尖閣、他力頼み もう終わり/「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ

2012-10-10 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

【今日の突破口】
ジャーナリスト・東谷暁 尖閣、他力頼みもう終わり
産経ニュース2012.10.10 03:06
 来るべき衆議院選挙では、どのようなかたちになるにせよ、自民党が政権に返り咲く可能性が高い。しかし、その政権が、晴れがましい状況の中で楽々と華やかな政策を繰り出せるかといえば、そうではない。
 最大の試練はいうまでもなく外交であり、尖閣問題への対処だろう。私見によるが、このままでは尖閣はうまくいって再度の棚上げ、下手をすれば世界中が中国の主張をそのまま認めることになりかねない。
 先日、米紙ニューヨーク・タイムズに、有名コラムニストが中国側の「日本が1895年に戦利品として中国から奪った」という主張をうのみにして、「中国の立場に同情を感じる」と記した。あきれた話だと思うが、これを同紙の立場が中国寄りだからと、単純に決めつけられないところが問題なのである。
 たとえば、英経済誌エコノミストなども、中国国内の日本企業攻撃には批判的だが、尖閣問題そのものに関しては中国の主張を一応は認めて、日中では歴史認識が違うのだから「海洋保護区にすることで合意してはどうか」などという見当違いの提案をしている。ほかの海外メディアでも、尖閣諸島の付近の海域を立ち入り禁止水域にすればいいという提案をしているものがあり、問題の核心からは目を背けている。
 読者のなかには、レオン・パネッタ米国防長官が玄葉光一郎外相に尖閣は日米安保の対象と語ったので「もう大丈夫」と考えておられる方がいるかもしれない。しかし、かつてモンデール元駐日大使は尖閣を「安保条約の対象」であるとするいっぽう、中国が尖閣を軍事占領しても「米軍の軍事介入を強制するものではない」としていた。
 最近も、アーミテージ元国務副長官が「日米安保の対象」であっても「日本が自ら尖閣を守らなければ、われわれも尖閣を守れない」と述べている。米国が「日米安保の対象」と発言したからといって、米国が尖閣を日本に保障したと解釈するのは、あまりにも能天気というしかない。中国は執拗(しつよう)に尖閣領有を主張して日本に対し威圧するだろうが、安保条約があれば、米国が自動的に軍事介入するわけではないのだ。
 もうそろそろ、「中国は早晩崩壊する」だとか、「米国が守ってくれる」といって溜飲(りゅういん)を下げたり安心するのはやめてはどうだろうか。いまの中国に激しい景気後退がおこっても、中国経済は毛沢東時代には戻らないし、景気後退があっても中国が軍事費を減らさないことは、これまでの歴史が証明している。
 そもそも、この数年で次々と領土問題が頻発しているのはなぜだろうか。それはもちろん民主党の外交失態にもよるが、それだけではない。米国が次第に東アジアからは後退する兆候を見せているからではないのか。そのことをロシアも韓国も、そして中国も、しっかりと観察しているのだ
 尖閣問題はそうした変動の時代の前触れであり試金石なのだが、このままでは信じられないような屈辱的な事件が待っているだけだろう。新しい政権には憲法の条文を変えるだけではなく、いまの日本人の意識そのものをも変えるという、大業が課せられることになる。そしてそれは新たな「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」の時代に他ならない。(ひがしたに さとし)
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『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著
2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所

第1章 アメリカのアジア極東戦略が破綻した
p12~
第1部 原子力空母「ジョージ・ワシントン」が横須賀からいなくなる
 2008年秋、アメリカの原子力空母「ジョージ・ワシントン」が第7艦隊の主力艦艇として母港横須賀にやってくることになった。
p13~
 「ジョージ・ワシントン」はニミッツ型原子力空母の1隻として1991年に建造された。アメリカの原子力艦艇は普通50年で引退するが、半分の25年目に原子燃料棒を新しいものに取り替えなくてはならない。2016年が「ジョージ・ワシントン」にとってその25年目になるが、2011年につくられたアメリカ国防費の5年計画によると、2016年の予算には「ジョージ・ワシントン」の燃料棒を入れ替える費用が含まれていない。
 「燃料棒を入れ替えなければ、当然のことながらエネルギー源がなくなり、動かなくなってしまう。退役して、これまでの古い空母と同じように、埠頭に係留されることになる」
 アメリカ海軍当局はこう発表しているが、3年前にアメリカの新しいアジア戦略の中核として横須賀を母港とすることになった「ジョージ・ワシントン」は、予算削減のため艦暦半分で退役させられてしまうのである。
p15~
 アメリカ海軍当局によると、海軍で最も古い空母「エンタープライズ」が、予定を3年ほど早めて2012年には退役することになっている。2015年の実戦配備をめざして建造中の「ジェラルド・フォード」は工事が遅れ気味だといわれる「エンタープライズ」と「ジョージ・ワシントン」が退役すれば、空母は8隻になってしまう。数の上では横須賀に常時、空母を配備しておくことが不可能になる。
第4章 日本は核抑止力を持つべきか
p146~
第1部 日本列島周辺が世界でいま最も危険である
 ワシントンの軍事消息筋によると、2012年から13年にかけて起きると懸念される最も危険な戦いは、中国による台湾攻撃である。(略)
 中国軍はここ数年、莫大な費用を注ぎ込んで近代化に力を入れ、2011年にはJ20と呼ばれるステルス戦闘機の開発に成功しただけでなく、アメリカの多くの専門家の予想に反して、ソビエトから買い受けた空母の実戦航海も開始している。台湾海峡を越えて攻撃できるミサイルを大量に配備し、在日米軍基地を攻撃できるミサイルや、アメリカ本土を攻撃できる長距離ミサイルも実戦配備を終えている。
 中国軍は2010年に第11次5か年計画を完了して、実戦態勢を完全に配備し終わっている。(略)
 中国が大方の予想を裏切って、2011年、早々と空母の実戦航海を始めたのは、アメリカ海軍に対する対抗措置を早期につくりあげるためであるといわれるが、これと並行して、小型艦艇にミサイルを搭載してアメリカ艦艇を攻撃する態勢を急速に充実させている。アメリカの艦艇を近寄らせず、中国の周辺を安全にしておく態勢とミサイル態勢を完備した以上、中国は必要とあらば、いつでも台湾を軍事的に占領できると考えている。
 中国政府はむろん、その考えをオクビにも出していない。アメリカ政府の首脳も、中国が台湾周辺で危険な行動を始めれば、世界中から非難され資源の輸入に支障が出ると見ている。
p148~
 したがって、中国は台湾を攻撃することはないと思っている。だが考えてみると必要があるのは、これから中国の指導者が代わり、国内の政治情勢も大きく変化すると予想されることである。
 「中国が軍事的な圧力を強化し、台湾を戦わずして占領するか、あるいは短い時間内で軍事的に制圧すれば、日本はもとより東南アジア諸国、そしてアメリカも中国の軍事力の前にひれ伏して、南シナ海も、東シナ海、尖閣諸島も中国の影響下におさまる」
 中国がこう考えてもおかしくはない。中国側が最も懸念しているのは、戦闘が長引き、西太平洋から極東にかけての海上輸送に支障が出た場合、中国経済に重大な危険が及ぶだけでなく、世界中から批判されて輸出に大きな支障が出ることである。中国の台湾制圧が成功するかどうかは、短期間にやれるかどうかにかかっているが、中国はいま述べた第1次軍事力整備計画の完成によって自信を強めているはずだ。
 中国が、南シナ海から東シナ海、そして日本周辺での軍事力を強化していることは、冷戦が終わった現在、世界で最も危険な地域が日本周辺であることをはっきりと示している。中国が大量に配備しているクルージングミサイルや中距離弾道ミサイルは、日本を簡単に攻撃できる。ミサイルの多くは、在日米軍基地を標的にしている。
p149~
 (略)
 日本では、アメリカの軍事力が中国を封じ込めているので日本は安全だと信じられてきたが、情勢は逆転しつつある。中国国内の政治が不安定になれば、中国の新しい戦略が発動されて、日本を脅かす危険は十分にある。しかも中国だけでなく、北朝鮮も軍事力を強化している。ワシントンの軍事消息筋は、北朝鮮がすでに数十発の核弾頭を保有し、地対地ミサイルや小型艦艇に装備したミサイルで日本を攻撃する能力を持ったと見ている。
p150~
 (略)
  北朝鮮はすでに述べたように、世界各国にノドン、テポドンといったミサイルを売り、核爆弾の材料である濃縮ウランの製造にも協力をしている。北朝鮮は、軍事技術の輸出国として莫大な資金を稼ぎ始めているが、その北朝鮮の仮想敵国はまぎれもなく日本である。北朝鮮は中国の政治的な支援を背景に、日本を攻撃できる能力を着実に高めている。
 中国と北朝鮮だけではない。いったんは崩壊したと見られるロシアが再びプーチン大統領のもとで軍事力を増強し、極東の軍事体制を強化している。
p151~
 ソビエトは共和国を手放し、ロシアと名を変えたが、冷戦が終わって資源争奪戦の時代に入るや、国内に大量に保有している石油や地下資源を売って経済力を手にし、それによって軍事力を強化し始めている。(略)
 ロシアは現在、石油や地下資源で稼いだ資金をもとに、新しい潜水艦やミサイルの開発に力を入れ、ヨーロッパではNATO軍に対抗する姿勢を取り始めている。2009年と10年には、日本海で新しい潜水艦の試験航海を行ったのをはじめ、偵察機や爆撃機を日本周辺に飛ばしている。
 ロシアもまた、極東における新たな軍事的脅威になりつつある。ロシアの究極の敵は国境をはさんだ中国といわれているが、海軍力では中国に勝るロシアが、日本列島を越えて中国と海軍力で対立を深めていくのは当然のことと思われる。
p152~
 中国はアメリカに対抗するため、大陸間弾道弾や核兵器の開発に力を入れている。すでに55発から65発の大陸間弾道弾による態勢を確立している。この大陸間弾道弾のなかには、固形燃料で地上での移動が可能な長距離ミサイルや、液体燃料を使う中距離ミサイルなどがある。
 中国は潜水艦から発射するミサイルの開発も終わっている。これは中国の核戦略の対象がアメリカであることを示しているが、日本を攻撃できる射程3,000キロのミサイルの開発にも力を入れている。日本が中国の核ミサイルの照準になっていることに、十分注意する必要がある。
 中国がアメリカに対抗できる核戦略を持ち、アメリカの核抑止力が日本を守るために発動されるかどうか分からなくなっている以上、日本も核兵器を持つ必要がある。「日本が平和主義でいれば核の恫喝を受けない」という考えは、世界の現実を知らない者の世迷い言に過ぎない。
 すでに述べたように、中国は、民主主義や自由主義、国際主義といった西欧の考え方を受け入れることを拒み、独自の論理とアメリカに対抗する軍事力によって世界を相手にしようとしている。第2次大戦以降続いてきた平和主義の構想がいまや役に立たないことは明らかである。日本を取り巻く情勢が世界で最も危険で過酷なものになっているのは、中国が全く新しい論理と軍事力に基づく体制をつくって、世界の秩序を変えようとしているからである。
153~
第2部 アメリカはなぜ日本を守ってきたか
 外務省をはじめ日本の外交関係者や政治家たちは、冷戦が終わったあともこれまで通り「古いアメリカ」としか付き合っていない。アメリカが大きく変わり、日本に対する安全保障政策も変化したために、アメリカの旧日本担当者と話しても意味がないことに気づいていないようである。
p156~
 話を元に戻すと、ワシントンの情勢が大きく変わり、アメリカの政治が中国やヨーロッパを向いている時に、日本の指導者や専門家は依然として、昔から日本を取り巻いてきたワシントンの二流どころの下級官僚に取り込まれている。
 2011年の秋、日本の若手政治家たちがワシントンへやってきた時、私がメンバーになっているケンウッドゴルフ場でその一人と顔を合わせた。若い政治家は私に挨拶すると「マイケル・グリーンさんに会いに来ました」と言った。マイケル・グリーン氏は、民主党系の若い官僚としてホワイトハウスに入り、ブッシュ政権では日本専門家がいなかったために、民主党員でありながら、そのままホワイトハウスで日本問題を担当した人物だが、わざわざ日本から会いに来るほどワシントンで影響力を持っているわけではない。
 コンドリーザ・ライス前国務長官が、国家安全保障担当補佐官としてホワイトハウスで活躍していた頃、グリーン氏が日本問題を取り扱っていたのは事実である。だがライス補佐官はロシア専門家で日本にほとんど関心がなく、グリーン氏は会議の運営を手伝う端役の仕事しか与えられなかった。それでも日本から見ると、ホワイトハウスにおける最高の日本担当者である。ブッシュ政権下では、このほかにも数人の日本専門家がホワイトハウスにいたが、日本の政治家たちが考えるほどの権力も立場も与えられていたわけではない。こうしたギャップがいまも尾を引いている。(略)
 オバマ政権下のホワイトハウスには、日本専門家はいない。ドニロン国家安全保障担当補佐官の下で中国系のアメリカ人が中国問題と一緒に日本問題を取り扱っているが、彼らにとってはむろん中国問題が最も重要で、日本はそのついでに過ぎない。日本の若い政治家がワシントンへやってきて、日本担当者に会おうと考えても、グリーン氏レベルの人物にしかたどり着けないのは当然である。
 この問題を私が取り上げたのは、グリーン氏クラスの日本専門家は、評論家としては日本問題について意見を持っているとしても、オバマ政権の対日政策とは全く関わりがないことをはっきりさせるためである。現在の緊迫した東シナ海の情勢のもとで、アメリカがどのような戦略を立て、日本との軍事関係をどう構築しようとしているか、彼らには知るすべがない。
p161~
第3部 誰も日本のことなど気にしない
 アメリカは莫大な財政赤字を抱えて、日本を守ることができなくなった。もちろんアメリカ政府が正式にそう発言しているわけではない。だが2009年にオバマ政権が成立し、アメリカの財政がうまく立て直せないと分かり始めた頃から、アメリカの指導者が私に「日本が核兵器を持っても構わない」と言い始めた。
 これまで「日本に核兵器を持たせない」というのが、アメリカの日米安全保障政策の基本だった。「日本はアメリカが守る。だから核兵器を持つ必要がない」とアメリカは言い続けてきた。だがアメリカは日本を守ることができなくなり、守るつもりもなくなった。
p162~
 2010年、私の新年のテレビ番組のために行った恒例のインタビューでキッシンジャー博士はこう言った。
「日本のような経済的大国が核兵器を持たないのは異例なことだ。歴史的に見れば経済大国は自らを自らの力で守る。日本が核兵器を持っても決しておかしくはない」
p166~
 日本では左翼の学者や政治家たちが、核をことさら特別なものとして扱い、核兵器を投下された場所で祈ることが戦争をなくすことにつながる、と主張している。私は、こういった考え方を持つ進歩派の政治家の発言に驚いたことがある。
 福島原発の事故の担当になった民主党政権の若い政治家が、「これからどのような対策をとるのか」という私の質問に、「原子力は神の火で、軽々しくは取り扱えない」と答えた。「神の火」とは恐れ入った表現である。核エネルギーは石油や石炭と同じエネルギーの1つである。核爆弾も破壊兵器の1つに過ぎない。
 日本に関するかぎり、核爆弾を特殊扱いする政治的な狙いは的を射た。日本人の多くが、核を「神の火」であると恐れおののき、手を触れてはならないものと思い込み、決して核兵器を持ってはならないという考えにとりつかれている。この状況が続く限り、日本人は核を持たないであろうとアメリカの政治家は考え、日本の指導者に圧力を加え続けてきた。だがその状況は大きく変わり、シュレジンジャー博士のように「持つも持たないも日本の勝手」ということになりつつある。
p168~
第4部 日本はどこまで軍事力を増強すべきか
 日本はいま、歴史的な危機に直面している。ごく近くの隣国である中国は、核兵器を中心に強大な軍事体制をつくりあげ、西欧とは違う独自の倫理に基づく国家体制をつくりあげ、世界に広げようとしている。すでに述べたように、中国は人類の進歩が封建主義や専制主義から民主主義へ向かうという流れを信用していない。中央集権的な共産党一党独裁体制を最上とする国家を維持しながら軍事力を増強している。そのような国の隣に位置している日本が、このまま安全でいられるはずがない。
 日本はいまや、同じ民主主義と人道主義、国際主義に基づく資本主義体制を持つアメリカの支援をこれまでのようには、あてにできなくなっている。アメリカは、歴史的な額の財政赤字を抱えて混乱しているだけでなく、アメリカの外のことに全く関心のない大統領が政権に就いている。こうした危機のもとで、日本は第2次大戦に敗れて以来、初めて自らの力で自らを守り、自らの利益を擁護しなければならなくなった。
 第2次大戦が終わって以来、日本人が信奉してきた平和主義は、確かに人類の歴史上に存在する理念である。だが、これほど実現の難しい理念もない。
p170~
国家という異質なもの同士が混在する国際社会には、絶対的な管理システムがない。対立は避けられないのである。人間の習性として、争いを避けることはきわめて難しい。大げさに言えば、人類は発生した時から戦っている。突然変異でもないかぎり、その習性はなくならない。
 国連をはじめとする国際機関は、世界平和という理想を掲げているものの、強制力はない。理想と現実の世界のあいだには深く大きなギャップがあることは、あらゆる人が知っていることだ。
 日本はこれまで、アメリカの核の傘のもとに通常兵力を整備することによって安全保障体制を確保していたが、その体制は不安定になりつつある。今後は、普遍的な原則に基づいた軍事力を整備していかなければならない。普遍的な原則というのは、どのような軍事力をどう展開するかということである。(略)
p171~
 日本は、「自分の利益を守るために、戦わねばならなくなった時にどのような備えをするか」ということにも、「その戦争に勝つためには、どのような兵器がどれだけ必要か」ということにも無縁なまま、半世紀以上を過ごしてきた。アメリカが日本の後ろ盾となって、日本にいるかぎり、日本に対する戦争はアメリカに対する戦争になる。そのような無謀な国はない。したがって戦争を考える必要はなかった。このため日本はいつの間にか、外交や国連やその他の国際機関を通じて交渉することだけが国の利益を守る行為だと思うようになった。
 よく考えてみるまでもなく、アメリカの日本占領はせいぜい数十年である。人類が戦いをくり返してきた数千年の歴史を見れば、瞬きするほどの時間にすぎない。日本人が戦争を考えずに暮らしてこられた年月は、ごく短かったのである。日本人はいま歴史の現実に直面させられている。自らの利益を守るためには戦わねばならない事態が起きることを自覚しなければならなくなっている。
 国家間で対立が起きた時、同じ主義に基づく体制同士であれば、まず外交上の折衝が行われる。駆け引きを行うこともできる。だがいまの国際社会の現状のもとでは、それだけで解決がつかないことのほうが多い。尖閣諸島問題ひとつをとってみても明らかなように、外交交渉では到底カタがつかない。
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