2016年1月19日 20時40分
拘置所の閲覧制限「違法」 名古屋地裁、死刑囚が勝訴
死刑の執行方法を記した内容を閲覧させないため、名古屋拘置所が書籍のコピーの郵送を許可しなかったのは違法だとして、1994年の木曽川・長良川連続リンチ殺人事件で死刑が確定した大阪市西成区生まれの死刑囚の男(40)が、国に20万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、名古屋地裁であった。倉田慎也裁判長は「所長は裁量の判断を誤った過失がある」として国に1万円の支払いを命じた。
判決によると、死刑囚は2013、14年の2回、死刑の執行方法が記された書籍計6冊のコピーを名古屋地裁へ郵送するよう収容先の名古屋拘置所へ願い出た。自身が起こしている国家賠償訴訟の証拠として提出するためとしていたが、所長は不許可処分にした。死刑囚側は「裁量権の逸脱だ」と主張。国側は「証拠となれば死刑の執行方法を閲覧でき、精神的に不安定な死刑囚が拘置所の規律や秩序を害するおそれがあった」と反論していた。
判決理由で倉田裁判長は「書籍の閲覧制限が許されるには、刑事施設内の規律や秩序の維持のため放置できない程度の障害が生ずる蓋然性が必要だが、認められない」と指摘した。
名古屋拘置所は「判決内容を精査し、関係機関と協議した上で適切に対応したい」とコメントした。
原告は、94年に愛知、岐阜、大阪で4人の若者を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した元少年3人のうちの1人。
(中日新聞))
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◇ 木曽川長良川リンチ殺人事件
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◇ 死刑囚の個人情報漏洩 国に30万円賠償命令 事件当時少年…「木曽川長良川リンチ殺人事件」名古屋高裁 2015-02-05
◇ 「木曽川長良川リンチ殺人事件」死刑囚の面会情報漏洩は違法 国に10万円の支払い命令 名古屋地裁 2014-04-18
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【63年法務省矯正局長通達】
法務省矯正甲第96号 昭和38年3月15日
死刑確定者の接見及び信書の発受について
接見及び信書に関する監獄法第9章の規定は、在監者一般につき接見及び信書の発受の許されることを認めているが、これは在監者の接見及び信書の発受を無制限に許すことを認めた趣旨ではなく、条理上各種の在監者につきそれぞれその拘禁の目的に応じてその制限の行われるべきことを基本的な趣旨としているものと解すべきである。
ところで、死刑確定者には監獄法上被告人に関する特別の規定が存する場合、その準用があるものとされているものの接見又は信書の発受については、同法上被告人に関する特別の規定は存在せず、かつ、この点に関する限り、刑事訴訟法上、当事者たる地位を有する被告人とは全くその性格を異にするものというべきであるから、その制限は専らこれを監獄に拘置する目的に照らして行われるべきものと考えられる。
いうまでもなく、死刑確定者は死刑判決の確定力の効果として、その執行を確保するために拘置され、一般社会とは厳に隔離されるべきものであり、拘置所等における身柄の確保及び社会不安の防止等の見地からする交通の制約は、その当然に受忍すべき義務であるとしなければならない。更に拘置中、死刑確定者が罪を自覚し、精神の安静裡に死刑の執行を受けることとなるよう配慮さるべきことは刑政上当然の要請であるから、その処遇に当たり、心情の安定を害するおそれのある交通も、また、制約されなければならないところである。
よって、死刑確定者の接見及び信書の発受につきその許否を判断するに当たって、左記に該当する場合は、概ね許可を与えないことが相当と思料されるので、右趣旨に則り自今その取扱いに遺憾なきを期せられたい。
記
一、本人の身柄の確保を阻害し又は社会一般に不安の念を抱かせるおそれのある場合
二、本人の心情の安定を害するおそれのある場合
三、その他施設の管理運営上支障を生ずる場合
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