質問をしたところ、彼は匿名を条件に「誰にも話したことはないが」と前置きして、次のように当時の心境を語っていた。
「ストーリーは検事が作ったのではなく、精神的にも肉体的にも追いつめられた被告の誰かが・・・カネを受け取ったことは自供するけれども・・・あとでお前はなぜ喋ったんだといわれたときのエクスキューズとして、日時と場所は嘘を言ったのじゃないか。
 そして、それに検事が乗ってしまったのじゃないか、と思ったことはある。田中、榎本弁護団が、それで攻めてきたら危ないと、ものすごく怖かった」
 この元検事の証言を、事件が発覚したときに渡米し、資料の入手やロッキード社のコーチャン、クラッターの嘱託尋問実現に奔走した堀田力元検事にぶつけると、「受け渡しはもともと不自然で子どもっぽいというか、素人っぽいというか。恐らく大金の授受などしたことがない人たちが考えたとしか思えない」と語っていました。
 堀田さんは取り調べには直接タッチしていない。だからこそ言える、正直な感想なんでしょうけれど、どう考えても、あの受け渡し場所は稚拙なつくりごとだと認めていましたよ。
p88~ 検事は良心を捨てぬと出世せず---田中
 検事なら誰だって田原さんが指摘したことは、わかっている。その通りですよ。田原さんがお書きになったロッキード事件やリクルート事件の不自然さは、担当検事だって捜査の段階から認識している。
 ところが引くに引けない。引いたら検察庁を辞めなければいけなくなるから。だから、たとえ明白なでっち上げだと思われる“事実”についてマスコミが検察に質しても、それは違うと言う。検事ひとりひとりは事実とは異なるかもしれないと思っていても、検察という組織の一員としては、そう言わざるを得ないんですよね。上になればなるほど、本当のことは言えない。そういう意味では、法務省大臣官房長まで務めた堀田さんの発言は非常に重い。
 特捜に来るまでは、検察の正義と検察官の正義の間にある矛盾に遭遇することは、ほとんどありません。地検の場合、扱うのは警察がつくっている事件だからです。警察の事件は、国の威信をかけてやる事件なんてまずない。いわゆる国策捜査は、みんな東京の特捜か大阪の特捜の担当です。
 特捜に入って初めて検察の正義と検察官の正義は違うとひしひしと感じる。僕も東京地検特捜部に配属されて、特捜の怖さをつくづく知りました。
 検察の正義はつくられた正義で、本当の正義ではない。リクルート事件然り、他の事件然り。検察は大義名分を立て、組織として押し通すだけです。
 それは、ややもすれば、検察官の正義と相入れません。現場の検事は、最初は良心があるので事実を曲げてまで検察の筋書きに忠実であろうとする自分に良心の呵責を覚える。
 しかし、波風を立てて検察の批判をする検事はほとんどいない。というのも、特捜に配属される検事はエリート。将来を嘱望されている。しかも、特捜にいるのは、2年、3年という短期間。その間辛抱すれば、次のポストに移って偉くなれる。
 そこの切り替えですよ。良心を捨てて、我慢して出世するか。人としての正義に従い、人生を棒に振るか。たいていの検事は前者を選ぶ。2年、3年のことだから我慢できないことはないので。ただそれができないと僕のように嫌気がさして、辞めていくはめになるのです。


《第13回前半》陸山会事件公判 水谷建設元運転手が調書内容を否定「ハラがたってます」2011-05-30  
 2011/5/25《THE JOURNAL》
 10時開廷。午前中は、水谷建設の元専属運転手が出廷。元運転手は、事情聴取のときに川村元社長が04年10月15日に石川知裕氏に5000万円を渡した際、受け渡し場所となった全日空ホテル(現・ANAインターコンチネンタルホテル)まで川村元社長を送ったと話し、その時の様子が調書にまとめられている。石川氏に渡したとされる5000万円については証言や物的証拠が極端に少ないので、運転手の証言は検察側の立証にとって重要な意味を持つ。まずは弁護人による尋問。
(──は弁護人、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたは川村元社長を全日空ホテルまで車で送ったことはありますか
「1回か2回ぐらいあると思います」
── 時期についての記憶はありますか?
「会長(注:水谷功元会長のこと)が脱税事件で逮捕された以降だと思います」
※補足。水谷功元会長が脱税容疑で逮捕されたのは06年7月。川村元社長がウラ金を渡したと証言しているのは04年10月と05年4月。つまり、元運転手はウラ金渡しの際に川村社長を社用車に乗せて全日空ホテルに行ったことはないと証言していることになる。
──そのことは検察官に説明しましたか
「はい」
── 検察官に何を聞かれましたか
「全日空ホテルで車を待機させるときのことを聞かれました」
── それは04年10月15日ではなく、全日空ホテルで車を停めるときの方法を聞かれたということですか
「はい」
── 車はどのように停めていたのですか
「川村社長だけではなく、会長を送るときも含め、2階のロビーで降ろして、ボーイさんに頼んでその近くで待機していました」
── 川村元社長の手荷物について聞かれましたか
「『覚えておりません』と答えました」
※補足。「手荷物」とは川村元社長が届けたとされる5000万円入りの紙袋を指す。検察は、何としてもこの運転手に「川村社長は、全日空ホテルに送ったときに手荷物を持っていた」という調書をとりたかっただろう。というのも、石川氏に渡したとされる5000万円については川村元社長の証言以外に証拠はなく、当日に本当に川村元社長が全日空ホテルに行ったという証拠もないからだ。しかし、その調書は元運転手の記憶とは異なるものだったことが明らかになっていく。
── あなたは調書を訂正したいと思っていますか
「はい」
── 川村社長を全日空ホテルに送ったときは、出発の直前に指示されたとの供述がありますが
「日常的にどこに行くのかは直前に言われることもあったので、こういうことを言いました」
── ということは、特定の時期の話ではなくて、一般的な話だったということですね
「はい」
── 検事は、その説明を(特定の日付の話であるかのような)こんな書き方をしたのですか
「はい」
── 調書を訂正するのなら、どのように訂正したいですか
「この日の記憶がほとんどなかったので、(日付を)限定できるということはないと思います。(検事には)この当時の記憶がほとんどなかったので『送った記憶がない』と言ったのですが、こういう調書になってしまいました」
── 検事から手荷物について聞かれたことについては
「手荷物については一般的なことで言ったので、川村社長を全日空ホテルに送った時の話をしたわけではないです」
── 調書にサインを求められたとき、どのように感じましたか
「10月15日ということで限定していたので、不安を感じました」
── 検事にはどのように話しましたか
「10月15日について限定されていることを指摘して、『サインできません』と言いました」
── 検事はどう言いましたか
「『サインしてもらわないと困る』と。私が『10月15日に限定しているのは直せないのですか』と聞いたら『直せない』と言われました」
── サインをしなくちゃいけないとも言われたのですか
「『サインして下さい』と言われたので、『サインはできません』と申し上げたのですが、『これは今日あなたが話したことをまとめたものだ』と」
── なぜサインしてしまったのですか
「『サインをしなきゃいけない』と言われました」
── 当時はなぜ(10月15日のことについて)聞かれているのかわからなかったのではないですか
「はい」
── サインしたことで後悔はしていますか
「10月15日に限定されたことが、私には覚えがありませんので、こういう書き方をされたのは直してほしいとおもっています」
── こういう調書がつくられたことについては
「できるならば、日付は削除してほしいです」
── こういう調書ができたことについて、どのように感じていましたか
「多少、ハラがたっていますね」
── 04年10月15日に、川村元社長を全日空ホテルに送ったという記憶はないんですね
「はい」
── 川村社長はこの公判で、全日空ホテルへの交通手段について『社用車がタクシーで』と答えていますが
「タクシーであれば、会社に領収書があると思います」
※弁護人の尋問終了後、検察側の反対尋問が行われる。運転手の調書否定証言に対し、検察側は川村元社長を議員会館の小沢事務所に訪ねていたことを尋問する。狙いがどこにあるかがよくわからなかったが、川村元社長が小沢事務所を訪ねていたことを証言させ、水谷建設と小沢事務所の関係の濃さをアピールしたかったのかもしれない。それに対し、元運転手は手帳に書かれているものは議員会館に行ったことを認め、一方で「日付はわかりませんが、手帳に書いた以外はないと思います」と答える。
 最後に裁判官による尋問。
(──は裁判官、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたが手帳をつけていた理由はなぜなのですか
「会社には日報があったのですが、私が行動していたことを自分で後で確認することも含めて、会社に聞かれたときのために書いていました」
※補足。会社に提出していた日報は、手帳に書かれているものに比べればおおざっぱなもので、詳細は書かれていないという。
── 手帳はどういう時に書いていましたか
「その時に応じて書く場合と夕方に書いていました」
── 何日かまとめてということは
「それはほとんどないと思います」
── 書き漏らしはありますか
「(仕事が)重なった時などはあると思うんですが」
── もうちょっと具体的にお話いただけますか
「時間的に会長と社長がバッティングしてしまったりした時ですね」
── 書き漏らすこともあったということですか
「忘れることもあったと思います。その日、書くのを忘れて、そのまま書いていないということはあると思います」
── 手帳はあなたのスケジュール表としても使っていたのですか
「そうです」
── スケジュールはあらかじめわかっているものなのですか
「先にわかっているというのは少ないですね。(指示が来るのは)当日か前の日で、事前に連絡がきていれば手帳に書きますが、当日に書くことが多かったです」
── それが当日が前日に書くことが多かったということですね
「はい」
── 直前に言われて書き忘れるということは
「それもあると思います」
── 10月15日に川村社長を送ったかどうかですが、あなた自身は記憶がないのですね
「はい」
 以上で午前の部が終了。裁判官も、04年10月15日に元運転手が全日空ホテルまで川村氏を送迎したかどうかに強い関心を持っているようだ。
元運転手が証言したように、川村氏が水谷建設東京支店で金庫から5000万円を引き出した後、全日空ホテルまでタクシーで移動したのであれば、領収書が何らかの形で残っている可能性が高い。しかし、それがないのであれば社用車で移動したことになり、それは元運転手の証言とは矛盾してしまう。川村氏の移動手段をどのように事実認定するかも、裁判の重要なポイントとなるだろう。
そのほか、元運転手の証言によって検察による調書の取り方の問題点がまたもや明らかとなった。おそらく、元運転手の聴取を担当した検事は、上司の思い描くストーリーのままの調書をつくったのだろう。しかも、検察はこの調書の内容を一部の記者にリークして、「石川有罪」の空気作りまでしていた。リークをした検察関係者が、このような杜撰な聴取で調書が作られていたことを知っていたかは不明だが、検察の情報操作の巧さを感じさせる。
引き続き、午後は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷する。ここでも石川氏に渡したとされる5000万円の流れについて証言が行われる。
※一問一答は筆者の傍聴記メモを元に主要部分を再構成したものです
2011/5/25(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史


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