夫婦別姓、ほど遠い「世界標準」 最高裁「合憲」
2021年6月24日 中日新聞 朝刊
前回判決から五年半が経過し、最高裁判事十五人中十二人が入れ替わっても、司法判断は変わらなかった。二十三日の最高裁大法廷決定は夫婦別姓を認めない民法などの規定は「合憲」で「制度の検討は国会で議論されるべきだ」と同じ見解を繰り返した。丸投げされた政治の場では保守的な意見が強く、議論が停滞。法務省が確認した限りでは、夫婦に同姓を強いる国は日本以外なく、「世界標準」にほど遠い状況が続く。
▼少数派
決定は二〇一五年の大法廷判決を踏襲。この間の社会や国民の意識の変化を踏まえても、合憲判断を変更すべきではないと結論付けた。
「規定は当事者の意思決定を抑圧する不当な国家介入」などとして違憲と主張したのは四人で、前回判決の五人より一人減った。十五人中女性は二人だけで、前回判決時の三人より少ない。出身は裁判官や検察官ら公務員が十人を占め、「違憲派」が比較的多い弁護士や学者といった民間出身は、常に少数となっている。年齢構成は十二人が六十五歳以上の高齢者で、六十三歳が最も若い。
▼うねり
一方、世間では企業の管理職などに就く女性が増え、国際的な潮流も相まって、ジェンダー差別解消への理解が進んでいる。近年では性被害を告発する「♯MeToo」が世界的に広がり、日本でも社会現象に。性暴力に抗議するフラワーデモも各地で開催され、大きなうねりとなった。
こうした中、選択的夫婦別姓制度を容認する割合は、内閣府の17年時点の世論調査で42.5%と過去最高になった。最近の報道各社の調査では、特に若年層で好意的な意見が多い。
夫婦別姓問題に20年以上取り組んできたNPO法人「mネット・民法改正情報ネットワーク」の坂本洋子理事長は「ジェンダー問題では、日本が国際社会から遅れていることへの批判が以前より強くなっているのに、国会はこの5年半動かなかった」と批判。「今回の決定も合憲では『違憲が出るまで法改正しなくていい』と議員に思わせてしまう」と懸念した。
▼タブー
国連の女性差別撤廃委員会は、夫婦同姓の規定が差別的として、速やかに改正するよう繰り返し勧告している。15年判決後の16年も勧告された。
それでも政治の動きは鈍い。自民党では1996年に法制審議会が夫婦別姓導入を答申して以降、党内を二分する因縁のテーマだ。2000年代初頭には野田聖子幹事長代行らが同姓を原則としつう例外的に別姓を認める制度を提唱したが、「家族の絆が壊れる」とする保守派の反対が強く、立ち消えとなった。
15年判決も国会にボールを投げたが、棚上げ状態。特に、家族の一体感を重視し、別姓制度に否定的な考えの安倍晋三前首相が政権を担った時期は「議論すらタブー視する空気だった」(同党中堅議員)。
しかし、菅義偉首相の登場で空気は一変。過去に導入に前向きな発言をしていた菅首相は「政治家として、申し上げたことには責任がある」と昨年の臨時国会で答弁した。推進派は勢いづき、保守派も警戒感を強め、双方が議連を発足。突き上げを受ける形で、党内に氏制度の在り方を検討する作業チームもできた。
ただ、衆院選を控えて党内分裂を避けたい執行部は今月16日、結論の先送りを決断。別姓制度に賛成する与党女性議員は「これでどんどん盛り下がっていく」と落胆した。
◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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〈来栖の独白 2021.6.24 Thurs〉
私は「夫婦別姓」を支持しない。同姓だからといって、それが女性を低く見させたり、女性差別に繋がるとは考えない。上記事には一字も書かれていないが、父親と母親の姓が違う場合、その夫婦の「子」には、どうだろう。「家族」をイメージすることは、なかなかに難しい。