平田信被疑者の言「教祖松本死刑囚の死刑執行は当然」/吉村昭作品

2012-01-03 | オウム真理教事件

『日常生活を愛する人は?』-某弁護士日記(弁護士滝本太郎のブログ)
2012/1/2 平田信被疑者の言
 2012.1.2午前、私外1名の弁護士が面会しました。
 本人の声として、急ぎ下記のとおりです。
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 国松長官事件が時効になって、間違った逮捕はありえなくなったので、早く出たかった。
 でも色々なことがあって遅れた。
 東北の大震災で不条理なことを多く見て、自分の立場を改めて考えた。
 2011年の内に出頭したく、31日の晩、出頭した。
 教祖の死刑執行は当然と考えている。
 自分は松本死刑囚を観想していないし、オウム真理教を信仰していない。
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 なお、以前私が呼びかけていたのは
 下記2005.10.20のブログ記述などです。
 http://sky.ap.teacup.com/applet/takitaro/20051020/archive 
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中日春秋
2012年1月3日
 故吉村昭さんには、追われる男を描いた作品が多い。戦時中の航空隊基地で艦上攻撃機を爆破した海軍整備兵の人生を描いた『逃亡』は、実話に基づいている▼基地から脱走し都内に潜伏した整備兵は北海道に逃れ、偽名で劣悪な労働現場に身を投じた。戦後、米軍司令部に出頭した彼は、軍用機を爆破するよう勧めた男が米側の諜報(ちょうほう)機関員だったことを悟る▼逃亡兵という過去を持つ男は妻にも本当のことを話せず、闇の中に身を潜めるような日々を過ごす。事件の二十五年後、不意に電話があった小説家(吉村さん)の取材を受けると、胸に重苦しく沈殿していたものが一気に消える解放感を味わった。ぐっすり眠れたのは戦後初めてだった▼大みそかの深夜、突然、警視庁に出頭したこの男は今、どんな心境なのだろうか。十七年間の逃亡の末、逮捕されたオウム真理教元幹部の平田信容疑者は、接見した弁護士に「震災で不条理なことを多く見て自分の立場を考えた」と話したという▼出頭時は十万円を所持、衣服も整っていた。教祖の死刑を「当然」と語り、もう教団への信仰はないと語ったが、支援者の有無など謎は多い▼<男は、闇を信じていた>。吉村さんは『逃亡』をそう書き出した。闇の中から姿を現した平田容疑者は解放感を味わう前になすべきことがある。知る限りの事実を明らかにすることである。
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〔リンゼイさん事件〕市橋達也被告手記『逮捕されるまで 空白の2年7ヶ月の記録』/吉村昭著『長英逃亡』
 〈来栖の独白2011/01/25〉
 市橋達也被告が「逮捕されるまで 空白の2年7ケ月の記録」(幻冬舎)という手記を出版との報道に接し、咄嗟に、2005年に読んだ吉村昭著『長英逃亡』(新潮文庫)を思い出した。
 逃走の範囲が東北から四国(市橋被告の場合は沖縄の孤島まで)と、範囲に及んでいること、顔を変えていること、そして何よりも、そのサバイバル精神が共通しているように思えた。長英の概要をほんの少々。
 幕末期、最高の蘭学者と謳われた高野長英。幕府の鎖国政策を批判し永牢(ながろう=無期懲役)の申渡しを受けるが、牢に放火。放火・破牢・脱獄という罪科。潜伏を繰り返しつつ、逃亡する。発煙硝石精(しょうせきしょう)で顔を焼き容貌を一変させて沢三伯と名のる。
 市橋被告は整形外科で施術したそうだが、更に自身で口を切ったりなどして変形を加えた、といわれる。両人とも、常人には耐えられそうにない痛みを耐えて逃亡に意欲を燃やす。
 長英が最後に逮捕の契機となったのは、彼の手になる翻訳書『三平答古知幾』(さんぺいたくちいき)の余りにも優れた出来栄えであった。ロシアへ入国し死亡したと信じられていた長英だったが、生存しているのではないか、これほどの翻訳書を著せるのは長英をおいて他にない、と当局に推量させた。
 このことから分かるように、同じように広範囲に足を延ばし顔を変えた逃亡者であるが、二人の人間像は違うようだ。市橋被告のことはこれから公判が始まるわけで予断は差し控えたいが、高野長英はきわめて優れた学者であり、反骨の精神を持ち合わせて、情の深い人間像だ。吉村氏の著書は幾つか読んでいる。史実を掘下げ、探り、情緒を排して抑制の効いた硬質な文体。大好きな作家、本物の小説家である
 私はこのエントリでただ単に、市橋被告の出版に際し吉村昭氏の著書を思い出した、と書いた。出版にいたる市橋被告の心情、又それを受けての被害者の心情に言及するものではない。ただ何であれ「ブーム」と化してしまうこの国、市橋被告の潜伏したオーハ島を訪れる観光客という現象もでてくるのかな、などと余計なことを思った。


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